花が咲き乱れるあの町で

犬丸ちる

第1話 「衝撃」

月草紫苑はコーヒーを飲んでいた。 空はオレンジ色に変わり、窓から入っている風が心地 いい時間。 今日も変わらない、変われない日常がここにある。


ところで特殊能力って信じるだろうか。そんな非現実的なことが起こるはずがないと思うだろう。だけど僕はそれを持っている。なぜかは僕にもわからない。 信じなくてもいいけど僕は考えたものを作り出せる能力を持っている。 そんなの勝ち組じゃん! と思うかもしれない。 だが違う。 僕はこの能力のせいで大企業に買い取られ生産機のように扱われて いる。 一刻も早く逃げ出したい。


部屋のドアが開いた。 失礼します、と声が聞こえる。 音霧リナだ。 青い瞳に黒髪のショートカット、 めちゃ美人。リナは僕のメイドさんみたいな感じ。 釣り目でクールな印象、 雰囲気は怖いけど話すとめっちゃ優しい。 ここの生活での一つの癒しだった。


「お菓子持ってきましたよ。 いただきますか?」と、リナが言う。お盆の上にはおいしそうなカステラ、 僕はすぐに食べ始めた。 リナはふふっと微笑んでい る。 だけど今日はどこか悲しそうな雰囲気を感じた。 思わず聞いてしまった。沈黙に包まれなんとも気まずい空気になってしまったのでやっぱりなんでもないと言おうとした。すると静かに口を開いてこう一言。


「紫苑さん、ここでの生活は楽しいですか。」 そんなわけがない。 だけど彼女にそれを言うのはなんだかいけない気がして。 また沈黙がこの空気を支配する。何を言おうか迷っていると

「すみません、変なこと聞いてしまって。」

「まって」という間もなく、 リナは部屋を出て言ってしまった。出ていくときに彼女のポケットから、ひらりと紙が一枚落ちてきた。いけないと思いつつその紙を見てしまった。その紙には乱雑な字でこう書いてあった。


「三日後の夜、月草紫苑を眠らせ意識が戻らないようこの薬を打て。彼の能力を実験体Aに移行する。月草紫苑はほぼ死亡すると考えられるので眠らせた後部屋を清掃しておくように」


言葉が出なかった。なぜリナがこんなものを?頭の処理が追いつかない。でも、死にたくない。その感情だけが頭の中にある。 どうにかしてここを脱出せねば…。 重い体を動かして脱出のための作戦を考える。混乱と困惑は心の中に押し込めて、タンスの引き出しを引いた。


次回 脱出

お楽しみにね( *´꒳`*)♡♡

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