バカな男と花束の向こう
坂田一景
第1話
僕はバカだから何もわからないんだ。君がいつも怒る理由も、笑う理由も。
ただ一つ確かなことは僕は君に恋していることだ。
高校で初めて見た時の衝撃と心臓の鼓動音だけを覚えている。
君は薔薇のように美しく、桜のように可愛げでどこか儚かった。
その大きくも鋭くどこか哀れみを持つ瞳は一瞬にして僕の心を奪い去った。
それと同時に僕の心臓の鼓動はうるさくなり始め、僕は動けなくなっていった。
無口な君はあまり感情を表に出さなかった。けど告白したあの日、勢い良く下げた頭の上から水滴が落ちるのが見えた。そして君の口からこう言った。
「よろしくね。」
僕はバカだから何もわからないんだ。君がなぜあの時泣いていたのかわからなかった。僕は君のことが好きだ。だから泣くとしたら僕ではないのか?そんなようなことを考えていたら家の玄関の前についた。
玄関を開けると君が来た。そして何かを顔の前に持っている。
「大きな花束だね。」
「あなたに上げるために買ったのよ…。」
「そうか5年前の今日だもんな。(笑)」
「…うん。」
毎年この日は君の顔が見えない。だからバカな僕は君がどんな顔をしているのかもわからない。でも今日はちらっと顔が見えた。鮮やかな花束に負けないくらいに赤く色付いた君の顔が見えた。バカな僕は今日一つ学んだ。
僕にはわからない。君がいつも怒る理由も、笑う理由も。
でも、
ただ一つ確かなことは、君も僕に恋していることだ。
バカな男と花束の向こう 坂田一景 @sakataikkei
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