第44話 圧倒的な実力差?
ムスケルはタンカーで冒険者ギルド内の医務室に運ばれて行った。
「弱い癖に粋がるからこうなるのだ!俺たち『イケメン倶楽部』に盾突いた事を後悔するのだな」
「次は俺が相手をしてやる」
ニーゼンが円形の闘技場に向かう。
「アベリア、次も俺が相手をしてもいいか?最初の筋肉バカが弱すぎて準備運動にもならなかったぜ」
「『肉の壁』さんが認めるなら問題はありません」
「俺は誰が相手でも構わないぜ」
「よし、これで問題はないな。次はお前を血ダルマにしてやるぜ」
第二試合 『イケメン倶楽部』一輪の薔薇 対 『肉の壁』ニーゼン
ニーゼンの武器は大きな金棒である。かなりの重量のある金棒を片手で軽々と振りまさしながら、一輪の薔薇との距離を詰める。
「無駄だ!」
一輪の薔薇は細長い剣を闘技場の突き刺し、なおかつ金色の鎧を脱いだ。
「お前にはハンディをやろう。俺は武器を持たず鎧も付けずにお前の相手をしてやろう」
「舐めるなよ」
ニーゼンは振り回していた金棒を一輪の薔薇の頭に振り落とす。しかし、一輪の薔薇は金棒を片手で掴み取り、金棒をまるでアルミ缶のように握りつぶした
「嘘だろ・・・お前は魔法剣の使い手だろ?どこにそんなパワーがあるのだ」
魔法には適性がある。魔法剣に特化した魔法適正、肉体強化に特化した魔法適正、攻撃魔法に特化した魔法適正など、それぞれ自分の適正にあった魔法を使うのが普通である。稀に全魔法適正や複数魔法適正を有する者もいる。
「それは俺が天才であり、お前が凡人だからだ。お前達がいくら筋トレをして体を鍛えても、俺の領域を超えることなど不可能なのだ」
「天才か・・・全てその一言で片付けるのは俺は嫌いだ」
ムスケルは破壊された金棒を捨てて、素手で一輪の薔薇を殴りつける。
『ゴキ』
ひどく鈍い音が響いた。それはムスケルの拳の骨が砕けた音である。
「なんて固い体なんだ」
「強化してるのは力だけではない。肉体も強化しているのだ。だから剣も鎧も必要ないのだ」
「Bランク冒険者とCランク冒険者ではこれほどまでに差があるのか・・・」
「それは少し違うぞ。これは俺とお前達との差だ。俺は今はBランク冒険者だが近いうちにAランクに上がるだろう。いや、Aランクに留まらずいずれ王者ランクまで上り詰めるだろう」
「無理だ!お前達のような品のないヤツが王者ランクになれるはずがない」
ムスケルハ砕けた拳で何度も何度も一輪の薔薇を殴るが、一輪の薔薇の体に傷一つつける事はできない。逆にニーゼンの拳は血まみれになり骨が剥き出しになっている。
「シェーンさん、ニーゼンさんをとめて!このままだとニーゼンさんの拳が、拳が・・・」
私はシェーンにニーゼンの試合を止めるように叫ぶ。
「さっきも言ったように、私に止める権利はないのよ」
私は、ムスケルが一方的に剣で斬られている姿を見て、ニーゼンとシェーンに試合を止めるようにお願いしたが、2人は拳を握りしめたまま試合を止める事はなかった。
ニーゼンはムスケルと同様に力尽きてそのまま地面に倒れ込む。
「弱すぎる。あまりにも弱すぎる」
力尽きて倒れたニーゼンの頭を踏みつけながら一輪の薔薇は呟いた。
「どうする?止めるか」
「止めに入りたいけど、まだ証拠をつかんでいないわ。ここで止めたら『肉の壁』さんの気持ちを裏切ることになるわ」
「わかった。もう少し様子をみよう」
闘技場の奥の観客席で、とある人物が二組の冒険者の試合を観戦していた。
「お嬢ちゃん、次は私の出番よ。私が負けたらお嬢ちゃんは棄権するのよ!あいつらは本気でお嬢ちゃんを潰しにくるから、絶対に戦ったらダメよ」
「・・・は・・・はい」
私は絶対に棄権などしないが、シェーンを安心させるために嘘をつくことにした。
「次も俺が相手をしてやるぜ!」
「誰が相手でも私は構わない」
「アベリア、相手は了承したぜ!」
「わかったわ。好きにすればいいわよ」
第3試合 『イケメン倶楽部』一輪の薔薇 対 『肉の壁』シェーン
「次はどんなハンデを用意すればいい。逆立ちして相手をしてやるか?それとも右手だけで相手をしてやろうか?お前にハンデを決めさせてやろう」
「ハンデなどいらないわよ!あまり私たちを舐めないでくれるかしら」
シェーンは肉体強化の魔法に特化している。なので、武器は拳であり、拳を強化するためにメリケンサックをつけている。シェーンは右の拳に全体重の乗せ一輪の薔薇の顔面目掛けて正拳突きをくりだす。
「くだらん」
一輪の薔薇はシェーンの正拳突きを小指で受け止めた。
「そういうことね」
シェーンは後方にジャンプして、一輪の薔薇と距離を取る。
「場外に逃げるつもりか?」
円形の闘技場のから出ると場外負けになる。しかし、自ら場外に逃げる行為は臆病行為とみなされ、2度と冒険者を名乗ることが許されない。
「逃げる?そんなことはしないわ。それに、逃げる準備をしないといけないのはあなたの方かもよ」
「何を言ってるのだ」
「私はあなたの顔面を狙って正拳突きをしたのではないのよ。あなたが強化している体の魔力を調べたかったのよ」
「何を訳のわからないことを言ってるのだ。遊びは終わりだ。すぐにこの試合を終わらせてやる」
一輪の薔薇は、闘技場に突き刺さっていた自分の剣を抜き取りシェーンに向かってフェンシングのように突きを連打する。
「ミリオンローズ」
一輪の薔薇の必殺技『ミリオンローズ』、魔力を剣に注ぎ込み、一本の剣が100本に枝分かれして、100本の剣が相手の体を串刺しにする技である。一突きで100本の剣を打ち込むことができ、それを高速で何度も打ち込むので逃げるのは不可能である。
シェーンは後ろを向いて一輪の薔薇でなく『イケメン倶楽部』の待機席に向かって正拳突きをした。
「貴様の相手は俺だ!」
一輪の薔薇は大声をあげてシェーンの背中に『ミリオンローズ』を打ち込む。シェーンは背中から血を噴き出しながら地面に倒れ込んだ。
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