第64話 謎の冒険者

 ここはヴァイセスハール城にある応接室。



 「メルクーア、ブランシュの呪いが解けたというのは本当なのか?」


 「陛下、今までブランシュの為に、尽力を尽くしてくださってありがとうございます。ブランシュの呪いは解除されました。これも陛下の温情のおかげだと思っています」


 「メルクーアよ。ここは公の場ではないのだ。昔のように兄と呼んでくれても良いのだぞ。でも、ブランシュの呪いが解けて本当によかった。残念ながら俺の力でも呪いを解くのは不可能だった」


 「兄上がお城の地下で匿ってくれたので、ブランシュの呪いが解けることができたのです。ブランシュが助かったのは兄上のおかげだと言っても過言ではありません」


 「俺はそれくらいのことしかできなかったのだ。火炎竜の鱗を調達したかったが・・・」


 「気になさらないでください。火炎竜の鱗を手に入れるのは不可能です。それは私も討伐隊に参加したので1番理解しています」


 「しかし、どうやってブランシュの呪いを解除したのだ?火炎竜の鱗を手に入れたのではないのか?」


 「はい。娘の話ではとある冒険者が火炎竜王の鱗を手に入れて持って来てくれたそうです」


 「火炎竜王の鱗だと・・・そんなことありえないだろう」


 「はい。私も娘が頭がおかしくなってしまったと思ったのですが、鑑定の結果火炎竜王の鱗だと証明されました」


 「火炎竜王の鱗を入手するできる冒険者など、この国・・・いやこの世界に存在しないはずだ」


 「私もそう思っていましたが、現に娘が持っていたのは火炎竜王の鱗と英雄ランク魔石でした。この英雄ランク魔石も純度が高く、王者ランクに匹敵する魔石だと鑑定されました」


 「そんなことがありえるのか・・・」


 「私も夢を見ているのだと勘違いするほどの驚きでした。しかし、夢でも幻でもなく現実だったのです」


 「そうか・・・ブランシュの呪いが解けたのだから本当なのであろう。ところでその素材を用意してくれた冒険者の名を教えてもらおう」


 「それが、名を名乗らずにすぐに去ってしまったのです。しかも、容姿などを絶対に他言しないことを条件に、素材を無償で提供されたようなので、娘は一切何も話すことはできないと言っているのです」


 「国王の私にも言えないと言うことだな」


 「申し訳ありません」


 「いや、謝ることはない。火炎竜王の鱗を用意できる冒険者だ。変に怒らせるとこの国を滅ぼす力を持っている可能性もあるだろう。無理に聞くことはしないでおこう」


 「そうしていただけると助かります」


 「オークキングの脅威も去り、ブランシュの呪いも解除された。我が国にとって良い風が吹いているようだな」


 「はい。私も思います」


 『ドン・ドン ドン・ドン』



 応接室の扉がノックされる。



 「陛下は今は大事な会議中です。後にしてください」



 ゼーンブストの護衛兼執事であるフェアバルターは、ドア越しで対応をする。



 「こちらも重要なことなのです」


 「フェアバルター、要件だけ伝えさせろ」


 「陛下の許しが出たので、要件を言ってください」


 「はい。一輪の薔薇の自供通り『紅緋の爪』のアジトであるマグノリアの村が発見されました。しかし、マグノリアの村にいた盗賊約300名はすでに死亡しており、『紅緋の爪』のリーダーナイトバード並びに『真紅の爪』の副リーダーヴォルデの死亡も確認されました」


 「なんだと!?それは本当なのか?」


 「はい。マグノリアの村の地中からたくさんの命石が発見され、鑑定をしたので間違いないそうです」


 「わかった。もう下がって良い」


 「はい。失礼します」



 騎士は応接室から去っていく。



 「もしかして・・・」


 「たぶん、娘を救ってくれた冒険者が盗賊を成敗してくれたのでしょう」


 「間違いない。『真紅の爪』のアードラーも死に、『紅緋の爪』のナイトバードも死んだ。これで二つの爪の主軸がいなくなったことになる。このまま全ての爪を折ることができれば良いのだが」


 


 イーグルネイルは四つの爪で構成された大盗賊団である。私が『真紅の爪』を潰して、プリンツが『紅緋の爪』を潰した。残っているのは『赤朽葉の爪』と『紅蓮の爪』である。『赤朽葉の爪』は違法薬物であるMYKの製造と販売を生業とし『紅蓮の爪』は三つの爪を監視する機関である。




 翌日私がカノープスの町に着いた時、騎士団所の牢屋で一輪の薔薇の死体が発見された。死因は違法薬物MYKの多量摂取である。


 そして、指名手配中だった残りの『イケメン倶楽部』の3人もMYKの多量摂取と思われる状態で死亡が確認された。



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