第34話 取扱注意物件
「ハツキさん冗談はよしてください」
「そうよ。オークキングを倒したハツキさんが魔力量が0だなんてありえないわ」
「・・・」
あまりの驚きでセリンセは口をパカーンと開けている。
「これが証拠よ!」
私は冒険者証を3人に見せつけた。冒険証にはランクEと記載されていた。そして、備考欄に『魔力量が0ですので取り扱いにご注意を』と注意書きがされていた。この備考欄には、『青天の霹靂』のメンバーならば国王の刻印が押されていて、国王専属冒険者と一目見てわかるようになっている。普通は備考欄には、その冒険者の優秀さがわかるようになっているのだが、私の冒険者証の備考欄にはその逆の施しがされているのである。
「ハツキさん・・・なぜ?そこまでして実力を隠すのですか?」
「そういうことなのね。ハツキさんは、魔道具である水晶に膨大なる魔力で負荷を与えて、魔力量を測らせないようにしたのね」
「ハツキちゃんは、そんなことまでできるのね」
マーチャント家の3人は私の強さを知っているので深読みをする。
「そ・・・そうなのよ。私は平穏に過ごしたいからそうしたのよ」
この3人に何を言っても信じてもらえない気がしたので話を合わせることにした。
「ハツキさん、余計なお世話かもしれませんが、力を隠す必要などないと思います。ハツキさんほどの強さがあれば、どのようなことでもサクッと解決する事ができるでしょう。それに、そのような注意書きがあれば、逆に不憫になることのが多いと思います」
「そうよ。ハツキさんはオークキングを倒したこの国の英雄ですわ。きちんと報告をすれば冒険者ランクもすぐに英雄ランクに上がれるはずよ。英雄ランクになれば、さまざまな特権を得ることもできるし、裕福な暮らしそして、爵位だってもらえるはずよ」
「私は、裕福な暮らしや爵位なんてものはいらないの。私はその辺にいるごく普通の女の子、毎日元気に暮らすことができればそれでいいのよ。しかし、欲を言えば学校に通ってみたいかな」
「ハツキちゃん、学校に通いたいの?」
私は病弱だったので、学校には行けずに病院のベットで人生のほとんどを過ごしてきた。なので、元気な体を手に入れたので学校に行きたいと思っていた。
「行って見たいわ」
「それなら、私と一緒に王都にあるシュテーネン専門魔法学院を目指さない。ハツキちゃんほどの魔法の使い手なら、実技は満点で合格するはずよ。あとは筆記テストと面接もあるけど、全然問題ないと思うわ」
「でも、学費がお高いんでしょ?」
「ハツキさん、お金の心配は無用です。学費は全額私が用意しましょう。それに、ハツキさんが私たちに渡してくれた魔石とオーク牙をお金に換金すると、学費に使っても、まだまだ余裕があります」
「そうなの?それなら私もお受験しちゃおうかしら」
「ぜひ、試験を受けてください。それと、実はハツキさんにお願いがあるのです」
「何かしら?私にぶっ飛ばして欲しい方でもいるのかしら?」
「いえ、そのような方は居るには居てますが、乱暴な解決は私は望んでいません。私がお願いしたいのは、妹のカリーナの護衛です」
「あの浮気相手の・・・じゃなくて商業ギルドマスターのカリーナさんですね」
「そうです。商業ギルドマスターのカリーナです。カリーナはハツキさんから受け取った青の魔石を持って、王都へ向けて出発する予定なのです。いち早く王都に魔石を届けるために、急遽出発することになったので、冒険者ギルドからの護衛がCランク冒険者の『肉の壁』さんとEランク冒険者の『風前の灯』さんが付くことになったのです。王都までの道のりは安全な公道があるので、さほど危険はないと思われまが、今回の王都までの道のりのプランを立てたのは、冒険者ギルドマスターのアーベンです。アーベンは娘の件で何か裏があるような気がします。なので、今回も何か企んでいないのか心配なのです」
「わかりました。まずはアーベンをぶっ飛ばして、どんな悪巧みを企んでいるか確認すればいいのですね」
「違います!ハツキさん。あなたは平穏に暮らしたいと言いながらも大胆は発想をしてしまうのですね。いきなり冒険者ギルドマスターをぶっ飛ばしたら、すぐに衛兵に捕まってしまいます。それに確実な証拠がないまま、そのような乱暴な行動に出ると冒険者証の剥奪、財産の没収、そして牢屋に監禁されてしまいます」
「確かにそうだわ。私の考えが浅はかだったわ」
私はずっと入院していたので、社会活動の経験が乏しく極端な発想に行き着いてしまうのかもしれないと反省した。しかし、本当は面倒くさがりやで、ぱぱっと終わらせたいだけであった。
「カリーナの護衛はあくまで保険みたいなもので、本当の目的は王都にあるシュテーネン専門魔法学院の面接に行く事です。実は先日ハツキさんに助けていただいたのは、娘のシュテーネン専門魔法学院の面接の帰りだったのです。シュテーネン専門魔法学院の面接の期間は2ヶ月間あり、その間に爵位のある者からの紹介状を持っていけば、面接を受けることができるのです。ハツキさんの紹介状はもちろん私が書かせていただきます」
「それは助かるわ。アーベンをぶっ飛ばすのはまたの機会にして、まずは面接を受けにいかないとね」
こうして私は、カリーナの護衛として、王都まで着いて行くことになった。しかし、カリーナには私の本当の強さは内緒にしてあるので、シュテーネン専門学院の面接に行くために、相乗りをするとう形になっていたのであった。
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