いつかの日記

斯波らく

一日目 自己紹介したところで、イメージ作りにしかならない。

今日から日記を始める。どうせ飽き性だからすぐに終わるだろう。小さなことを書き留めておくために始めてみるが、まあ、続かなければ続かなかったで。ね。別に誰かに怒られる訳でもない。


初めての日記は自己紹介を書くもんだろうけど、特にこれといって書くべきことが思いつかない。みんながプロフィールとして紹介している職業や何かしらの病名が、自分にとっては特に自己紹介になるものではないからだ。

そもそも日記を読めば大体どういう人か把握出来るものなのだ。一番始めに自己紹介したところで、イメージ作りにしかならない。その枠組みを作ってしまうと自由が奪われる可能性がある。だからやめておく。


今日はこんな会話をした。


子「パパと結婚するー!」

母「え〜ママと結婚してよ〜」

子「じゃあママと結婚する!」

母「仲良く暮らそうねえ」

父「え、じゃあパパはどうなるの?」

母「離婚……かな?」

父「いやダメダメダメダメ」

母「ダメかあ〜。ねえ〜ダメだって〜。」

子「そおなの?うーん。じゃあ(幼稚園の子)と結婚しようかなあ」

父母「いやダメダメダメダメ」

子「ええ〜もう二人ともわがままだなあ〜。」

父「まだパパを卒業するのは早い」

母「誰と結婚するかは、大きくなったらちゃんと考えるのよ。」

子「うん!」


公園でたまに話すミユキさんマユさん夫婦のところも「ママと結婚する!」って言われているのだろうか。「どっちのママと結婚する?」ってなりそうだな。それはそれで楽しそうだが、我が家は異性婚だから出来ない。同性婚が認められて久しいが、好きな人と家族になれるってのは相変わらずすごいことよな。

子供に「結婚する!」と言われるのは嬉しいことだ。妻にプロポーズされた時くらい嬉しい。ただ子供にはもっと世界を知ってもらう必要がある。我々は、自分の子供と結婚することが出来ないからだ。血縁関係があると色々と色々あるため、この国では結婚を禁じられている。残念だが、子供は我々以外の人と出会い、誰かと一緒になるなり、ならないなりするのだ。


独身の中年も多い。彼らと話していると、月一くらいで別居生活をするのも良いかもな、とか思う。となると子供を誰が見るかというのがあるが、まあ、うちにはヒト型のアレクサがいる。普段は起動しておらず、休日家族三人で出かけたい時にだけ電球交換など細かな家事や防犯のために働いてもらっている。初めて使うときに子守機能も使ってみたが、アレクサの目についているカメラの映像がアプリに送られてくるから、ほぼリアルタイムで子供の様子を確認出来るし、幼稚園の送迎も問題無かった。スーパーに買い出しに行けるんだから、幼稚園の送迎くらいは出来るのだろう。

料理、掃除、洗濯あたりは別のロボットがやってくれるから問題ない。もし何かあった時はすぐに連絡が来るようになっているし、アレクサが自動運転車をこちらの居場所に着くよう予約してくれる。多少離れた場所にいても、人間の到着までの応急処置はやってくれるのが助かる。

あとは風呂に入れる機能がどんなもんか知っておかないとな。防水とはいえ、シャワーをもろに浴びせるのはなんとなく気が引ける。まだあんまり使ってなくて、「表面の汚れを落とすためにシャワーを浴びて」という指示をしたことがない。やるか〜。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る