野球が消える日

わちお

プロローグ

1人の少年がバットを持って星空の下に立っていた。ついさっき観た野球選手のスイングを見様見真似でがむしゃらにバットを振っていた。


「さあ9回裏の攻撃。2アウトランナーは2塁。やはりこの男には良いところで回ってきますね。バッターボックスには世界の北穂志が入ります!」


脳裏にさっき観た野球中継のビデオの実況が流れる。


少年には野球がどのようなものかはわからなかった。しかしこの実況と脳裏に焼きついたこの9回裏のシーンだけがなぜだか心の奥を熱くさせた。


彼のその瞳にはただ純粋な憧れだけが光っていた。


「さあ注目の第3球、投げました!」


少年は力いっぱいバットを振り抜いた。


頭上にある無数の星が、たった今追う夢を見つけた少年を鼓舞するかのように輝いていた。

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