◇真実◇ 二〇二〇年 八月十七日 月曜日(晴れ)

『今朝方、斎藤健二が遺体を運んできた。私の計画の目的は周囲の人達や警察に工藤さんが殺人犯として疑わせることだ。殺人犯として注目されたらそのトラウマからもう誰かを虐めたりしたりしないはずと考えたから。でも殺人犯として逮捕されるのは流石にやり過ぎな気がしたし、何よりも彼女が殺人を犯した証拠を捏造するのが難しいことから、あくまで殺人犯として疑われるような証拠を残して決定的証拠は一切作らないことにした。それでも十分に彼女の人生は終わるだろうし、一生苦しむことになると思う。虐めを受けることがどれほど辛くて、どれだけ追い込まれるようなものか事の重大さを思い知って欲しい。私の計画には遺体が必要だったから斎藤健二に遺体安置所から同じ背格好の女性の遺体を盗んできてもらった。ここ最近、身元不明の女子学生の遺体が発見されて安置所に一時保管されていたようで、その女の子には悪いけどその子の遺体を利用させてもらうことにした。だけど、そのまま利用するわけにはいかなかったから、焼却炉を使って白骨化することで身元判別ができないようにしておいた。工藤さんの父親は葬儀社を経営しているからちょうど良かった。私の考えたシナリオは虐めの被害者である私が加害者である工藤さんによって衝動的に殺されたというもので、こうすれば注目度が高くなって虐めの事件として話題になると思った。最近は虐めによる自殺が多くなってきていて、加害者によって被害者が殺されたとなれば虐めが無くなる何かのきっかけになると思う。だから私はある事件を起こすことにした。実行日は八月二十一日で、まずは工藤さんを家に呼び出す。玄関先に防犯カメラを設置しているからこの日彼女が私の家にやって来た証拠になるはず。そして、私の部屋で虐めの動画を使って彼女を挑発し、すぐ近くに置いておいたバットで私を殴らせてから大声を上げて家から追い出す。その後、あの遺体を運んできて身元不明にするために顔を潰す。これで私を殺して逃げたって思わせることができる。最後は翌日に家を放火して工藤さんが様子を見に来たように見せかける。これが私の計画だった』

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