カゲロウ

マフユフミ

第1話


日傘のキミは

羽にも似た白いカーディガンをはためかせ

ふわふわふわふわ緑の道を漂う


木漏れ日が

キミの上を転がりながら

きゃらきゃらと笑う

それを見たキミは無邪気な笑顔を浮かべ

繊細なレースで縁どられた日傘を

くるくるくるくる回すのだ


斜め後ろをゆっくり歩く僕は

さしずめキミのしもべだ


決して出しゃばることもなく

それでもキミに何事もないように

キミのことを見ている

自由なキミを見失ってしまわぬように

消えてしまいそうなキミを繋ぎ止めるために

ただキミを見ている


緑がまぶしい


閑散としたような

ただ単にのどかなような

田舎道と言ってしまえばそれまでの

なだらかな上り坂をキミは行く

ゆっくりゆっくり

誰に乱されることのない

キミだけのペースで


淡い緑色をした日傘は

歩くたびにふわふわ揺れる

それこそまるでキミ自身のように

ふわふわふわふわ夏の光を受け止める


その光景をなぜかとても

高貴なもののようにみつめてしまう僕は

きっともうすでに

キミに毒されてしまっているのだろう

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