第7話 真里菜と井坂の転落死事件、捜査本部が設置!

 真里菜の転落事件から4日後(井坂の遺体が発見された日の翌日)。

 井坂の司法解剖の結果、死因は転落による脳挫傷。ほぼ即死したものと推定された。そして、井坂の体内から睡眠薬が検出された。

 現場付近の聞きこみ捜査により、ふたりの目撃者が見つかった。

 ひとりは、現場近くで居酒屋を営む店主。午前2時頃店を閉めようとしたとき、酔っ払った男がもうひとりの男に担がれ、高架橋の方に歩いていくのを見かけたらしい。顔を見ていないので、それが井坂かどうかは不明。


 もうひとりの目撃者は、その居酒屋から100メートルほど離れたところにあるコンビニの店員。コンビニが隣接している神社の裏口から出てくるふたり連れを見かけた。やはり一方が他方に担がれていたように見えたらしい。こちらも、神社の裏口まで20メートルほど離れているので、井坂である確証はなかった。

 店員の話によると、コンビニで酒を買って飲み始めた学生数人が、酔った勢いで神社に入って騒ぎ出したので、入れ替わりに裏口から出てきたのではないか、ということだった。


 井坂の体内から睡眠薬が検出されたことと、ふたつの目撃情報により、警察は、井坂の転落死を他殺と断定した。しかし、依然として真里菜の事件と井坂の関係、そして、真里菜の転落死と井坂の転落死の関連性については、まったく手がかりがなかった。

 幼馴染みのふたりが同じように転落して死亡していることから、所轄の刑事課第一係長の竹内は、同じ犯人による連続殺人事件ではないかと直感した。もちろんなんの確証もなかったが……。



 明日香が井坂の転落死を知ったのは、真里菜の告別式の翌日の朝刊。

 新聞の社会面に、『西武線で転落死亡事故 大学生が死亡』という見出しで、

 『昨日未明、西武池袋線椎名町駅近くの線路上で、人が死んでいるのを池袋発の始発電車の運転手が発見。直ちに警察に通報したところ、死亡したのは、城北大学2年の井坂宏治さん、20歳と判明。警察の調べでは、井坂さんは、なんらかの事情で、線路上に架かる高架橋から線路内に転落し、死亡したものとみられた。転落原因については、引き続き捜査を行う――』という記事が掲載されていた。


 朝刊を読んでいた明日香は、息がとまるほど驚き、思わず「なっ、なぜ? 井坂君まで……?」という言葉が、口から飛び出した。

「朝からどうしたの? 変な声出して」突然声をあげた明日香を心配して、洋子が尋ねた。

「4日前大学で亡くなった真里菜さんの幼馴染が、昨日同じように西武線の高架橋から落っこちて、死んじゃったの……」

「どうしてそんなことになったの?」

「そんなこと、あたしには、なんにもわからないわよ!」頭が混乱した明日香は、おっとりした母親の問いかけに、つい強い口調で反応してしまった。


 気まずい思いがしたが、そんなことに構ってられない明日香は、すぐさま自分の部屋にいき、スマートフォンを手にし、発信ボタンを押した。

「もしもし、片瀬君。新聞、読んだ?」

「朝っぱらから、誰や。村木か?」

「そうよ。新聞、読んだ?」

「新聞なんぞ、気のきいたもんが、俺んとこにあるわけないやろ!」

「井坂君が死んだのよ!」

「えっ……。なんやて! なんで、井坂が殺されたんや?」

「殺されたとは、書いてないわ。昨日の朝、西武線の線路で死んでいるのが見つかっただけ。線路の上の高架橋から転落したみたいで、まだ自殺とも、他殺とも、なんとも書いてないわ」

「なんで井坂が……?」予想外のできごとに、片瀬は言葉が詰まった。


「真里菜さんも転落死だったわよね。それと同じように、井坂君も転落して死んだ。絶対このふたつの事件、関連しているわ、きっと!」

「俺もそう思うわ。岡本が殺されたんやとすると、井坂も同じや。きっと誰かに殺されたんや」

「ねえ、これから皆で集まらない? 片瀬君、今どこにいるの?」

「まだボロアパートや。さっき起きたばっかりやから……」

 片瀬は、大塚駅近くの4畳半ひと間のアパートで暮らしている。もちろん風呂はなく、トイレも共用。築30年以上は経っていると思われる古い木造アパート。

「よし、そうしようや。俺が皆に連絡しとくから。11時に部室に集合や!」

「わかったわ。それまでに頭の中を整理しておくわ」



 城北大学では、土曜日は、原則として授業を設けていない。講演会や企業に学生を派遣するインターシップの説明会など、特別の行事が開催されることはあるが、通常の授業はない。

 体育系のクラブは、授業のない土日を中心に活動し、公式戦などの試合が行われることが多いが、明日香が所属する法律研究部は、原則として土日を休みにしている。土日に司法試験関係の専門学校に通う者やバイトを入れる者が多いからだ。


 明日香が法律研究部の部室に顔を出すと、すでに会議用テーブルに片瀬とエルコバが座っていた。片瀬によると、ミニコバはバイトでこられないが、麻衣子はくるらしい。

 しばらくすると、麻衣子が先輩の杉浦と連れだって入ってきた。

「杉浦先輩、どうされたんですか?」想定外の杉浦に明日香が問いかけた。

「正門のところで、偶然麻衣子と会っちゃって、一緒についてきちゃったんだ。この前の転落事故の被害者が法研の1年生と聞いて、びっくりしたよ。いったいなにが起こったの?」

「それをこれから推理しようと、皆で集まったんやけど。先輩も一緒にどうです?」片瀬が誘った。

「それなら、僕も参加しよう」杉浦は積極的だった。


 最初に片瀬が、口火をきった。

「まずは、岡本の事件やけど、自殺ではのうて、誰かに殺されたんやと思うわ」

「えっ! 彼女は、殺されたの?」驚いた杉浦が思わず声をあげた。

「ええ、まず間違いないと思いますわ。同級生の栗原の話では、岡本が自殺など、するはずないというてますし、立入禁止の屋上から事故で落っこちることは、まずないやろうから……。自殺や事故でないなら、殺されたとしか考えられまへん。

 一昨日、俺と村木が警察の事情聴取を受けた感触では、警察もそう考えてると思て、まず間違いないやろ」


「いったい誰が殺したんだ?」冷静な杉浦が、珍しく声を荒げた。

「それはまだわかりません。ただ真里菜さんの事件に、恋人である井坂君がかかわってることは、確かだと思います。井坂君というのは、真里菜さんの幼馴染で、うちの法学部の2年生です。おそらくふたりが、なんらかのトラブルに巻きこまれたのではないかと、思うのですが……」明日香が、片瀬に代わって説明した。


「その井坂までが、昨日の朝、殺されたんや! 今朝の朝刊に、出てたやろ!」

「えっー!」新聞を読んでいない麻衣子と、新聞を読んでいるが、井坂が真里菜の恋人とは知らない杉浦が、同時に声をあげた。

「ちょっと待ってよ。彼女の恋人まで、殺されたの?」冷静さをとり戻した杉浦が、確認しようとした。

「いえ。正確にいうと、西武線の線路で遺体が発見されたというだけで、まだ殺人と断定されたわけやおまへん」


「そうだとしたら、真里菜を殺した井坂が自殺したということも、考えられるんじゃない?」麻衣子が、得意の愛情破綻説を主張した。どうも麻衣子は、この事件を男女の愛情の縺れによる犯行と考えたいようだ。

「そらそうやけど、栗原の話を聞く限りでは、ふたりには愛の破綻など、考えられへんて、いうてるぞ!」

「まあ、そうだけど……。でも、可能性は、なくはないわよ!」


「ところで、なぜ井坂君は、姿をくらましていたんだろう? 真里菜さんが殺されてから、遺体で発見されるまで、2日あまりあるけど……」エルコバが、素朴な疑問を投げかけた。

 エルコバは、メタボで動作が緩慢なことから、しているように見えるが、頭の回転が速く、勘が鋭い。授業をよくサボる割には、成績がいいのも、そのあかしだと、明日香は評価している。


「そのことは、あたしも気になってるの。井坂君は、真里菜さんが亡くなってから、一度も亡くなったことを確認してないのよ。愛する人が突然亡くなれば、誰もが死に顔を見るまでは信じないはずよ。それなのに井坂君は、葬儀にもこなかった。結果的には、すでに亡くなっていたので、それは無理なんだけど……」

「そうよね。でもね、真里菜を殺した犯人が井坂だったら、確認なんかしないよ! 自分で殺したんだから……」ここぞとばかりに麻衣子は、愛情破綻説に結びつけようとした。

「お前な、何回いうたら、わかるんや! 井坂は、岡本を殺したりはしとらんのや!」片瀬の怒りが爆発した。


 ふたりのバトルを無視して、明日香が続けた。

「あたし、最初、井坂君が誰かに監禁されてたんじゃないかと、思ったの。誰かとは、おそらく真里菜さんを殺した犯人なんだけど……。

 でも、それだと、なぜ井坂君は、犯人を知ってたのか、わからなくなるのよ。真里菜さんが殺された時点で、すぐ犯人が浮かぶほど、ふたりでなにか悪だくみでもしていれば、ともかくとして……。

 それで、井坂君は、真里菜さんを殺した犯人を見つけ出そうとしてたか、あるいは犯人に心あたりがあって、捕まえようとしてたんじゃないかと、思うのよ」

 明日香が、井坂の行動を具体的に推理した。


「それなら、なんで逃げるんや! 警察だって、必死に井坂を捜してたはずなんや。犯人に心あたりあるんやったら、警察にいえば、ええがなぁ」片瀬が疑問を挟む。

「きっと、警察にはいえない事情が、あったのかもしれないよ……」エルコバが、明日香の推理に同調したかのようにいった。

「どんな事情や? 唯一考えられんのは、井坂が岡本を殺したという事情や。それはありえんやろ」


「ちょっと待ってよ。こういうふうに考えられない?

 真里菜さんを殺した犯人を見つけ出した井坂君が、逆に犯人に捕まり、監禁された上で殺されたというのは、どう?」明日香が推理を組み立て直した。

「岡本が殺されて井坂が死ぬまで2日あまり、正確にいうと、岡本が殺されたのを知って家を飛び出してから、井坂が転落死するまで40時間。その間井坂は、犯人に監禁されてたというんかいなぁ。わざわざ犯人は、監禁したあとで井坂を殺したと……。俺なら、すぐやっちまうけどなぁ」


「確かに、井坂君がすぐに犯人を見つけてたら、あるいは最初から犯人を知ってたとしたら、この40時間は、説明できないね」明日香は、自分の推理の甘さを認めながらも、再び反論した。

「でもね、犯人を見つけるのに40時間かかった。あるいは最初から犯人を知ってたが、捜し出すのに40時間かかった、とも考えられるわ」

「いくら憎き犯人を見つけようとしても、夜になったら、家に帰るやろ。姿をくらましてまでやることやないやろ」


「それはそうだけど……。ねえ、杉浦先輩は、どう思います?」

 考えこんでいた杉浦は、突然意見を求められ狼狽うろたえた。

「あっ、ああ、そうだね。その井坂君が、警察にはいえない事情、例えば、今回の殺人事件じゃなくて、ほかの犯罪にかかわってたというような事情があれば、考えられなくはないね」

「そうですよね。きっとなにかあったのよ、井坂君に。それに真里菜さんもかかわってるのよ」

「じゃあ、それは、いったいなんやねん?」片瀬が執拗に食い下がった。

「それは……。でも、それがわかれば、この事件を解決できるはずよ、きっと」

「そうだね。この事件を解明するには、井坂君の失踪した40時間の足どりを、解き明かす必要があるね」最後に杉浦が締めくくった。



 一方、豊島警察署では、池袋の繁華街で発生した暴力団同士の抗争による射殺事件の犯人が、拳銃持参で自首したことで、事件が解決したばかりであった。

 井坂の転落死が他殺と断定されたことで、真里菜と井坂の転落死事件が、城北大学生連続殺人事件として、署内に捜査本部が設置された。相次ぐ殺人事件で、刑事課長の石田は、猫の手も借りたくなるほどの忙しさだ。


 午後1時、第1回の捜査会議が招集された。陣頭指揮を執るのは、本庁刑事課長の室田むろた警視。『捜査の鬼』という異名があり、捜査指揮には定評がある。

 会議は、現場状況の説明や聞きこみによる目撃情報の報告など、30分程度で終了。警察も、真里菜の転落死の翌日、井坂が家を飛び出したあと、西武線の線路内で転落死する直前、コンビニの店員に目撃されるまでの足どりを追っていたが、つかめていなかった。


 会議室を出た竹内は、石田に声をかけられ、刑事課の石田の席まで同行した。

「どうも、に落ちんなぁ」席につくなり、石田が呟いた。

「なにがです?」竹内が尋ねた。

「いや、井坂宏治が姿をくらましてたことさ。おそらく井坂は、恋人の岡本真里菜の転落死を聞いたとき、すぐ殺されたと思ったのだろう。ふたりでヤバいことでもしてたら、直ちに逃げるだろうが、ヤツは姿をくらましたが、逃げてはいない」

「そうですね。家にも帰らず、着替えもせず、必死になにかを捜そうとしてたか、それとも誰かにかくまわれてたか」

「なにを捜そうとしていたのだ、井坂は。岡本真里菜を殺した犯人か?」石田は眉間にしわを寄せた。

「いえ、そこまでは、彼にもわからなかったでしょう」


「そうなると、誰かに匿われてたというセンだな」

「まだなんともいえませんが、私は、井坂宏治と岡本真里菜に、もうひとり彼らにかかわっているヤツがいて、そいつが井坂を匿った、いや事件の発覚を恐れて監禁してたのかもしれません」断定こそしていないが、竹内は自信たっぷりの表情をしていった。

「そのセンでいくと、このふたつの事件は、同一犯だということになるな」

「おそらく。場所こそ違え、まったく同じような転落死ですから……」

 石田は、竹内の推理が的を射ていることに安堵感を覚えた。

「とにかく、大至急、井坂の2日間の足どりを突きとめてくれ!」といって、竹内を激励した。



 法律研究部のが終わり、明日香は、ひとり駅に向かって歩いていた。

 麻衣子はバイトがあるといって先に帰り、エルコバは行きつけの喫茶店に入り、片瀬は図書館、杉浦は院生室で勉強するということだった。

 明日香が、西口五差路の交差点で信号待ちをしていると、背後から「村木明日香さんですよね」という声をかけられた。

 振り返ると、法科大学院のマドンナ、有村美咲が微笑みながら立っていた。


「ごめんなさい。急に呼びとめたりして」

「いえ、その節は、ありがとうございました」

 明日香は、ひと月前、陣内に誘惑されそうになったのを援けてくれたお礼をいった。

「とんでもない。あのときは、たまたま居あわせただけ。陣内先生がとても酔っていらっしゃったので、心配しましたよ」

 さりげなく陣内の話題をかわした美咲は、「もし時間があるのなら、私とお茶でもしない?」と誘ってきた。

「ええ。前々からあたしも、一度有村さんとゆっくりお話したいと思ってましたから……」と同意し、二又交差点のルーブルまで引き返し、窓際の席についた。


「明日香さんは、法曹志望なのよね。法律研究部でがんばってるって、杉浦君から聞いてます」

「はい、そうなんです。卒業後は、法科大学院に進学しようと思ってます。弁護士になるのが夢で、困っている人たちを援けたいんです」

「そう。実は、私も弁護士志望なの――」

 美咲は、自分の父親が弁護士で、そのあとを継ぐために弁護士になりたいと思い、今では、弁護士になることが自分の宿命だと思っている。将来は、法曹過疎である郷里に戻って、弱者を援けたいと考えていることなど、切実に語った。


 そして、美咲は付け加えた。

「私は、既修の2年コースだから、来年3月に修了し、5月に行われる司法試験を受ける予定なの。新しい司法試験は、法科大学院修了5年以内に3回しか受験するチャンスがないから、今からプレッシャーで、大変なのよ」

「難しい試験ですよね」

「かつての司法試験に比べると、合格者の数も増え、少しは易しくなったといわれてるけど、実情はそんなに変わらないと思うわ。試験が変わっても、求められる法曹の素養は、同じだから……」


「あたしにも、できるかしら?」自信なさげに明日香は尋ねてみた。

「中途半端な気持ちなら、やめた方がいいわ。絶対に受かるんだという強い意志と、すべてのものを犠牲にしてでもやり遂げるんだという覚悟がないとね。中途半端が一番いけない。法科大学院の学費だって、馬鹿にならないもの……」

 美咲の話を聞いて、自分がまだまだ甘いと、明日香は自覚させられた。中途半端なら、やらない方がいいという美咲の言葉が、明日香の胸に突き刺さった。

 このあとも、美咲は、法科大学院の受験対策について、明日香にアドバイスしてくれた。司法試験にとり組む美咲の真摯な姿勢に感服し、明日香は、ますます美咲をあこがれるようになっていた。


 明日香には、気になることがあったので、躊躇ためらいながらそれを口にした。

「杉浦先輩とは、おつきあいされてるんですか? 先日、ここで仲よく話されているのをお見かけしたものですから……」

「えっ……」一瞬意表を突かれた表情を見せた美咲だった。

「とんでもない。今は、恋愛などしてる暇なんかないのよ。すべてを犠牲にしてでも、やり遂げなきゃいけないんだもの」

「すみません。余計な勘繰かんぐりをして。でも、とても仲がよさそうに見えたものですから……」

「彼とは、いいライバルよ。互いに励ましあいながら、一緒に合格しようって、約束してるだけよ」美咲はさりげなくいった。


 実は、法科大学院に進学したとき、美咲は、杉浦から交際を申しこまれた。ともに合格したあかつきには、結婚を前提につきあってほしいと。だが、そのことは、明日香には黙っていた。

「そうなんですか。お似あいのカップルだと思ったものですから……」

「でも、彼はいい人よ、とても。

 私は、恋をすると、その人だけしか見えなくなるような気がするの。だから自分自身に恋愛を禁じて、自制してるのかもしれない。そうしないと、司法試験に集中できなくなるから……」


「まるで『六法が恋人』ですね」

「六法が恋人?」意味がわからず、美咲は、鸚鵡おうむ返しに尋ねた。

「あたしたち、杉浦先輩のことをそう呼んでるんです。女性には見向きもせず、ひたすら法律の勉強に集中している姿を見て」

「そう、杉浦君のことをね。うまくいいあててると思うわ」

 杉浦のことを明日香に隠している美咲は、そう答えるしかなかった。


「ところで、あなたの方はどうなの? 誰か好きな人、いるの?」これ以上杉浦のことに触れたくない美咲は、矛先を明日香に向けた。

「そんな人、いませんよ!」明日香は、強い口調でいいきった。

「当分の間は、六法を恋人にするつもりですから……」

「そうよね。私も、六法を恋人にしてがんばらないとね」美咲は、優しく微笑んで相槌を打った。

 結局、2時間もふたりで話しこんでしまった。外はすっかり暮れていた。別れ際に美咲は、「勉強のことで悩むことがあったら、いつでも相談に乗るからね」といって、明日香を励ましてくれた。

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