転校生は女神さま♪

健野屋文乃(たけのやふみの)

第1話 反重力エンジン搭載バイク

放課後、一緒に図書係をしている時、転校生の少女は言った。


「わたし実は女神なの」

彼女が手にしていた本が、ファンタジー小説だったので、冗談かと思ってぼくは話を合わせた。


「女神?魔法みたいなのが使えるの?」

「女神だから、魔法ではないね。より神聖な力だよ」


彼女は、かなり本気な顔して言った。


「例えば空とか飛べるの?」


自称女神は、ぼくが見ている宇宙の本をチラッと見て、

「宇宙にだって行けるよ」

「えっホント?」

「行く?」

「うん」


とぼくは言ってしまった。

可愛い女の子と話すのに慣れていなかったせいだ。


「それじゃあ」


ん?ホントに?

と思った瞬間、ぼくは反重力エンジン搭載バイクに変身していた。


「えっ?」


彼女は、反重力エンジン搭載バイクであるぼくに跨った。

「何してんだよ!」

とぼくは怒りを露わにした。


だって!だって!だって!

人としての人生が、突然終わってしまったんだよ!


そんな大変な事態にも関わらず、ぼくに跨る彼女のお尻がとても柔らかかったのは、忘れるべきではないとは思った。さすが女神のお尻だ。


そんな、ぼくに構うことなく、彼女はふわりと浮かぶと、図書室の窓を抜け、一気に雲の上まで上昇した。


その速さは、光速を超えるんじゃないかと思うほどの速さだった。


「さすがぼく!」

とか言ってる場合か!


反重力エンジン搭載バイクは一瞬で、雲の上に到達した。

そして彼女はぼくから離脱し、スカイダビングのように地上に降りて行った。


そしてぼくだけ、さらに大気圏を突破、宇宙空間へ・・・


大気圏を突破する寸前、彼女のメッセージがぼくに届いた。


「あなたが地球に戻るのは1000年後。その間、宇宙を楽しんでね。

これが女神のわたしからの親愛の証だよ」

「なんのこっちゃ!ぼくは人だよ!1000年って何だよ!」

と言うぼくの言葉は、静かな宇宙空間にこだました。


【女神の常識は、人間の常識とかけ離れている】

ぼくは静かな宇宙空間で、そう思った。


ただ、『わたしからの親愛の証』と言う言葉にはにやけた。




おしまい

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