◇真実◇ 最後に

『春人君、ここまで読んでくれて本当にありがとう。もしかすると本当の私のことを知って裏切られたって恨んでいるかもしれないし、そもそも真実を知ろうとしているだけで私のことを探そうとしていないかもしれない。それでもありがとう、そしてごめんなさい。春人君の大事な友達の真夜ちゃんの真似をして、本当の私を偽って君に近づいて、虐めのことを打ち明けられなくて、計画のことを伝えなくて、本当の本当にごめんなさい。だけど春人君と一緒に夏を過ごせて本当に楽しかったです。養護施設にいた時は春人君の隣で笑い合ってる未来なんて想像できなかった。春人君もそう感じてくれてたら凄く嬉しいな。ここまで言えばもう知ってるかもしれないけど言わせてね。

 私は秋月春人君のことが好きです。大好きです。

 私の拙い演技を褒めてくれてくれたあの時からずっとずっと好き。

 ひねくれているように見えて、本当は自分自身も正しくあろうとしている君が好き。

 好き。

 本当だったら君に告白して恋人になってずっと側に居たかった。演劇を見て感想を言い合ったり、また水族館に言って恋人になる前を思い出してお互いに恥ずかしくなったり、お互いに嫉妬したり、キスをして愛し合ったり、結婚して子供を産んで幸せな家庭を築いたり……。

 だけど私はもう犯罪者でこの世にはいないことになっているからもう叶わない。そもそも春人君は私のことが嫌いかもしれない。もう君に会えないかもしれない。仮に会えたとしてもきっとまともな生活を送ることはできない。私といれば幸福なんてやって来ない。不幸しかない。

 だけど君は違う。好きな人ができて、その女の子を付き合うことができて、結婚して、温かい家庭で日々を過ごして、大好きな人達に見送ってもらって。そんな人生を過ごすことが春人君はできる。君には私の分まで幸せになって欲しい。

 だからもし、万が一でも私のことを好いてくれているのなら一つだけお願いを聞いて欲しい。

 ずっと私のことを探して欲しいって書いてきた。だけど違うの。私のお願いはこの一つだけ。

 私のことを探さないで下さい。これからは一人で生きていきます。私のことは忘れて、自分の人生を生きて下さい。前に進んで下さい。

 私と友達になってくれてありがとう。少しでも私のことを知ろうと調べてくれてありがとう。全部全部、本当にありがとう。

 さようなら』

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