第23話 聖女とせいいき①
気が付けば、そこは元の城の中でした。先に体が戻り、次いで精神がゆっくりと器に浸透していくような、ずれた感覚を味わいます。
それがきちんと納まったと感じた瞬間、無意識に大きく息を吐き出している自分に気が付きました。
「戻ってきたのね?」
エルネアが不安そうに問いかけてきます。おそらく自分は意識を彼方へ飛ばしている間、
「見たよ。森に誰かがいるところと、エルとチェクが何か辛い決断をしているところを」
「……決断」
天使は形の良い
「駄目。思い出せないわ、ごめんなさい」
「無理しなくていいよ。忘れているのはエルのせいじゃないんだから」
ここまで来られたのは彼女のおかげです。ミモルは心からそう思っていたから、優しく腕に触れて
「でも、どうしよう。このまま今まで通りに旅を続けて、間に合うのかな」
不安が口から
知れば知るほど、焦燥に駆られるのです。ミモルはふいに思いついたことを
「精霊は、あと何人いるの?」
結局、新しい手立てがない限りは精霊と契約して力を付けていくしかないようです。エルネアの
だからせめて、その長さを知っておきたいと思いました。それが
しかし、彼女の返事は意外なものでした。長く艶やかな
「あとは雷を司る精霊に会えば終りよ」
驚きが伝わったのでしょう。エルネアは改めて少女に向き直り、頬に触れました。
「雷の精霊と契約を交わした瞬間、認められた印が与えられるはずよ」
「印? 私、ちゃんと認めてもらえるのかな……?」
指先の温もりに溶かされたみたいに、言葉が落ちてきました。
「怖がらなくても大丈夫。試練はそこに辿り着くまでの経緯そのものだから」
ミモルには良く分からない話でした。ただ、エルネアには
おもむろに外を見ると、日が傾きかけています。透けた建物の中から黄色がかった輝きを浴びて、二人は出立することにしました。
入り口に立つと、海風が体を貫くようです。髪が
「待て。もしかしたら、俺達の力が役に立つかもしれない」
意図を
「ここまで来られたのだから、十分な素質があるでしょう」
「素質って……何の?」
「『扉を開く力』だ」
少女の肩が微かに震えました。
「それって、エルと出会った時の――」
そしてダリアがマカラを呼び出してしまった力、とは声が続きませんでした。肉親を失った恐ろしい光景を思い出し、精霊と合わせていた焦点がぶれます。
エルネアはそんな心を察し、肩を抱き寄せました。
「あれは、扉を開く力の中でも最初に目覚めるものなの。異なる世界から何かを呼び寄せる『召喚』の力よ。メシア達が言っているのは、それ以上のことね」
「それ、以上?」
「何かを呼ぶのではなくて、ミモルちゃん自身が次元を超えて飛ぶのよ」
そんなこと出来るのでしょうか。エルネアを
「俺達が光と闇の間を示して
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