第37話 アンタはどうする?

 「こっちにも道あったんだな」


 俺と双葉はさっき4人で向かった海とは反対方向の山道を歩いていた。


 すると双葉はため息混じりに言った。


「アンタねえ、ちゃんと周り見て置きなさいよ!全く、それだけボンヤリしてたら幸福の壺とか買わされるわよ」


「へいへい、悪うござんした」


 すると双葉はムッとしながら言った。


「何よ?何か文句あるわけ?」


 急な双葉からの問い詰めに俺は戸惑いながらも答える。


「きゅ、急に何だよ。別に何もねえよ」


 そう言うと双葉はフンッと鼻を鳴らすと前を向き歩き始める。


 そして、しばらく歩いていると開けた場所に出た。すると双葉はパタパタと走ると明るい声で言った。


「わあ!こっち来てみなさいよカナタ!絶景よ絶景!」


 俺はそう言われて双葉の方へと向かった。その景色は宿で見た景色と大きく変わらなかったが標高が高くなった分なんだか素晴らしい景色なように感じた。


「確かにいい景色だな」


「でしょ!ってアレは何かしら?」


 そう言いながら双葉は俺の横を指差した。確かにそこには何かしらの建物が建っていた。


「ホントだ、何だろうなアレ?行ってみるか」


「そうね、行ってみましょう?」


 そして俺たちがその建物へ近づくと、その建物は教会だと分かった。俺は感心して呟く。


「こんな所に教会なんてあったんだな」


「そうね、でもなんか使われて無さそうよね」


「ねえ、せっかくだし入ってみましょうよ」


 そうして俺たちは教会の中へと入っていった。


 すると中は少し埃っぽかったが思っていたよりも綺麗でむしろこのボロさが雰囲気を出していた。俺は思わず声が漏れる。


「すげえ、めちゃくちゃ綺麗だ・・・」


 その言葉に双葉も賛同する。


「そうね・・・すごく幻想的・・・」


 すると双葉は俺の方を見るとニコリと笑って言った。


「それにしてもあれね、こうして2人で教会にいると私達結婚したみたいね」


 俺は動揺しながら言った。


「な、何だよ急に。ていうか寂れてるからどっちかというと荒廃した世界で2人きりって感じじゃないか?」


 すると双葉は笑いながら言った。


「アハハッ!何それ!でも言われてみるとそうかも」


 すると双葉は急にその場にうずくまると言った。


「ぐっ!ここまで逃げてきたけど私はどうやらここまでのようね・・・」


 そう言うと双葉は此方をチラリと見た。どうやら茶番に乗っかれと言うことらしい。俺は双葉の茶番に乗ることにした。


「そんな・・・!まだ、まだ何とかなるはず!くそっ!何でここまで来てこんな事に!」


 すると双葉は俺の手を握って言った。


「もう、私のことは気にしないで先に行って。あなたは、私の希望なの・・・」


「そんな、お願いだ!逝かないでくれ双葉!」


「ありがとね、カナタ・・・」ガクッ


「双葉?ふたばぁぁぁぁぁ!!!」


 そしてしばらくの間が開いた後、俺たちは思わず笑ってしまった。


「アハハッ!今のなんだったのかしらね?」


「それな!今のマジでわけ分かんねぇ!」


 そのまま俺たちはお互いに笑い合っていた。


 そしてお互いの笑いが止んだ後、双葉が何ともなしに話し始めた。


「もしも、もしもなんだけど・・・」


「もし仮に世界がさっき私たちがやったみたいに荒廃して、私と和葉と三葉の内の誰か1人しか助けられないとしたらどうするかしら?」


「えっ、何だよ急に・・・」


「いいから、早く答えなさいよ」


「でもそれって・・・」


 この質問は恐らくこの3人の誰が好きかという質問とあまり変わらないだろう。俺は双葉の質問をはぐらかすようにして答える。


「それは・・・今の俺では答えれないよ」


「どうしてよ?ただの質問じゃない!」


 見え見えの嘘に俺はムッとしながら双葉の鼻をつまみ、話し始める。


「そんな見え見えの嘘言ってんじゃねえよ」


 そう言うと俺は手を双葉の鼻から離す、そしてすぐに双葉は声を上げる。


「ちょっと!だとしてもこんな事しなくて良かったじゃない!」


「す、すまない・・・」


 って、何で俺が謝る流れなんだ?俺は話を元に戻して言った。


「って、今言いたいのはそんな事じゃなくて」


「今は俺はまだお前ら3人の内の誰とかそういうのは考えれないんだよ」


「だって今まで俺たちの間でそんなこと無かっただろ?だから今でも受け入れきれてないんだよ」


 そして俺はゆっくりと言った。


「だからもう少し俺に時間をくれよ」


 すると双葉はフフッと笑うと言った。


「分かったわ、悪かったわねこんな焦らせるようなこと言っちゃって」


「それじゃ、晩御飯に遅れる前に戻りましょうか!」


 そうして俺たちは宿へと戻っていった。

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