第41話 譲れないもの
「お前達のような3流冒険者が、王都に何しに来たんだ!」
「護衛任務だ」
「田舎町だとお前らみたいな3流冒険者でも、護衛任務を任されるのだな」
「この護衛任務はギルドマスターからの依頼だ。文句があるのならギルドを通してもらおう」
「田舎のギルマスは見る目がないようだ。ささっと任務を終わらせて王都から出て行け!」
「言われなくても依頼が終わればすぐに王都からは立ち去る」
「本当に醜い冒険者です。同じ冒険者として見られるのが本当に辛いです」
次は羨望の眼差しが嫌味を言い出した。
「冒険者に顔は関係ないだろ」
ニーゼンが羨望の眼差しを睨みつける。
「醜いその目で俺を見ないでほしい。その醜さが俺に感染してしまいます」
「悪かったな。俺の視界に入りたくなかったら、俺らに絡むのはよせ」
「あまりにも醜い姿があったので、それを口にするのは当然のことです。醜いあなた方に責任があるのです」
「ニーゼン、ムスケル、あいつらのことは無視するのよ。相手にするだけ無駄ってものよ」
「その筋肉女の言う通りです。醜い生き物は黙って俺たちの言う事に従えばいいのです」
「・・・」
「・・・」
「そうそう。お前達は俺たちに意見を言える立場ではないのです。醜い生き物はその姿を晒す事なく家に引きこもるのがいいのです」
「・・・」
「・・・」
「醜い生き物と一緒の空気を吸うのも辛いです」
「そうだな。魔力が少なくて体を鍛えてカバーするなど3流らしい考え方だ。筋肉など無駄な肉だ!俺たちのようにスリムな体こそ美しいのだ」
「そうそう。体を鍛えるなんて無駄なこと。魔力量こそ最高の力。魔力量の少ないものが努力するなんて無駄無駄無駄。まして、魔力量が0の人間なんて、人間じゃない。ゴミクズね」
「俺たちのように魔力量が多くてイケメンこそが1流の冒険者。魔力なしの人間など冒険者と名乗る資格はない!」
「黙れ!」
「何か言ったか筋肉ダルマ」
「俺たちのことはなんと罵っても構わない。しかし、お嬢ちゃんの悪口だけは許さないぞ」
「許さないだと。筋肉ダルマが何ができるのだ!」
「お前達を潰してやる」
「俺たちを潰すだと?そんなことがお前達にできるのか?3流冒険者のお前が1流冒険者の俺たちに勝てると思っているか!」
「勝ち負けなど問題ない。俺たちの意地をお前達に見せつけてやるのだ」
「そんなことを言ってるからお前達は3流なんだ。勝負は勝たなければ意味はない。勝ったものこそが正義なのだ」
「違う。負けるとわかっていても譲れないモノを貫くのが正義なのだ。お嬢ちゃんのように魔力量が0でも、専門魔法学院の面接を受けるように」
「あのガキが専門魔法学院の面接を受けるのか!それはちゃんちゃらおかしいことじゃないか。魔力量が0のガキが、専門魔法学院の面接通る可能性は0だ!面接を受けるだけ無駄な時間だとちゃんと教えてやれ」
「黙れ!お前にお嬢ちゃんの気持ちの何がわかると言うのだ!お前達が強いことは認めるが、冒険者として、いや、人間としては3流以下だ」
「俺たちが3流以下だと・・・ふざけた事を抜かしやがるな。それなら俺たちが3流以下かどうか決闘で勝負をつけようじゃないか」
「望むところだ!お嬢ちゃんを馬鹿にしたお前らを俺たちは絶対に許さない」
「実力差もわからずに勝負を受けるとはやっぱりお前らは3流だ。俺たちが1流の強さってやつをお前らの体に叩き込んでやるぜ。王都に入ったら冒険者ギルドへ来い!そこで決闘をしてやる」
冒険者同士のいざこざはよくあることである。冒険者同士がもめた時は、冒険者ギルドにある闘技場で決闘するのが通例である。
「みんなすまない」
「ムスケル、あなたは私たちの言いたいことを代弁してくれたわ。あなたが言わなかったら私が代わりに言っていたわ」
「そうだぜ。お嬢ちゃんの悪口を言うなんて絶対に許せないぜ」
「みんな、ありがとう」
『肉の壁』と『イケメン倶楽部』が言い争っていたのは、私も途中から気づいていたが、カリーナさんから揉め事が大きくなったらいけないと言われて、私は拳を握りしめて我慢していたのである。『肉の壁』の冒険者証の確認も終え、私たちは王都に入ることができた。
「カリーナ様、俺たちはここで護衛任務を一旦終了します。また帰る時に護衛をいたします」
「わかったわ。ここからは私が馬車の運転をするわ。無茶はしないでね」
「もちろんです」
『肉の壁』は『イケメン倶楽部』と決闘をするために、一時的にカリーナと別行動を取ることになった。
「行くぞ!」
「どうなるかしらね」
「あいつらはムカつく野郎だが強い。俺たちが勝つ可能性は0に近いだろう」
「そうね。でも、譲れないモノってあるよね」
「そうだ。俺たちはお嬢ちゃんを馬鹿にする野郎だけは絶対に許さない」
「当然だ」
『肉の壁』は冒険者ギルドの扉を開き中へ入って行く。
「逃げ出さずにここに来た度胸だけは認めてやろう」
一輪の薔薇が見下すようにムスケルを睨みつける。
「こいつらが『イケメン倶楽部』様にたてついて田舎の3流冒険者ですか?」
「そうだ。身の程も知らないから3流野郎だ」
『ガハハハハ』
冒険者ギルドにいた複数名の冒険者が大声で笑う。
「さっさと闘技場に案内しろ」
「おや?おやおやおや」
「どうしたんだ。早く案内しろ」
「こいつも決闘に参加するのか?」
『肉の壁』の3人の後ろには私がドーンと立っていたのであった。
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