第89話 夢の国

 「今日は夢の国入園当日よ!!なのにアンタたちは・・・」


「何で目の下にクマなんか作ってるのよ!?」


 そう言いながら双葉は俺と和葉に指を指す。昨日俺たちは、よもやま話に花を咲かせた。その結果としてご覧の通りの寝不足に陥ってしまった。


「えー!私も寝不足だよー!」


 そう三葉が謎の抗議をする。それに双葉は憮然とした態度で言った。


「アンタはいいのよ、つける薬がないから」


「へ?私は健康だよ!?ですよねカナタ君!」


 そこで俺に振ってくるか・・・適当に流そう!


「そんだけ元気って事だよ、それよりさっさと入るぞ」


「そうですね!!」


 ・・・・・・・


「わあぁ・・・すごい所ですねっカナタ君!」


「ああ、全くだ」


 実を言うと俺は夢の国に行った事ないから正直言って期待してなかったが、中は入った瞬間からガラッと雰囲気が変わって正に夢の国みたいだった。


「で?最初は何に乗るよ?」


 すると真っ先に声を上げたのは意外にも和葉だった。


「だったら私、カリブーの海賊がいいかな♪」


 カリバーの海賊か・・・確かあれは、あんまり並ばないって噂らしいし最初にはいいかもな。


「だったら早速行ってみるか」


 ・・・・・・・


「これってどういうアトラクションなんだ?」


「ん?さあね♪」


「さあねって・・・和葉アンタ前情報も無しにここに来たの!?」


 双葉の言葉もごもっともだ。滅多に来ない場所だし選りすぐりの物に乗りたい気持ちは分からんでもない。でも・・・


「どうせどれも乗った事無いんだから情報に頼らず乗りたいと思ったものだけ乗ろうぜ」


 すると双葉はどこか納得いかないといった表情で言った。


「それも、分からないことは無いけれど・・・なんだか釈然としないわね」


「あっ!私たちの順番来たよ!」


 そして俺たちは順次席に座る。俺の隣は三葉になった。


「隣ですね!カナタ君!」


「そうだな、楽しもうぜ」


「はいっ!!あっ!そういえばカナタ君、今日は何で寝不足だったんですか!?」


「ああ、それは・・・和葉と夜遅くまで話してたから」


 すると途端に三葉の顔がプクーっと膨らみ始める。


「げっ!?どうしたんだよ三葉!」


「だってー・・・私もカナタ君とお話ししたかったんだもん!!」


「何だそういうことか、だったら次は三葉の番だな」


「ヤッターーー!!」


「お母さんは1人席・・・」


 ・・・・・・・


「結構楽しかったな」


「そうですね!」


「だったら次は・・・」


 そう言い終わるが早いか否かのタイミングで三葉が元気よく声を上げる。


「じゃあ次は大雷山ビッグサンダーマウ○テンに乗ろうよ!」


 大雷山か、確かジェットコースターだったよな。並ぶけどこれも早い方がいいか。


「だとしたら早いうちに移動するか!」


 ・・・・・・・


「かなり並んでるな」


「当たり前じゃない、なんかアトラクションよ?」


「何だよ双葉、知ってるような口振りだな」


 すると双葉は誇らしげに言った。


「当たり前じゃない!事前にしっかりと調べておいたもの!」


 さすが双葉だな・・・そして俺はこういう双葉をいじるのが大好きだ!


「なるほどな、でもそういう情報だけで決めるのはどうかと思うな」


「何よ、何か文句あるのよ!?」


「文句はないよ。でもその場でしか感じれないものもあるのになって」


「むぅ・・・」


 あっ今回は意外と折れる早かったな。折れたらメンタルケアしないとっと・・・


「順番きたぞ、隣乗るか?」


「・・・乗る」


「お母さんはまた1人・・・」


 ・・・・・・・


「案外・・・本格的だったな・・・」


「そうね・・・私はもう十分ね・・・」


「次はもっとゆっくりできるやつがいいな」


 すると双葉が待ってましたと言わんばかりに手を上げる。


「だったらクマさんのハチミツ狩りはどうかしら?」


 ハチミツ狩りか・・・あれは、何なんだ?とりあえず行ってみるか。


 ・・・・・・・


「ハチミツ狩りってどんなアトラクションなんだ?」


「確かクマさんのお話を追体験するんじゃなかったかな♪」


「何だよ和葉、詳しいじゃないか」


「実はちょっと気になってたんだよね♪」


「だったら何で最初に自分で言わなかったんだ?」


「それは・・・」


 そう言うと和葉は俺のこと耳元で言った。


「双葉がこれに乗りたいの知ってたからさ♪だからあえて外したんだ♪」


 なるほど、流石は長女だ。このファインプレーは素直に褒めてやるか。


「流石お姉ちゃんだな」


 すると和葉は、顔をニヨニヨさせながら言った。


「何〜、カナタ君今日はやけに素直じゃん♪」


「素直で悪いかよ、いいことした奴は褒めるのが普通だろうが」


「え〜、照れちゃうな♪」


「勝手に照れてろ」


 言わなきゃ良かったよ、かえってこっちが照れくさくなっちまった。


 ・・・・・・・


「思ってたより悪くなかったな」


「そうだね♪」


「それより、次は・・・ってもうこんな時間か、どうする?」


「正直言って私はもう疲れちゃったかな♪」


「お母さんももう疲れちゃったわ」


 真菜さんと今日話した記憶なかったけど、何処にいたんだろうか?


「まあ、全員疲れてるなら早いうちに帰るとしましょう、ね?三葉」


「うん、私も疲れた!」


 疲れた人のトーンじゃないだろ・・・とにかくこれで皆んなの考えがまとまったな。


「それじゃあ、真菜さん。帰りましょう」


「そうね、あっ!その前に・・・」


「皆んな楽しかったかしら?」


 その言葉に俺たちはお互いに目を合わせて言った。


「「「「はーい!」」」」

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