第7話 雷魔法
しばらくすると、彼女は何かに気づいたかのように目を見開いて僕に詰め寄ってきた。
「ライデル!あなた魔法が暴発したときに、何をイメージしてたか覚えてる!?」
「えっ?イメージしてたこと?」
「そう!魔法は魔力の制御と発動する現象結果のイメージが重要なの!おそらく人族が呪文を詠唱するのは、そのイメージを補強するためのものだと考えられるわ!でも、あなたは当時そんなことは知らずに魔法を使ったはず!だとすれば、その時に見た景色にイメージが影響されたはずよ!」
「な、なるほど。あの時の景色・・・大雨だったから水をイメージしたのかな・・・あっ!」
あの時の事を思い浮かべていると、1つの衝撃的な光景を思い出した。
「なにっ?何か思い出したの?」
「あ、うん。いや、その・・・」
「なに?どんな景色を見たの?」
彼女が急かすように顔を近づけてくるが、もしあの光景に僕のイメージが影響を受けたとして、その結果魔法が暴発したにしろ発動してしまったとなると、少し話が変わってくる。
特に彼女から魔法についての基礎知識を学んだ今は。
「えっと、たぶんあり得ないかなと思うんだけど・・・」
「何なのよ!早く言いなさいよ!!」
彼女は我慢ならないといった様子で、僕の肩を掴んで先を急かしてきた。
「その、あの時近くに雷が落ちたんだ」
「・・・は?か、雷ですって?」
「そ、そう。こうピカッと光って、轟音と共に少し離れた大木にドカーンって」
そう説明すると、僕の肩を掴んでいた彼女の手から力が抜け落ち、目を見開いてぶつぶつと呟き始めた。
「うそっ!雷をイメージして魔法が発動した?それって・・・いやでも・・・」
しばらく彼女は自分の考えを整理するように歩き回りながら呟いていると、やがて真剣な表情で僕に向き直ってきた。
「ライデル、もしかするとあなたは雷属性に適正があるのかもしれない。暴発したっていうのも、単に雷がそこに発生した現象というだけで、魔法自体の発動には成功していたかもしれないわ!」
彼女の推察に納得するが、同時に聞いておきたいこともあった。
「そ、その、もし僕が雷属性の魔法が使えたら、結構騒ぎになっちゃうかな?」
「当たり前じゃない!雷属性を扱えたものは歴史上、たった一人しかいなかったのよ!?残された文献には、圧倒的な破壊力に、敵は成す術なく滅んだと記されていたわ!」
「え、えぇ・・・敵が滅んだなんて、なんだか物凄い物騒な話だね」
「それだけの魔法ってことよ!試してみましょう!もし雷属性が使えれば、グリフォンの群れなんてどうとでもなるかもしれないわ!」
彼女は期待に胸を膨らませながら僕を見つめてきた。そんな強大な魔法が制御できるのか不安なのだが、彼女の様子から試さないという選択肢は無さそうだった。
僕は何が起こっても危なくないようにリーアに距離をとってもらい、その辺に落ちていた木の枝を目標物となるように地面に突き刺した。
大きく深呼吸して、大雨の時の落雷をイメージして集中する。もちろん流す魔力量は少量にして、以前のような暴発が起こらないように注意することも忘れない。
「・・・よし、いくよ!」
「いつでもいいわよ!」
リーアに注意を促すと、僕は手のひらを前方に突き出して、地面に挿した枝に向ける。
「・・・雷よ!」
『ーーー!!!』
魔法名を唱えると、眩い閃光と共に、耳を
「・・・せ、成功した?」
「・・・・・・」
正直、眩しくて何も見えていなかった僕は、リーアの方を見ながら呟くように確認した。
彼女は弾け飛んだ枝へ駆け寄り、じっとその枝を見つめて頷くと、僕の方へ枝を持って歩み寄ってきた。
「ライデル、この枝を見て」
彼女が差し出してきた枝は、縦に割かれるように亀裂が入っており、所々黒こげになっていた。
「・・・雷が落ちた木みたいになってるね」
見たままの感想を伝えると、途端に彼女は弾けるような笑顔を見せた。
「そう!その通りよ!これは間違いなく雷属性魔法だわ!ライデル!あなた凄いわ!!」
彼女は興奮したためか、大声で叫びながら僕に抱きついてきた。そんな彼女の行動に驚きつつも、僕も魔法が使えたということに心が高揚していたので、しばらく彼女と共に喜びを分かち合った。
ひとしきり騒ぐと、お互いに落ち着きを取り戻し、少し冷静になったところで抱き合うのを止めた。
自分の行動に、彼女は若干気恥ずかしそうな表情をしていたが、僕はそんな表情を見せる彼女がなんだか面白くて、にこやかに微笑んでいた。
しかし、それが気にくわなかったのか、プイッと彼女はそっぽを向いてしまったが、僕が微笑んでいた事に対して、別に怒ってはいないようだった。
その後、結局僕には雷属性の魔法しか適正がないことが分かり、繰り返し鍛練を重ね、威力と制御を高めようということになった。
というのも、リーアは雷属性魔法の鍛練方法が分からないということで、とにかく繰り返し発動することで、まずは感覚を掴もうということになったからだ。
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