第1話

『――今回は夏休みに行きたいテーマパークランキング上位3位をご紹介します!』


 リビングからかすかに聞こえるテレビの音がソラの耳に届いた。


「夏休み……か」


 高校1年生最初の夏休みは勉強も部活も頑張って空いた日は彼氏とデートに――


 そんな夏休みを送るはずだった。


 実際、夏休みに入って2週間くらい経つが外に一歩も出ていない。


 勉強もしていないし、もちろん部活にも行っていない。


 特に何もしていない。いや、何もできない。


 課題をするためにシャーペンを握ってもボーッとするし、外に出るための準備をすることさえめんどくさい。


 仕方なくスマホで動画を見たり、SNSを眺めたりするがつまらない。


 最近ずっとお腹が痛いし、頭も痛い。


 ご飯を食べても胃がもたれるような感じがして気持ち悪い。


「今日1日なにをしていたの?」と親に聞かれるけど何も答えられないのが辛い。



 こんな夏休みになるはずじゃなかった――



 本当に突然だった。夏休み初日のことだった。


『ソラ、いきなりだけどさ。別れたいっていうか、うん。理由は色々あるんだけど』


 2時間前に彼から届いた通知を見た私はすぐに返信をした。


『え、なんで?』


 しかし、2週間経った今も彼からの返信は来ない。


 ただただ彼との記憶を思い出してはため息をついて。そんな毎日だ。


『時間が解決してくれます』ネットにはそう書いてある。


 でも、私は彼と出会う前からずっと辛くて、凄く自分のことが嫌いで、毎晩毎晩なんで自分は生きてるんだろうって自問自答を繰り返して――


 だから彼との出会いは『神様が私に存在価値を与えてくれた』『今まで頑張って生きてきたことが報われた』そう思っていた。


 そんな彼が隣から居なくなった私は今日、なんの為に生きているのだろう――


『――皆さんも今年の夏休みは大切な人とテーマパークに行ってみてはいかがでしょうか!?』


 あぁ、そういえば明日、彼と遊園地に行く約束してたんだっけ――


「一緒に遊園地、行きたかったな……」


 ソラの口から漏れたため息は誰も居ない部屋の中で静かに消えていった。


 時計の針は23時30分を指していた。


 寝返りを打ったソラは早く寝なきゃと自分に言い聞かせて枕に顔を埋めた。

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