第40話 エリザベス女王杯展望
牛丼大盛りと缶ビールを買って師匠と芝生の広場に座る。
エリザベス女王杯絶対に落とせないこの一戦、さすがに俺も夜なべしてちょっと調べてきた。
牛丼を食べながら新聞を開く師匠に話しかける。
「エリザベス女王杯、自分なり色々調べてきたんですよ」
師匠はそう言うと新聞に落としていた目をこちらに向け
「ほう……それじゃ圭一郎くんの見解を聞こうじゃないか」
俺はスマホを取り出し、昨晩調べたメモを開く。
「1970年に牝馬限定のビクトリアカップとして京都競馬場芝2400メートル創設されたこのレースが前身。1975年にエリザベス女王が来日されたことを記念して距離や開催場所などはビクトリアカップを踏襲し、あらたにエリザベス女王杯として創設」
「お、おう……」
「1995年まで京都競馬場の芝2400メートルで4歳牝馬限定競走として施行。1996年に牝馬競走体系が見直され4歳牝馬から4歳以上牝馬に変更、あわせて施行距離も2400メートルから2200メートルに短縮され、さらに同年から4歳牝馬三冠の最終戦として秋華賞が新設されたことで、本競争は牝馬三冠路線を歩んできた4歳牝馬と古馬牝馬と実績馬が集う、女王を争うレースへと位置づけが大きく変わった」
メモを最後まで読み上げるとペコリと一礼をする。
「で?」
「以上です」
そういうと師匠はポカーンとした表情をしている。
「師匠でもこんなことは知らなかったでしょ?」
「4歳つってたけど今は3歳だからな。3歳以上牝馬限定」
「へええ、そうなんですね」
「20年ぐらい前に馬の年齢が変わったんだよ。生まれた年を1歳にしてたのを0歳にしたからな」
「なるほど。今は3歳以上の牝馬限定競走になったと」
スマホをポチポチと触って追記しておく。
「っておい!! そんなことはどうでもいいんだよ!! もっとさあこの馬が強そうとかさそういうのはないのかよ」
「俺にそれ聞いちゃいます? 競馬歴1か月の俺の予想いいますよ。」
ふふ、流石にそう言われると思ってちゃんと馬も勉強してる
「ここは秋華賞っていうレースを勝ったアオイウマノなんちゃらって馬です」
「アオイウマノハトコか、2番人気の馬だな」
「おおさかはい?ってのを勝ったアイなんちゃらって馬もきになりますね」
「アイポポッチだな1番人気」
「この2頭ですよ。ステータスも強いと思いますよ」
師匠は首を横に振る。
「あーそりゃ競馬1か月の素人の予想だわ」
なんか頭から否定されるのってなんかイラっとする。競馬の予想とはいえ。
「じゃ、じゃあ師匠の予想はなんなんですか?」
そういうと師匠は自信満々という感じで話し始める
「まず、秋華賞上位入着組は疑ってかかりたい」
「え……なんでですかG1で上位に入った馬は強い馬ですよ」
「あー甘いねぇ圭一郎くん。秋華賞からエリザベス女王杯まで間隔だ。3週間しか空いてない。3歳牝馬最後の3冠目である秋華賞を目いっぱいに仕上げてないわけがない」
「エリザベス女王杯は目標にしてないと?」
「そりゃそうだ。秋華賞を目標にして仕上げて結果を残した。これで疲労が残ってないわけがない。しかも間隔が3週間。これはキツイはず」
「……となると秋華賞上位組はHPに注意ということですか?」
「そうだな。元のHPが分からないから何とも言えないが、他の馬と比較すれば参考にはなるだろう」
「じゃじゃあアイなんちゃらはなんでダメなんですか?」
「単純にアイポポッチは2000メートルまでの馬だ。宝塚記念で前有利の馬場だったにも関わらず、先行し逃げ馬に差し返され3着、オールカマーも4着と負けている。俺はこの馬の適距離は2000だと思っている。それに開催の進んだ今の京都競馬場、馬場が荒れて前が残らない。脚質的に前に行くこの馬にトラックバイアスが合わない」
「と、とにかくアイポポッチのたいりょくに注視すればいいんですね……」
「そうだな。まあ俺の見立て通りになるとおもうけどな」
「そ、それじゃ師匠の本命はなんなんですか?」
「……分からん!!」
そういうと師匠は牛丼をかきこみ、ビールをぎゅーっと飲んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます