ex.8年後の4人

 爽やかな土曜の朝、俺は真っ先に隣に気持ちよさそうに眠る和葉を起こす。


「起きろよ・・・起きろってば!」


「うーん?どうしたのカナタ君?」


「どうしたもこうしたもねえよ・・・今日は双葉の家で4人集まる日だろ?」


 すると隣で眠ってるんだから起きてるんだかよく分からなかった和葉の目が一気に覚醒した。


「そうだったー!あっ、おはようカナタ君♪」


「おう、おはよう。和葉」


 今日は俺たちが結婚してから丁度1ヶ月の記念日だ。何か特別なことをしようか悩んでいるところに、双葉から『お祝いも兼ねて、アンタたち2人と私と三葉の4人でひさびさに私の家に集まらないかしら?』と、誘いを受けたため実施されることになった。


 時刻は午後の3時過ぎ、出かける準備を終え和葉を待っていたところに不意に携帯が鳴った。画面を確認すると、双葉からの着信だった。


「もしもし、どうした?」


「あっ、カナタ!もうこっち向かってるのかしら?」


「いや、まだだ。うちの姫様の準備が終わっていないからな」


 すると双葉は1つため息を吐いて言った。


「和葉ってば・・・結婚してもあのマイペースは変わらなかったのね」


「ハハハ・・・まあそれもアイツのいい所ってことで、要件はそれじゃ無いだろ?」


「そうだったわ、ちょっと行きがてら買ってきて欲しいものがあって。ライン後で見ておいてよね!」


「分かった、確認しておくよ。じゃあまた後でな」


「うん、気をつけて」


 ・・・・・・


「双葉の家に行く前に三葉のこと迎えに行くんだよね♪」


 車を運転している途中、和葉がそう尋ねてきた。


「おう、アイツ起きてるよな?」


「そんなそんな、私たちじゃ無いんだから♪」


「ハハハッ!確かになあ!」


 ・・・最近、和葉の生活リズムに飲まれてるような気がする。


「っと、着いたが・・・和葉頼む。勝手に駐車場に停めるのは忍びないから」


「りょうかーい♪」


 ・・・・・・


「お久しぶりですカナタ君!」


 車に入るや否や三葉が大声で言ってきた。


「久しぶりって、言っても2週間ぐらいだろ?大袈裟だ」


「私は久しぶりに感じたからいいんです!」


「変わんないな、お前」


「はい!私は私ですから!」


 そうして車を走らせていると、和葉が三葉に仕事の話を振る。


「そういえば、三葉は最近仕事の調子はどんな感じ♪」


「うーん、ぼちぼちかな?特に辛いことはないよ!」


「三葉の仕事って、確かジムのインストラクターだよな?」


「はい!大学でお世話になって先輩がジムを開くから手伝ってくれないかって言ってくれて」


 そこで俺は冗談半分で和葉を生贄に差し出してみた。


「なるほど、和葉もそこで運動してみたらどうだ?」


「へ?私!?私はいいよ、運動苦手だし」


「苦手なこととしないことは一緒じゃないぞ?それに妹がいた方がやりやすいと思うぞ?」


「そ、そう言われても・・・」


 そんなやりとりをしていると、三葉がブツブツと話し始めた。


「確かに、和葉は現状でスタイルいいから鍛えればジムのいい広告塔に・・・!?そしたら設備ももっと・・・」


 そして和葉の手を取って言った。


「和葉!ぜひ私たちのジムに来て!安くするから!」


「え、そ、そんなこと言われても・・・」


「お願い!悪くしないから!」


「そんなぁーーー・・・」


 ・・・・・・


「ほら2人とも、着いたぞー」


「久しぶりに来たね♪」


「私はしょっちゅう双葉の家来てるよ!」


「何だ、それなら家にも来てくれればもてなすのに」


 すると三葉はどこか照れくさそうに言った。


「えっと、2人の家にいると幸せオーラに胃がもたれそうになっちゃって・・・」


「「それは、すいませんでした・・・」」


 そう言って俺は家のチャイムを鳴らす。すると少しして扉が開き双葉が顔を覗かせる。


「お疲れ3人とも、ほらほら早く入った入った」


 ・・・・・・


「うわー、すごいなこれ!全部双葉が作ったのか?」


「何よ、一人暮らしなんだから私が作ったに決まってるじゃない」


 おっと、なんか地雷を踏んだみたいだ。すると三葉が横から茶々を入れる。


「でも最近、お店の人で双葉にラブな人いるんだよね?」


「店って、双葉の喫茶店か?」


「他に何もないと思うよ♪」


 そして、和葉はどこか悪い笑顔で双葉につっかかる。


「でもそっかー、あの双葉にも春がねぇ♪」


「べ、別にそんなんじゃないわよ!これ以上詮索したらご飯食べさせないわよ!」


「そんなご無体なぁ・・・」


 ・・・・・・


「それじゃあ俺らはそろそろおいとまさせてもらいますか」


「うん、そうだね♪それじゃあね、2人とも♪」


「また会いましょうね!」


 そして、俺たちは双葉の家を後にし、車に乗った。


「もうすっかり暗くなっちゃったね♪」


「楽しかったからには仕方ないだろ」


 そう言いながら俺は車のエンジンをかける。すると不意に和葉がポツリと呟いた。


「2人とも、すごい楽しそうだったね」


 俺はその一言が気になって声をかける。


「どうしたんだよ急に」


「2人とも自分の夢を叶えて、今も直向きに努力してて、なんか眩しく見えちゃって♪」


 何だそんなことか、俺は和葉に優しく話しかける。


「でもお前は、俺のために頑張ってくれてるだろ」


「へっ?」


「お前が俺のために頑張ってくれてるから俺もお前のために頑張れる」


「えっと、つまりどういうこと?」


「つまりだな・・・」


「俺はお前を愛してるぞ。和葉」


 すると和葉は微かに目を細めて言った。


「うん、私も・・・愛してる」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

訳あって三つ子の幼馴染と一緒に暮らし始めたら学生生活が色づき始めた件(三つ子幼馴染の攻略法) 神在月 @kamiarizuki10

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画