第8話 日本では……(3)
リリスの魔法を使った動画が投稿された翌日、登校してきた剛に杉田が声をかけてきた。
「よう、茂手内。おはよー」
「お、杉田。おはよー」
「なあ、茂手内。リリちゃんの動画、見た?」
「ああ、見た見た。やべぇよな」
「だよなぁ。あの透けそうで見えない感じがエロいよなぁ」
「え? 透けてなかったか?」
「いやー、微妙」
「お、茂手内、杉田!」
「おう! 西川。おはよー」
「おはよー。それよりリリちゃんの動画」
「見た! まじ最高だった! あの濡れたのとか! まじエロくてリアルだよなぁ」
「やっぱり? 俺も思った。他のVTuberと全然違うよな」
「だよな! 思うよな!」
「他のVTuber、あんな風に濡れたモデルとか用意しないもんな。リリちゃんみたいにぐりぐり動かないし」
「な! 水しぶきとかも超リアルだったし、案外マジで実写だったりして」
「まさかぁ。あんな可愛い子、現実にいるわけないって。しかも胸でかくて、腰だってめっちゃ細かったじゃん」
「だよなぁ。でも、芸能人だって自撮りとか全部加工なんだろ? ならあれも加工だって」
「いやいや、動画は加工できねぇだろ? 写真ならいけるけどさ。だからパケ写詐欺とか言われてんじゃん」
「あー、たしかに。写真だと腰細いのに動画だとただのデブだったりするもんなぁ」
「だろ? だから実写だって」
「でもなぁ。結構ガチでがんばってるCGなんじゃね?」
「CGはさすがにないんじゃね? あれ、すげぇ金かかるんだろ?」
「そうなのか?」
「らしいぜ」
「まあ、どっちでもいいんじゃね? リリちゃん、すげぇ可愛いし」
「たしかに」
「だからさ。俺、次はコスプレしてくれってコメ入れといた」
「コスプレ? すでにエルフコスじゃね?」
「ちげえよ。そうじゃなくって、メイド服とか着て欲しいじゃん」
「いいな! それ! メイド服見たい」
「いや、水着だろ」
三人はそんな他愛もない会話をしながら下駄箱にやってきた。上履きに履き替え、校舎内を歩いていく。
「なあ、俺らでコスプレのリクエスト出してみねぇ? まだ登録者数少ないし、やってくれんじゃね?」
「お! 杉田! お前天才じゃん!」
こうして他愛もない話をしながら剛たちは教室へと向かうのだった。
◆◇◆
剛がリリちゃんの話題で盛り上がっているころ、教室で自分の席に座る朱里は大きくため息をついた。
そんな朱里にクラスメイトの野田美里が心配そうに声をかける。
「朱里、大丈夫? 元気ないよね?」
「あ、みっちゃん。うん、大丈夫」
「大丈夫そうじゃないじゃん。お兄さんが亡くなって、ずっとため息ばっかりじゃない」
「うん……」
「気持ちが分かる、なんて簡単には言えないけどさ。いつまでも悲しんでたって――」
「そうじゃないの。兄さんのことは悲しいけど……」
「けど?」
「……」
朱里はそのまま口を
「朱里……」
美里は心配そうに朱里をじっと見つめる。
「朱里、うちら親友でしょ? 困ったら相談してよ?」
「うん。ありがとう」
すると教室の扉が開き、担任の教師が入ってきた。
「ホームルームを始めるぞー」
「あ、戻るね。また後で」
「うん」
美里はそう言って自分の席に戻るのだった。
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次回は人里を目指します。第一村人発見となるでしょうか?
どうぞお楽しみに!
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