第28話 弱気

「圭一郎これどう思う?」


 師匠のスマホに表示されている予想家対決の文字。


「もちろん出ますよね! エリザベス女王杯ってどこでやるんですか? 東京ですよね?」


 師匠は勿論出るつもりだとばっかり思ってたのだが、その答えは予想に反して……


「いや、エリ女は京都……というか出るつもりなの?」


「京都かあ……って師匠、出ないつもりなんですか?!」


 きょとんとした表情の師匠はこういった。

「だって負けたらフォロワー一杯減るかも……」


 ……ええ……


「で、でも勝ったら爆増しますよ!! フォロワー!」


「こういうのは地道にやっていった方がいいと思うんだ……」


 いやいやギャンブル依存症の師匠が言うセリフじゃないでしょ……


「負けたら負けた時ですよ。地道に当てて増やしていけばいいです。俺たちはギャンブルやってるんですからこれもギャンブルですよ」


「負けたらフォロワー一杯減るだろうなあ……せっかくこんなに増えたのに……」


 金が減っても気にしないのにフォロワーが減るのはすげぇ気にしてるし……


「勝てば増えるんですからやりましょう!」


「でも必ず勝てるわけじゃないし……今日もぬめっとしてたときちょっとフォロワー減ったし……」


「さっきも1点買いで100万とったらフォロワーめっちゃ増えたでしょ?」


「なんで圭一郎くんはそんなに自信があるんだ? 負けたらフォロワー一杯減るんだぞ?! せっかくこんなに増えたってのに!」

 急に声を荒げる師匠。


「大丈夫ですって。他の人はステータスなんて見れないんですよ。この力で2週連続帯馬券ですよ? 俺たちは勝てますって」


「んなこというけど今日もメインまでぬめっとしたし…… エリ女の日もぬめっとするかもしれんだろうが!!」


 なんかイライラしてきた……


「ぬめっとってそれは馬を選んだ師匠の責任でしょ!!」


「は? ぬめっとしてたのは俺の所為かよ!!」

 師匠は俺を睨みつけてそう言った。


 あああもうダメだこいつムカつく。


「ああああああもういいですよ!! もういいです。もう出ません!! それじゃ!!」

 そういって俺は速足で師匠の元を去り、競馬場を後にした。


 ――その夜。


 あ……師匠からだ


 スマホを見ると師匠からLIMEが入っている。


 その内容は……


『すまん……俺こんなに人から脚光を浴びたことなくてテンパってた』


 ……まあそうだよなあ。フォロワーも2000越えてるしなあ。俺もこんなにフォロワーいたらビビる。


 返信どうしよう……


うーん……


 自分も大人げなく怒ったりしてすいませんでした。やっぱり今回のはチャンスだと思うんですよね。俺たちはいつも通りに予想して結果を出せばいいだけなんです。特別なことはする必要ないと思います。負けたぐらいで減るフォロワーならいらないですよ。


 うーん……これでいいかな。


 送信っと


送信すると1分ほどで返信が返ってくる。


『そうだな。普段通りにやればいいな。じゃあまた土曜日に東京競馬場で』


「はい。土曜日に東京競馬場で。全財産使わないでくださいよ」








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