恋する夜空に叫んで

アールケイ

前編 決意

 空を見上げる。夏らしくない、乾いた風が肌を撫でる。

 真夏らしく暑い日差しは、私を焼き付ける。

 そんな刹那、先を歩く私に彼は、端的かつぼそりと言ったのだった。待ち続けたその言葉を。


「…………好きだ」


 それから、私はまたそらを見上げる。どこまでも広がる碧さに時々入る白い雲、まさに夏らしい晴天であった。


 ✻


 初恋とはわからないものだ。

 そんなことをぼんやりと考えながら友人と帰宅する。

 友人と言えども、それはあくまで上辺だけのそれで、中身などない。友と言えるほどそれは友でもない。

 けど、私は彼女らと一緒に帰っている。

 話が振られれば適当に受け流す、それで成立する会話は正しく平和そのものだった。

 と、そこでまたぼんやりと初恋のことを思う。

 私の初恋、それはきっと小学生の頃から思っているこの感情そのものだ。

 当時、小学生だった私に恋などわからなかったけど、女子高生となった今からすれば、これは恋だとわかる。

 だから、私の初恋は幼馴染みの彼なのだ。

 彼に彼女がいると知っても、私は諦められないのだった。


 有名なファストフード店、いわゆるマック、マクドなる場所に私はいた。

 5、6人いた上辺だけの友人ではなく、昔からの友人に呼ばれたのだった。


「で、彼に告白したの?」


「会うなり急になに? それだけなら帰っていい?」


「ちょいちょいちょい! 待って、待ってください!」


 きびすを返し、ガチで帰ろうとする私に彼女はそうして食って掛かる。

 まあ、私は彼女のそういうところが好きで一緒にいたりする。


「で、なに?」


「いや、それより先に何か買ってきたら?」


「いい、いらない」


「金欠、それともダイエット?」


「……両方」


「好きな人がいるってのは大変なことで。振り向いてもらうために必死だもんね?」


 ニヤニヤしたその顔面を、思わずグーで殴ろうかと考えてると、彼女はどこか遠い目をしながらぽつりぽつりと語りだした。


「でもさ、早く告った方がいいよ。このままじゃ辛いのはあんたなんだからさ。終わってからじゃ遅いんだよ、なにもかも。それに、もうすぐお祭りもあるし、ちょうどいいでしょ?」


「でも……」


「でもじゃない」


 それでも煮えきらない態度をしてる私に、彼女はなにか気づいたのか今度はニヤニヤしながら聞いてきた。


「もしかして、彼に彼女がいるって話でも聞いた?」


「えっ?」


「まさか、図星? それ、デマだよ。デマデマ」


「でもその話、彼が言ってたって──」


「それ、彼に告った子が言ってたんでしょ? そんなの、傷つけないための嘘に決まってるじゃん。それとも、好きになった理由が不安?」


「うっ……」


 私がそう言うと、彼女はケタケタと笑い出した。


「好きな理由なんかどうでもいいでしょ。そこにある、好きって気持ちが本物ならさ」


 そう言われてハッとする。

 私の気持ちに嘘はない。それだけは信じられる。

 決意に満ちた表情からなにかを悟ったのか、彼女は「頑張りなよ」とだけ言ってくれる。

 それから、私は席を立つ。

 そして、確認を込めて彼女にこれだけ聞いた。


「お祭り、何日?」


「8月4日」


 ✻


 その日の夜、私は彼にお祭りに一緒に行こうという旨のメッセージを送って眠りについた。

 次の日、彼からは時間の指定とともに、OKのメッセージが返ってきていた。

 そんな、七月下旬の頃だった。

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