ショートストーリー

夜桜カユウ

テーマ 「猫」「イルカ」

たくさんのガラス張りの水槽のなかに、魚が泳ぐ。

そして、ガラスに薄く反射する、暗い通路。

そこにいるのは、魚と一匹の猫。

猫はとっくに電気のついていない、カーペットが敷かれた通路を、何食わぬ顔で歩いていく。

ガラスに閉じ込められた魚たちを素通りし、

猫は通路を抜ける。

やがて外へと出る。

先ほどの、人口的な暗さとは違った、自然な、夜闇の暗さ。

その中も、猫は迷わずに進む。

しかし、進むうち、猫は1つの水槽に、何かを見つけた。

そして恐る恐る近付いた。

コケが少し張った、他と比べて大きな水槽に。

猫は興味の赴くまま、その水槽へと向かう。

中の存在が気になったのか、水槽のガラスをカリカリと引っ掻き始めた。

すると、中から「コン、コン…」と小さく音が帰ってきた。

イルカだ。

ネコとイルカは、互いに興味深そうにお互いを見つめ合う。

…じっと、見つめている。

そしてネコが視線を外す。短い夜は終わり、また1日が始まる。

ネコはまた歩き去って行く。

そのうしろで、イルカは一匹のネコを目で追いかけ続けた。

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