第3話 和葉とゲームセンター
「言っとくけどあんまり長居はできないからな」
「はーい、それぐらい分かってますよー♪」
俺は今、和葉に誘われてゲーセンに来ていた。といっても半ば脅されて来たようなものだが・・・
「で?せっかく来たのはいいが何するとか決めてんのか?」
「え?あーっ・・・何も決めてなかったよ。アハハ・・・」
「なんだよそれ?まあそんなとこだろうとは思ってたけどよ」
「いやぁ、ごめんごめん」
「まあ、いいけどよ。それじゃ、とりあえず歩いて回ろうぜ」
「りょうかーい♪」
そうして俺たちはクレーンゲームの並ぶところへ来た。するとある景品に和葉が反応した。
「ああ!カナタ君っ!見てよこれ」
「あっ?これは確か・・・病む病むプディングだったか?好きなのか?」
「いやいや、好きなのは私じゃなくて双葉だよ!あの子結構な数のグッズ持ってるんだよね」
「へー、意外だなアイツあんな性格だしこういうの興味ないと思ってたが・・・」
「あんなって・・・確かに双葉は少し言葉がキツイとこあるけど実際あの子は言ってることは的を得てるし」
「俺には厳しすぎる気がするけどな」
「ははは・・・それはそうかもね、でもそんなあの子だけど料理とか喋り方とか私らの中で一番女の子らしいし、意外と乙女らしいところあるんだよ♪」
「言われてみればそうかもな、でもその理論でいくと料理のセンスが欠片もない和葉はどうなるんだろうな」
「もー!そのことは言わないでよー!今日はなんかやたらその事を言われるよ・・・」
少し歩くと和葉がさっきとは違う景品に興味を示した。
「ああ!見てよカナタ君っ!」
「次はなんだよ?」
「むう、なんかつれない反応だなぁ。まあいいか、カナタ君はこれ知ってる?」
「シナモントロールだろ?最近人気だよな、今度は三葉が好きなものか?」
「おっ♪鋭いじゃん、三葉ったらアレの人形が欲しすぎて財布が空っぽになるまでクレーンゲームしたこともあるんだよ」
「ハハッ!なんだよそれ!でもまあアイツらしいな」
「そうだね、でもまあそういう所があの子の可愛いとこなんだけどね」
「そうか?俺からしたら危なっかしいようにしか見えないがな」
「それは姉妹かそうじゃないかの違いじゃないかな?でもまあカナタ君も一緒に過ごしてたらいずれ分かるんじゃないかな?」
「そうだったらいいな、てかもうこんな時間か。ほらっそろそろ帰るぞ」
「あれ?もうそんな時間なんだね、それじゃあもうちょっと帰りたかったけど帰るとしますか♪」
そして今俺たちは2人並んで家へ向かっている。全く、一時はどうなるかと思ったが意外に楽しめたな、ついでにアイツの・・・ことも・・・
「なあ和葉?」
「ん?どうしたのカナタ君?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいか?」
「いいよ、一体私に用事かな?」
「お前って自分の話全然しないよな」
「えっ?そ、そんなことないんじゃないかな〜と思うんだけど・・・」
「さっきのゲーセン、1回も自分のしなかっただろ?それどころか昔の記憶を遡ってもそういう話してなかった気がするんだ」
「そっか、気づかれちゃったか。そしたらどうしようかな?それじゃあ」
すると和葉は俺の前に出るとクルリと振り向き言った。
「場所、移そっか♪」
そして俺たちは昔4人でよく遊んだ公園にやってきた。
「わぁ!懐かしいね、昔このブランコで誰が一番高く漕げるか競ってたっけ」
「やったやった、思えばこの頃からお前、運動できてなかったよな」
「もー!そのことは言わないで!」
「わるいわるい、てかそんなことよりっ!さっきの話なんだが・・・」
「まあまあそう焦りなさんな」
そういうと和葉は近くのベンチに腰掛け、隣をチョイチョイと指さした。そこに座れということかと思い俺はそこに座る。
「で、こんだけ引っ張る程深い理由があるんだろ?」
「ありゃ?流石にお見通しだったか。でもそんなに複雑な話じゃないんだ、私ってほら一応こう見えて長女じゃん?だから小さい時からお母さんに『長女なんだから我慢ね』とか『妹たちの世話をしっかりね』ってよく言われたんだよ」
「最初は三つ子なのにって思ってたんだけど言われてく内に妹たちを優先することにも慣れてきちゃって自分について喋ることもなくなっていった・・・ってただそれだけのことだよ、ちょっとしんみりさせすぎちゃっかな?」
なるほど、こいつも意外と苦労してたんだな、こんな時に俺が出来ることは・・・
「おい和葉」
「何?カナタk・・・」
ムニュ
「フェッ!?ふぁにひへんほハニャヤふん!?(何してんのカナタ君!?)」
「お前、もうちょっとは周りに甘えろよ。確かにお前は長女だ、色々我慢することもあっただろうよ。だけどそれはあくまで姉妹間での話しだ!」
「フェッ・・・」
「つまり、俺とか友人にはもっと我儘に振舞ってもいいってことだよ」
「ハニャヤふん・・・」
「ほひはえふほへははひへほひいんはへほ(とりあえずこれ離して欲しいんだけど)」
「ああ、すっすまない」
「もー、カナタ君ったらずっと離してくれないんだもん、このまま千切れちゃうかと思ったよ」
「悪かった・・・」
「でもありがとっ!」
「おう」
「だけど今更自分の話なんて出来るかなあ?正直不安だよ」
「だから練習としてこっから家までお前の話して帰ろうぜ」
「なにそれっ、まあいいよ」
「それに早く帰んないとお前の大好きな妹たちが不安がるぞ」
「そうだねっ・・・てあっ!?今日の晩御飯買うの・・・」
「忘れてたな・・・」
「「・・・アハハハハハッ!!!」」
ありがとねカナタ君、おかげで私どこか楽になったよ、これからはカナタ君に少しずつ私を知っていって欲しい。そしていつかあなたに私の渾身の我儘聞いて欲しいな・・・なんて
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