第63話 競馬はギャンブル
10レースが終わり、人に曳かれた馬がパドックに入ってくる。パドックには煌々とライトが照らされその中の馬はみんないい毛並みに見える。
アカネさんが期待値のある馬がいると言っていた勝負の11レースのパドックだ。
そう言ったアカネさんとザキさんはの歩いてる馬を指差したりしながら頷いたり首を振ったりしているのが見える。
それを横目に馬のステータスをPCに記入していく。
全部の馬が一通り目の前を通過すると師匠が話しかけてくる。
「圭一郎全部みたか?」
「はい。見て入力も終わりました」
そう言って俺はデータを入力したPCを師匠に渡す。
師匠はそのデータを見て眉間に皺を寄せる。
「うーんこいつが能力が一番高いのかあ……」
「何か問題でもあるんですか? 7番人気とか8番人気で人気はなさそうですよ」
師匠は競馬新聞を指差す。そこには能力が一番高い馬の名前が書かれその下には12-12というような数字が書かれている。
この数字は走ってる時の位置。
それを思い出した時に師匠が口を開く。
「今日はずっと逃げ先行の馬ばかりきてる。この馬は追い込み馬なんだよ」
「あーそうかーずっと先頭に近い馬が有利でしたもんね今日は」
「それなんだよ。この馬はいつも上がり最速で来ているが、前ばかり来ている今日の馬場だとみんなこないと思っててこの人気になってるってわけだ」
「なるほど……」
師匠はアカネさんに話しかける。
「おいアカネ、お前の言ってた期待値のある馬ってどれだよ?」
アカネさんが答える
「うちらの本命は10番やで。この馬は中央から転入3戦目で中央の3勝クラスは勝ちきれへんかったけど、このB3クラスなら勝ち負けしてええ、前2戦の掲示板外したのは1戦目は調整不足、2戦目は前壁で脚余して負けで敗因明確やねん」
うんうんと頷いていた師匠が口を挟む。
「でも今日のバイアスでこの馬がなんで本命なんだ? いくら強くても無理だろこの馬場じゃ」
師匠がそう言うとしめたというような表情をするアカネさん。
「ふふ。それや! 今日は前が有利なバイアスが続いとる。それは騎手の頭にも刻まれとってわけや。このレースはメインレースやで! となると賞金も高い。勝ちや少しでも上の着順を狙うとなると……」
アカネさんがそう言ったところで師匠が口を挟む。
「ハイペースになる!」
「せや、このレース、ハイペースになるのは必然や、ハイペースとなれば前が潰れて後ろから一発ある展開になるやろ」
「確かに……俺が大井で馬券外れるときは前で決まってるか前だと思って買うと急に後ろの馬が来て外す……」
アカネさんは畳みかけるように師匠に話しかける。
「そういうことや。馬券買ってるほとんどの人間が前で決まると思ってるから、うちらの本命のオッズが美味しくなるってことや。まあ案外ペースが落ち着いてけえへんパターンも普通にある。まあピンかパーのギャンブルやな。んで能力が一番高いのはどれなん?」
師匠が神妙な表情で口を開く。
「……10番だ」
アカネさんはニカっと笑うとザキさんとハイタッチしている。
「しゃーー!異世界馬券師のお墨付きもろたでーー!」
10番の馬で問題なさそうだな。これで予想出そうと師匠に話しかける。
「じゃあ本命は10番で行きましょう」
「いやちょっとまて……」
急に難しい顔をする師匠。
「俺たちは的中率重視の予想でいくと言った。10番は来るか来ないかで言えば来ない確率の方が高いかもしれない。あいつらの買い方は回収率重視、ここが外れてもまあしょうがないって馬券の買い方だ」
あーーそうか。師匠は的中率、とにかく当てることを優先したいって言ってたな。
「でもアカネさんの言ってることは説得力もあるし、ステータスもそれを裏付けもああります。当たる確率はあるんじゃないですか?」
「ああ……この予想はギャンブルになるんだよ。トラックバイアスと真逆、もしはハイペースにならなければ人気通りにすんなり決まる。そんな予想をしていいのか俺たちは」
なにかが自分の中で引っ掛かる。
あ!!
その引っ掛かりに気が付いて師匠の顔を見る。
「……何言ってんですか師匠!! 俺達がやってるものは何ですか?」
「競馬だが?」
「競馬っていつからギャンブルじゃなくなったんですかねぇ??」
俺がそういうと師匠はハッとする。
「俺たちはがやってるのはギャンブルだったな!ガハハハ」
「そうですよ。競馬予想なんてはずれてもいいんですよ。ギャンブルなんですから」
「そうだな。もしこれでステータスが低いけど前に行く馬を本命にして外したら俺たちの予想スタイルの意味がないもんな。馬の能力が見えるが俺達の予想スタイル!」
「そうです。しかも今回は穴の龍とコラボ予想です。10番本命で行きましょう!」
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