第79話 だって私は

 ♧

「カ、カナタ君!?」


「そうだよ、やっと分かったか」


 どうやら得体の知れない未知の生命体の正体はカナタ君だったみたいです。


「でも、どうしてここに?」


「どうしてって・・・お前を探しに来たに決まってるだろ?」


「えっ・・・どうして・・・?」


「?それに理由なんてあるのか?」


「ない・・・ですけど・・・」


「だろ?じゃあ早く行こうぜ!」


 そう言いながらカナタ君は私に手を伸ばして来ました。でも私は・・・


「ダメですっ!!」


 そう言ってその手を叩いてしまいました。それを見るとカナタ君はアッケラカンとした顔をしました。


「っ痛!?どうしたんだよ三葉!?」


「私は、その手を取れません」


「どうしてだよ?」


「だって・・・だって私は・・・!」


 ダメっ!?泣いたらダメ!泣いたら我慢がっ!


「私はカナタ君に何も出来てあげてないんですよっ!?」


 そう叫んだ瞬間、我慢していた涙が感情と一緒に流れていきました。


「えっ!?な、泣くなよ三葉!!それに何も出来てないってどういうことだよ!?」


「だって私は西園寺さんのことで色々あった時何も出来ませんでした!!なのに私だけがカナタ君に助けてもらうなんて・・・!!」


 するとカナタ君は小さくため息をつくと私のことを抱き寄せました。


「とりあえず一旦落ち着けよ、な?」


「はい・・・落ち着きます・・・」


 そして私達はしばらくそのままでいました。そしてしばらくして


「・・・もう大丈夫そうか?」


「はい・・・」


 と、やりとりをするとカナタ君は私に向かって話し始めました。


「じゃあ、ちょっと俺の話聞いてもらっていいか?」


「はい、いいです」


「お前、夏の期末前に行ったこと覚えてるか?」


「期末前?ですか?」


「その感じだと忘れてるみたいだな、じゃあ改めてもう一度言うぞ」


「誰もお前を迷惑だと思って助けてなんかねえ!」


「っ!!」


「そして俺や双葉や和葉!そしてお前の友達は常日頃からお前のその明るい笑顔に!底抜けに明るい性格に助けられてるんだよ!」


「だから、頼られたって良いんだよ・・・」


「でも・・・」


「お前はもう、でもって言うの禁止な」


「えっ?どうして・・・?」


「お前がネガティブになる原因はその、でも、とか、だってとか、私なんてみたいな自分を卑下する所だと俺は思ってる」


「だから、もうそういう言葉を使うのはやめておけ」


「でも・・・」


 ペチコンッ!


「痛いっ!?」


 私は唐突におでこに痛みを覚えました。そしてカナタ君の方を見るとカナタ君はクツクツと笑っていました。


「何するんですか!?」


「これからは、罰としてデコピン喰らわせるからな」


 私は、カナタ君があまりに真剣な表情で思わず笑ってしまいました。


「な、何で笑うんだよっ!?」


「ごめんなさい!だってあまりにカナタ君が真剣だったから・・・」


「フッ、でも今いい表情してるぞ」


「あっ・・・」


「はいっ!!」

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