第73話 バストアップ
「もしかして・・・ロート様ですか?」
『イケメン倶楽部』の前に姿を見せたのは、イーグルネイルの4つの爪に属さない『殺死隊』の一人ロートである。殺死隊とは字の如く暗殺専門の部隊である。殺死隊はわずか4人で構成されている。
ロートは全身を銀のフルプレートアーマで覆い、そして、仮面の隙間から見える黒い眼光を見た者は、あまりの怖さに身体が硬直してしまうのである。
『イケメン倶楽部』の3名もロートの黒い視線を見て身体が凍ったようにピクリとも動かない。
「私がここに来た意味はご理解いただけるでしょう」
「違う。俺たちじゃない。やったのは一輪の薔薇だ」
「それはわかっています。でも、盗んだ薬はあなた方が持っているのでしょ」
「違う。違うんだ。一輪の薔薇が俺たちに持っているように指示をしたんだ」
「そうです。私たちは一輪の薔薇に脅されて薬を持っているだけなんだ」
実際に一輪の薔薇の指示で薬を持っていた。それは、一輪の薔薇は薬を所持しているのがバレたら捕まってしまうので、自分で薬を持たないようにしていたのである。
「言い分はわかりました。しかし、薬を多量に持ち出したことにボスは非常に怒っています。すぐにあなた達を処分するように司令が下りましたが、あなた方は『イーグルネイル』に所属していないので私の管轄外になります。なので、薬を管理している『赤朽葉の爪』があなた方を殺しにやってくるでしょう」
「では、ロート様はなぜここにいらしたのでしょうか?」
「私はあなた方を回収しに来たのではなく、薬を回収しに来たのです」
「薬を返せば私たちを見逃してくれるのでしょうか?」
「はい。盗んだ全ての薬を返してください」
「そ・・それは・・・」
「もしかして、薬を使用したのでしょうか?」
「はい。もう半分ほど使用してしまいました」
「あれだけの数を盗んでおいて、もう半分も使ったのですね。あなた方は決められた量を適切な回数で飲んでいないのですね」
「申し訳ありません。このイケメンを保つには多くの魔力が必要になるのです」
「そうですか。わかりました。では、手持ちの薬を回収させてもらう代わりにこの薬をお渡しします。でも決められた量を適切な回数で服用してくださいね」
「ありがとうございます。ところでこの薬はどのような薬なのですか?」
「これはMYKSS『めっちゃやばい薬スーパーストロング』です。これはMYKの効果の10倍あり、しかも持続性は1週間もある優れものです」
「そんな貴重なモノを貰ってもよろしいのでしょうか?」
「これは素直に真実を述べてくれた感謝の気持ちとなっています。なので遠慮せずに受け取ってください」
『イケメン倶楽部』の3名は喜んで薬を受け取るとすぐに薬を服用した。
「本当だ。すごく力がみなぎってくる。それに肌の艶も良くなっているぞ」
「素晴らしいです。これならすぐにでもAランク冒険者に上がれそうです」
「みんな、これを一輪の薔薇に届けに行かないか?これを渡せば騎士団所から脱獄も簡単にできるはずだ」
『イケメン倶楽部』の3名は、MYKSSの効果に満足し、自分たちが指名手配されていることも忘れて、王都へと向かったが、王都へ向かう途中に急に倒れ込み命を失ってしまった。『イケメン倶楽部』の3名が飲んだのはMYKSSは『めっちゃやばい薬すぐに死ぬ』であった。ロートはボスからMYKSSの効果を試すように指示を受けていたのであった。
「リーゼ、グレイヘロン達が連行されたようね」
「さすが『青天の霹靂』ね。私たちがやっと見つけ出したグレイヘロンを屋根から侵入して簡単に確保するなんて、同じAランク冒険者でも格が違うようね」
「バルザックは、冴ない兄と揶揄されているけど、魔法を無効化できる特殊な魔法を使える天才とアーモンド先生から聞いているわ。まだ17歳なのに末恐ろしいわね」
「そうね。でも、邪魔されちゃったから、もう一つの依頼の方に専念しようかしら」
隣国フンデルトミリオーネン帝国から来た冒険者チョモランマには、皇帝から2つの命を受けたいた。1つはフンデルトミリーネン帝国で問題となっているMYK依存症問題である。MYKを製造販売しているのは『赤朽葉の爪』なので、MYKの製造場所を見つけて破壊するために、『赤朽葉の爪』の幹部を探していたのである。
2つ目は、美容魔法のバストアップの素材を入手することである。実はリーゼとローゼは、シュテーネン専門魔法学院の卒業生である。まだ世間が美容魔法に否定的だった時に、アーモンドの回復系魔法を応用して美容効果のある魔法を作ることができると論文を発表した時、その論文に感銘を受けた2人は、シュテーネン専門魔法学院に入学して、アーモンドと共に美容魔法を探求して、ついにバストアップに成功したのである。
しかし、このバストアップの成功はまだ世には発表されておらず一部の人間しか知らない。フンデルトミリオーネン帝国の皇帝は、2人が急激に胸が大きくなったことに不審に思い問い詰めたところ、皇帝に嘘はつけないので、正直にバストアップのことを話したのである。ラヴリィ・ディーオ・アグリーアブル皇帝(女帝)は、自分もバストアップをしたいと駄々をこねたので、アーモンドの許可を得てリーゼ・ローゼはバストアップの素材を採取しに来たのである。
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