「言えない・・・」かんもくと私 ~当事者の体験談~

海乃マリー

第1話 はじめに

 「言えない・・・」


 これは私の人生最大の難関だった。


 私はとても内向的な性格で、幼稚園や小学校で「話さない」子だった。これまでにそんな感じの子が皆さんと同じ教室にいたことがあるかもしれない。


 それが私だ。



 このエッセイでは「場面緘黙症」にまつわる私の個人的な体験などを書いてみる。


 全体の流れとしては、幼少期から大人になる辺りまでの体験やその時に考えていたことや感じたことなどを順を追って書いていく。


 まずは簡単に私の自己紹介をしておきます。

 現在の私は四十代女性で結婚しており、子どもが二人いる。私の場面緘黙症の症状があったと思われる時期は幼稚園から小学校低学年ぐらいまでだ。その後も後遺症や二次障害と呼ばれるような生きづらさはずっとあったように思う。 


 場面緘黙症に悩まされていた当時は、ただただ辛い、苦しいという感覚だけが先行していて、具体的な原因は全く理解できていなかった。もちろん、当時の私は自分の感じていることを言語化することもできなかったので、悩みを頭の中で整理することもできなかった。


 まるでいつ抜け出せるかわからない出口のない暗闇を彷徨い歩くような無明の世界にいたようだった。


 話せなくて困ったことや感じていたこと、悩んでいたこと、どうやって脱却していったか、自分なりに考えた場面緘黙症の原因などについても書いていこうと思う。



 実は、最初にカクヨムに登録したのは、場面緘黙症の体験談を書いてみようと思ったことがきっかけだった。それなのに、全く筆が進まなくて、二年間以上放置してしまっていた。さらけ出す勇気もなかったし、心の準備ができてなかったのかもしれない。


 私は、今でも場面緘黙症様の症状に悩まされていたあの頃のことを好んで話したいとは思わない。でも別に隠しているわけでもないので、話の流れによっては話題にすることもある。


「私って昔はすごく内向的な性格でね……」

と思い切って覚悟を決めて、カミングアウトするような感覚だ。


 あの頃は暗い思い出が多かったし、何より自分のことが大嫌いだったから、あまり積極的に触れたい話でもない。


 心に関する本を沢山読んだり、様々なセラピーを受けたりして、私は十分『自己受容』できているし、自分なりに克服したと思っていた。


 でも、話すことを抵抗している時点で、まだ心に引っかかりもあるし、完全に癒されたわけではないのだろうな、とも思う。

  

 このエッセイを書くことで、自分の過去を振り返り、気持ちや出来事を思い出して、自分の気持ちの整理ができたらと思って書いている。



 場面緘黙症の子は、自分のことを話さない子も多いと思うので、周りの人は彼らがどんな状況でどう感じているのかということが、とても分かりにくいと思う。


 最近では当事者による手記などの情報は増えていて、場面緘黙症の認知度も上がってきていると思うけど、このエッセイも当事者の体験談の一つとして誰かの参考になったら、という気持ちもある。

 (そんな沢山の人の目に触れるものではないだろうけどね……)


 一つ注意しておきたいことは、このエッセイはあくまでも私が個人的に感じたことや考えたことだということだ。医療等に関することは専門家ではないので、自分で調べたり学んだりして知っている範囲で知識で書いていく。だから、もしかしたら間違ったことを書いてしまうかもしれないけど、そんな人もいるんだ、そんな考え方もあるんだくらいの軽い気持ちで読んでいただければと思う。 


 場面緘黙症を一括りにすると「話せない」という共通点はあるものの、その程度は人それぞれだし、その原因も様々で、育ってきた環境も生まれ持った性質も感じ方も違う。人の数だけ違いがある。なので、あくまでもこれから書くことは私の個人的なケースということを予めご了承ください。







 

 




  

 

 

 

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