第6話続・料理長の憂鬱1
「さて、どうしたものか」
大吾は『大きな』執事のデザートで悩んでいた。
彼は自分の嫌いな食べ物に対する察知能力に長けている。
自分の嫌いな食べ物が入っている時は匂いを嗅いだだけで拒否してしまう。
さらにカロリーの低いものでお腹を満たすことに対しても辟易している。
ひと昔前に流行った豆腐ハンバーグを作ろうとしたことがあったが、
「それはハンバーグじゃない。豆腐でしょ?」
と切り捨てられた。
同じように彼の中でデザートと認めた上でカロリーを抑えたものとなると、とても限られてくる。
フルーツも添えてあるものであれば良いが、メインではあまり食べたがらない。
どうしよう、大吾は手詰まりになり思考が止まった。
すると、大きな足音と共に陽気な庭師がやって来た。
「大吾さん、さっきはありがとうございます。作戦は大成功でしたよ!」
「やぁ、それは良かったね。僕の方もカロリーの低いもので彼の空腹を満たせたから良かったよ。」
「それにしては浮かない顔してますね、何かあったんすか?」
大吾はかいつまんで事情を話した。『大きな』執事のデザートを作らなければならなくなったこと。
なるべくカロリーの低いものでなければならないこと。
大豆食品やフルーツ、彼の嫌いなものでは食べてくれないこと。
陽気な庭師はふむふむと話を聞いていた。
すると何か良いことを思いついたのか、不敵な笑みを浮かべながらある案を提案してきた。
その提案に始めは聞くだけ程度に伺っていた大吾も、話を聞いているうちにこれしかないと思ってきていた。
「酢矢くん、その食材は潤沢に手に入りそうなのかい?」
「いま注目を集め始めてますからね。知り合いに専門の業者がいるので、連絡してみますよ。まだ一般の人には受け入れられてないので、数はあると思います!」
助かるよと大吾は庭師に感謝をし、あいつに食べさす時は絶対呼んでくださいね、と先程よりもさらに不敵に笑っていた。
翌日、時期も良かったみたいですねと、割引してもらったという食材を抱えて持ってきた。。
「よくこんなに手に入れられたね、ありがとう。でも敬介くんにどう食べさせようか。」
大吾は『大きな』執事に悟られずにどう提供すれば良いか、これといったアイデアはまだはっきりと浮かんではいなかった。
「それなら任せてください。あいつのことなら熟知してますから。あいつの好きなものに似せちゃえば良いんですよ。」
陽気な庭師は含み笑いと共に、『大きな』執事の大好物に見せかけるアイデアを大吾に提示してくる。
「確かにそれなら食感も似せることができるかもね!」
大吾は早速調理にとりかかる。「まずは明日の朝市で魚市場に向かわなきゃね。」
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