第4話 冥級迷宮(ダンジョン)突撃っ!!
努力はむしろ、人一倍していた方だったと思う。
なのに、いつまで経っても俺だけがレベル1に取り残されていった。
「お前、なんでいつまで経ってもレベル1なんだよぉ」
「コツがあったら教えてほしいものだなぁ~」
クラスの男女問わずが俺をさげすみ、見下していた。
「まったく…人の才能を卑下するのは良くないんじゃないかな…」
そんな中から出てきたヤスヒトが苦言を呈するとそれを皮切りにそのざわざわした空気は次第に晴れていったが、当のヤスヒトは女子に囲まれていた。
「かばっていい子ちゃんアピールかよ」
そんな声が男子の中から聞こえた気がした。
俺はそのまま部屋に戻り、また魔術書を開いた。
転生してから、俺たちクラスは王国の城で暮らすことになっていた。
生徒一人一人に部屋が与えられ、各々に適した魔術書は王国に頼べばなんでも手に入れることができる。
まさしく自分を高めるには最適の場所…のはずだった…。
俺以外のやつらは、同時期には中級に認定されているやつもいた。
どこに行っても、俺はあいつらにとってはいいカモ以外にはなれない。
そう思うことにしていた。
「ここは…お主の成長を促すそれこそ最適な場所のはずだ」
魔王城の通路の先の突き当りにある扉の前まで来て、彼女は俺に聞いてきた。
「お主、あやつらに復讐したいという気持ちは持っておるか?」
俺は強くうなずく、心の中のどこかではあいつらのカモになりたくないと思っている自分がいたことに俺はとっくのとうに気が付いていた。
気づいていながら見て見ぬふりをしていただけだ。
裏切られて初めて、けじめがついた。
「では、開けるぞ。言っておくがこの奥にいるのはいずれも冥級以上の化け物ども」
勝算はあるのかと聞かれればない。
ただ、俺はこの迷宮(ダンジョン)を薦めてくれた彼女の言葉を信じることにした。
「私はお主に相応の生き抜く力があると見込んで送り出す」
「…帰って来たら、また寝よう。一緒に」
俺はその深淵への扉の先に一歩踏み出す。
すると、俺の体は一瞬でその扉の奥から発されるブラックホールのような強烈な引力によって引き寄せられる。
よく見ると無数の黒い手が俺をバラバラにして扉の奥へと連れて行こうとしている。
「いってきます」
吸い込まれてゆく刹那に最後に彼女に向かいそういうと、微かに微笑んだが見えた気がした。
「…ようこそ」
俺の耳元でそんな耳にねっとりと張り付くような声がした。
視界は黒く塗りつぶされ、俺の意識はその瞬間、完全に闇の中へと飲み込まれていった
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