天界より、荒廃した地界へ向けて─。

涼雨 レモン

プロローグ


 彼は夢を見ていた。


 ──ピピッ『被検体と■■ル■■リ■プ■■との型、合致を確認。』

 コンクリートで囲まれた薄暗い部屋の中。

 モニターには霞んでいて全ては見えないものの、何かのゲージが映し出されている。その数値は100%を示していた。

「………遺■■情■が開示されて被検体との合致は■■■■してた。まさか100%合致するとは思ってもみなかったけどね。」

「博士。そろそろ奴らが来ます。監視カメラを故障させたとはいえ、これ以上の時間は………」

 博士と呼ばれたその女はゆっくりと筒状の水槽へ近づく。

「大丈夫。奴らの好きにはさせない。ごめんね、助手である君のこと巻き込んだりして。」

「いやいや、博士の助手になった時点でもっと色んなこと巻き込まれてるし。運命共同体ってやつです。最期までどうせなら付き合いますよ。」

「えー!?そんなこと言ってくれんの?嬉しいなぁ…」

 頬を一筋の涙が伝う。

「……ごめん。ごめんなさい。」

 女は泣き崩れながら装置を起動させた。

 次の瞬間。

 大きな音とともにスーツを着たたくさんの男たちが部屋になだれ込んできた。


 2人の顔と装置の中身は見えず、聞き取れなかった言葉も多い。目の前が歪み、景色が認識出来なくなっていく。

 そのまま彼は夢の中の意識を手放した。

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