第100話 銅像
「兄上、魔石はホワイトスネークキングとビックタイガーライオンのモノで間違いありませんでした」
「また『黒天使』に救ってもらったのだな」
「はい。『黒天使』様に何か褒美を出すべきだと思います」
「そうだな。褒美は何にすれば良いのだろうか?」
「富も名声にも関心のない『黒天使』様にどのような褒美を用意するかは難しいと思いますが、何もしないのは1番の愚策です。『黒天使』様に誠意をみせる形のモノを褒美とするのは如何でしょうか?」
「具体的にどのようなモノを与えれば良いのだ」
「王都の中心に『黒天使』様の銅像を建てるのはどうでしょうか?」
「それは名案だ!今すぐに銅像を作るように王国魔導技師に連絡しろ」
「わかりました。しかし、『黒天使』様の姿を見たものは私の娘と0の少女しかいません。まずは人物像を把握してからしましょう」
「そうだったな。俺は少し焦りすぎていたようだ。銅像の件はお前に全て任せる。予算は気にせずに最高の銅像を作るが良い」
「わかりました。ブランシュ、協力してくれるよな」
「はい!お父様。すぐに部屋に戻ってハツキちゃんと一緒にイメージイラストを作成してきます」
笑顔でブランシュは返事した。ブランシュは、こんなこともあろうかと『黒天使』のイメージイラストを作っていたのであった。
「ハツキちゃん、本当にありがとう!これで王都も安泰よ」
「よかったわ」
私は扉の修繕費の分の仕事は出来たと思ってホッとしていたが、まだ気がかりな事があった。
「そういえばブランシュちゃん、扉の下敷きになった方はどうなったのかしら?」
「気になるよね」
ブランシュは、私が自分を襲いにきた犯人がどのような人物だったか気になると思てっいたが、私は自分のせいで扉の下敷きになった人物が大怪我をしていないか気になったのである。
「気になるのよ。怪我はなかったの?もう元気にしているの」
「ハツキちゃん、あなたは優しすぎるのよ!アイツはハツキちゃんを襲いに来た悪党なのよ。それに、アイツはハツキちゃんを襲う以外にもこの国を欺き、騎士団所の所長になって、国の情報をイーグルネイルに提供していたスパイだったの。調べればまだまだ悪事がわかるはずよ。あんなヤツの事など心配する必要はないわ」
「悪党さんだったのね」
「そうよ。だから心配する必要はないのよ。それよりも、陛下から『黒天使』さんに褒美が授与される事になったのよ」
「褒美ですか?」
「そうよ」
「へぇ〜どんな褒美をあげるの?」
「王都の中心に銅像を建てる事になったのよ!」
「銅像ですかぁ〜!でも、『黒天使』さんはどのような方なのかなぁ」
私は黒天使は実在する冒険者だと思っているので、どのような人物なのか気になるのであった。
「ハツキちゃん、もうイメージイラストは出来上がっているので見てもらってもいいかな?」
「え!ブランシュちゃんは、『黒天使』さんの姿を知っているの?」
「もちろんよ!」
私はブランシュからイメージイラストを見せてもらった。
漆黒のフルプレートアーマに身を包んだ長い黒髪の戦士のイラストだった。特徴的なのが仮面の形が狼の顔になっていて、全身を覆う鎧は鋭い棘が無数に描かれており、右手には金色に輝く大きな大剣を持ち、左手は50cmほどの鋭利なカギ爪が装着されていた。
「かっこいいわ」
「でしょ!私もとても気に入っているのよ」
ブランシュは、鎧とカギ爪のデザインはプリンツの姿からイメージして描き、大剣は『黒天使』の強さの象徴として持たせる事にした。そして、長い黒髪をつけることで、私とプリンツを融合させる事にしたのである。
「銅像が出来上がるのが楽しみね」
「そうね。すぐに銅像の建設は着工されるから、1週間もあれば出来上がると思うわよ。ハツキちゃん、お父様にすぐにこのイメージイラストを持っていくわ」
ブランシュは扉を開けてメルクーア大公の元へ走って行った。イラストを受け取ったメルクーア大公は、すぐに王国魔導技師団に銅像の建設に着手するように指示を出した。
無事に王都魔獣襲撃事件が解決したので、私はカノープスの町へ戻る事にした。
「ファルコン、お前1人だけ逃げ戻ってきたのか!」
「はい。謎の魔獣が現れたので逃げるしかなかったのです」
「雪の大地には雪狐しか生存できないはずだ。お前は何か隠しているのではないのか?」
「そのような事はありません。私はイーグルネイルを裏切るような事は一切しておりません」
「本当にロートは魔獣に殺されたのか?お前が殺したのではないのか?」
「ロートは白い物体に直撃して死亡しました。どのような魔獣がどのような攻撃をしたかはわかりませんが、ロートが死亡したことは真実です」
「全て曖昧な情報だな。今、イーグルネイルの団員たちが次々と討伐されている。真紅の爪、紅緋の爪は壊滅し、赤朽葉の爪の副リーダーグレイヘロンは騎士団所で死亡して、殺死団のヴァイスが騎士団所に捕まったと報告があった。そして、次はロートの死亡・・・これだけ不幸が続くのは何か原因があるとしか思えない」
「私もそう思います。私たちを討伐しようとする何か巨大な組織が動いていると思います」
「『ホークアイ』のことか?」
「『ホークアイ』は弱小盗賊団です。もっと違う何かがイーグルネイルに迫っていると思うのです」
「『ホークアイ』は、MYKの製法を盗み安価で売り捌いてかなりの利益を上げ、一方イーグルネイルはMYKの売り上げは下がっている。これはボスの計画に支障が出るほどの損失だ。そのためボスはMYKSにシフトチェンジして売り上げの回復に努める事にした。しかし、MYKSに必要な素材を採取しに行ったロートは死んで、お前だけ生き残ったのだ。頭の良いお前ならこの意味はわかるよな」
「私がロートを殺してMYKSの製造を邪魔をしたと言いたいのですか?」
「その通りだ!」
『紅蓮の爪』の副リーダーであるファルコンは、イーグルネイルの裏切り者だと疑われていたのであった。
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