美少女呪術師に呪いをかけられたので惚れさせて呪いを解いてもらいたいと思います

コーラ

1日目 呪いをかけられました

 ちゅんちゅんと小鳥の囀る音で目が覚める。


「んー、いい朝だ。おはよう小鳥さん」


 少し伸びをして窓の外にいる鳥に挨拶をする。


 俺の名前は津島ヒロ。ちょっと前に20歳になったピチピチの大学生だ。

 ちなみに言っておくと俺は普段からこんな事をするメルヘン野郎ではない。

 じゃあなんでこんな事をするのか?


「さあ、今日は宝くじで当たった金で何をしようかなー」


 先日宝くじを当てたからだ。それも一等だ。何億という大金が現在俺の口座に入っている。


「その前に風呂でも入るかなー!」


 少し臭うしな。



「ふぅ、今日の筋肉の様子はどうかなー?」


 洗面所まで行きバサッと服を脱いだ、そこである事に気づく。


「ふっ、今日も美しい筋肉だ。ん? なんだ? 胸の辺りに黒い紋章が……な、なんじゃこりゃぁー!?!?」


 宝くじで一等が当たった時くらいびっくりした。だってちょうど心臓の上くらいの位置に黒い紋章が浮かんでいるのだ。誰だってビビる。


「えっ、なにこれ? どうなってんの? 病気か? ……ネットで調べてみるか」


 軽い現実逃避だ。起きたら黒い紋章が浮かんでるなんて状況どうすればいいというのだ。

 こういう時はグー◯ル先生に頼るしかない。


「ええっと、なんで調べればいいんだ? 胸の上 黒い紋章 で調べてみるか」


 スマホを取り出して検索をしてみる。


「出てくるのは怪しげなサイトばっか……まあ当然か。ん? 知恵袋に俺の状況と同じ質問があるぞ」


「なになに、朝起きたら胸に黒い紋章が出てましたこれってなんなんですか? 俺と一緒じゃねぇか。……ええっと、アンサーはこれか」


 下に画面をスクロールするとベストアンサーが見つかった。


「それは呪術師による呪いのせいです。貴方が何をしたのかは知りませんが、すぐに呪術師が開いている店に行ってください。じゃないと……死にます。………はぁ!? 死ぬ!?」


 ヤバイヤバイ、この話がもしも本当だった場合俺は死んでしまう。


「呪術師がやってる店って……しらねぇよ。とりあえず調べてみるか。呪術師 店 で検索だ」


 すると一軒引っかかった店があった。


「オカルト何でも屋レイ。これか? 距離は遠くはないな。胡散臭いが背に腹は代えられん。行くとするか」


 俺は服を着て車に乗り、ナビに住所を打ち込んで出発した。


「ここ、が。オカルト何でも屋レイか。すごいボロいけど大丈夫なのか?」


 車をパーキングに停めて店の前まで来たがボロすぎないか? 看板傾いてるし、蔦が店に絡まっていて不気味だ。


「……入ってみるか。……すみませーん! 誰かいますか?」


 店に入って見ても汚い。掃除をしてないからか埃が溜まっている。


「……すみませーん!」


 もう一回声をかけると奥から足音が聞こえてきた。


「……うるさいですよ。一回で聞こえています。貴方は……」


 奥から出てきたのは銀髪ロングの美少女だ。

 人形のようなにくりっとした目に小さい鼻そしてバランスの取れた口をしている。髪の毛はサラサラしているのか少しの風でも靡いている。


「………」


 言葉が出ないとはこの事か。


「はぁ、この銀髪は昔呪詛の解呪を失敗してしまった時になってしまったんです」


 俺が少女を見ているとそんな事をうんざりしたように言われた。


「なにを……」


「私を見ていたので、この銀髪が気になったかと思ったんですが」


 まあ確かに特徴的だ。銀髪なんて見た事ないし。


「……まあいいです。何か用事があったんでしょ? 椅子に座ってください。コーヒー持ってきます」


 そう言って少女は奥に戻ってしまった。指定された椅子に座るが埃っぽいな。テーブルも埃をかぶっている。



「どうぞ。それでなんの用事ですか?」


 少ししたら少女はコーヒーとお菓子を持ってきた。


「……店の人いる? 君、高校生にしか見えないし」


 バイトだろうか? それとも家族の人だろうか。なんにせよ、重要な話を高校生に話しても仕方ない。


「確かに私は高校生ですけど、この店の店長でもあります。名前は霊山霊歌。17歳です。短い間ですがよろしくお願います」


 そう言って頭を下げられた。


「そうだったのか。ごめん。俺は津島ヒロだ。……それで単刀直入に聞きたいことがあるんだけど、この胸の紋章について何かわからないか?」


 そうとわかればすぐにでもこの胸の上の紋章について聞きたい。

 俺は上着を脱いで紋章を見せた。


「ええ、知ってますよ……私がかけた呪いですから……」


 霊山さんは無表情でそう答えた。


「だったら話が早い治してくれ! 金ならちょうどいっぱいあるんだ! いくらだ? いくら出せばいい? って、え? 今なんて?」


 聞き間違いか。この子が呪いをかけたって聞こえたぞ。


「ですから私がかけた呪いだと言いました」


 無表情だ。そしてとても冷たい目をしている。


「はぁ!? なんでこんな事したんだよ! 金目当てか!?」


 思いつく限り俺の全財産を狙っての犯行だとしか考えられない。この子と会うのは初対面だし。


「いえ、依頼が入りました。貴方が人を騙して稼いだお金で豪遊しているのでそれを止めてくれと」


 は? 何を言ってるんだ?


「確かに俺は豪遊しているが、それは宝くじの一等が当たったからだ! 勝手に変な理由をつけないでくれ!」


 誰がそんな事を言ったんだ? 


「ですが、私に依頼した人は貴方に全財産を奪われてしまったと証拠も見せてきました」


「誰がそんなこと言ったんだよ! 教えてくれ!」


 クソ、見つけ出して問い詰めてやる。

 犯人はおそらく俺が金持ちになった事を知ってるやつだろう。

 …………俺の知り合いほぼ全員だ。調子に乗って知り合いに宝くじ当てた事を報告しちまったぁ!

 俺が内心後悔をして、頭を抱えていると少女はゴミを見るような顔をした。


「何を変なポーズしてるんですか? それにプライバシーがあるので個人情報は渡せません。これ以上は仕事の邪魔です。出て行ってください!」


「おう、じゃあ帰るわ! ってなるかよ! この呪いを解いてくれ! お願いだから!」


「無理です。貴方がクズということは知ってますので」


「クズって俺が何をしたっていうんだ!?」


 いきなりクズ呼ばわりとは失礼なやつだ。


「昨日はキャバクラ店にて店員に見えないようキャバ嬢の胸の間にお札を入れてホテルに連れ込もうとしてましたよね。その前日は貧乏そうな女の子に金を渡してホテルに連れ込もうとして、さらにその前日は……」


「分かった、分かったからもうやめよう。君が俺を調査していたのは理解したから……」


 俺は涙目だ。なんで高校生にこんな事詰められなくちゃいけないんだ。


「調査した限りでは全て失敗していましたが、女を金で買えると思っているクズ野郎にはお似合いの最後です」


 そこまでバレてるのかよ。恥ずかしすぎて穴があるなら入りたい。


「金で童貞を捨てようとしたのは認める。でも本当に誰かを騙したりはしてないんだ。だから頼む、呪いを解除してくれないか?」


 俺は頭を下げる。


「いくら頭を下げようが無駄です。貴方が死ぬのは今日を含めて7日後です。それまでに今までの罪を後悔しながら死んでください」


 やっぱりダメか……だが諦める訳にはいかない。何か手はないか? 何か……はっ!? 閃いた!


「俺を雇ってくれ!」


 俺は頭を下げる。


「はぁ? 何を言ってるんですか?」


 意味がわからないと言う表情と声色でそう言った。


「金でダメなら、君をこの俺にメロメロにさせてやる! 名付けて愛の力で呪いを解いてもらおう大作戦だ!」


「それ、本人に言ってはダメなのでは?」


 と呆れた表情をしているが関係ない。7日間で惚れさせるためには変な探り合いをしていては間に合わないからな。


「で、どうなんだ? と言っても仮に断ったとしても俺は毎日ここにくるがな!」


 こっちだって死ぬわけにはいかない。口調は軽いが真剣だ。


「はぁ、勝手にしてください。貴方に惚れる事なんてあり得ない事です」


「よし! 交渉成立だ! じゃあ俺は早速掃除をさせてもらいます! 霊歌ちゃん! これからよろしく!」


「ちゃんはやめてください!」


 彼女はプリプリと怒っているがそんなの知ったことではない。一刻も早く彼女と距離を縮めないといけないのだから。


「俺は掃除機をかけるから霊歌ちゃんは寛いでいてくれ!」


「やめる気がない事だけはわかりました。はぁ、勝手にしてください」


 こうして俺と呪術師の奇妙な7日間が幕を開けるのだった。

 

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