第21話 柊ちゃんの憂鬱・迷子の悪霊

リサイクル店店員の私、柊が勤務していると、店の電話に不審者からの着信があった。


「タシケテ!柊ちゃん!迷子になっちゃった!」


不審者ですね。さようなら。


「マジで!マジでタスケテ!ガチのマジで!」


あー。あの悪霊、いつもいつも…今度は迷子ごっこですか。


「宇宙にバイーンって出て、戻ってきたらなんか外人しかいないし」


そりゃ外国だからだろ。

っていうか、宇宙とか、ちょっと何言ってんのかわからない。


「日本語通じないし!」


通訳くらいいるだろ。探せよ。

あーめんどくさ。

なんか、極度の方向音痴で、日本の方角とか全くわからないとかなんとか。

あー、スマホ霊のギーグルちゃん今ここにいるわ。

全部ギーグルちゃん頼りだったわけね、今まで。

オマエが持ってるスマホ、現在位置表示機能あるから。

借り物?いいから。

操作方法教えるから。なんなら、スマホもうひとつ借りて。落ち着いて。

スマホには翻訳機能あるから。

それで人に聞いたり検索したりしてみな。

座標値をメモする。そして、それを私に電話で伝える。

私の携帯番号言うからメモして。そう。

座標値を読み上げて。そう。

そうそう。

うわぁ、オーストラリアの砂漠の街じゃん。

…今いる、その街で待ってな。

日本大使館とかダメだからな。

自分が悪霊だって事を忘れないように。

トンチキな日本人のフリをして、公的サービスは避ける。

OK?

一週間後にそこに迎えに行くから。

え?もっと早く来いって?

無理言うなや!

日本との距離とか、オーストラリア大陸のデカさとか、わかってねーのかこいつ!


方向がわかれば飛ぶ?

それ絶対もっとヒドい事になるフラグだから!

海上で余計迷うから!

いいから!黙って待ってろ!じゃ。

いいから!だーまーれー!


着いたら、街のラーメン店でオーストラリアラーメン喰わせてやるから。

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