第32話 青天の霹靂

 私のディスクドックによりプリンツは瀕死の重傷を負ってしまったが、不幸中の幸いか、新たな事実を知ることになった。プリンツ達ヴォルフ族が強くなるには過酷な修行が必要になる。その過酷な修行とは、死に至るほどの強敵と戦うことである。


 ヴォルフ族は生まれ持っての強者であり、死に至るほどの強敵と出くわすことなどほとんどない。なので同族同士で戦うことで少しずつ強くなる。しかし、同族同士だと死に至る恐怖が気薄なので成長力は低い。しかし、火炎竜王との戦闘は、死を覚悟するほどの戦いだったので、プリンツは大幅に成長することができたのであった。


 私はプリンツを連れて屋敷に戻り、プリンツをゆっくりと休ませることにした。



 「プリンツちゃん、調子はどう?」


 「父が回復魔法を使ってくれたら問題ないよ。でも、疲労は抜けきれていないので、今日はこのまま眠らせてもらうね」



 プリンツは私のベットでスヤスヤと眠り始めた。



 「ホント、プリンツちゃんが無事でよかったわ」



 私はプリンツを抱きしめて一緒に寝ることにした。



 その頃、ヴェルデは仲間を待機させていた森に到着して、凄惨な光景を目の当たりにしていた。



 「何が起こったのだ・・・この一面に落ちている命石はあいつらのモノなのか?」




 ヴェルデの足元に300人分の命石があちらこちらに落ちている。ヴェルデは命石を手に取り魔力を命石に流し込む。命石は魔力を流し込むことで、命石のデータを液晶パネルのように表示させることができる。



 「間違いない、アイツらの命石だ。だが、誰がやったのだ。そういうことか・・・アードラー様を倒したのは『月華の雫』ではないようだな。アードラー様を倒したのは別の冒険者たちで、それを隠すために『月華の雫』がアードラー様を倒したことにしたのだろう。アードラー様を倒し300人もの盗賊を倒せる冒険者・・・Aランクの『青天の霹靂』もしくは英雄ランクの『恒河者』【ごうがしゃ】だな。どうする?俺はどうすればいい?」



 ヴォルデは思考を巡らせ考え込む。



 「依頼は失敗に終わり、『真紅の爪」はほぼ壊滅状態だ。このまま本部に戻りこの緊急事態を報告すべきだろう。しかし、俺だけ無傷で本部に戻れば怪しまれる可能性もある。仕方がない『紅緋の爪』の手を借りて依頼だけも達成させるか」



 ヴォルデは『イーグルネイル』の4つの爪の1つ『紅緋の爪』の力を借りることにした。




 ここはオークの森の大きなクレータのような跡地、そこを見下ろす一つの冒険者がいた。その冒険者の名は『青天の霹靂』。




 青天の霹靂


 リーダー シューネ(16歳)シュテーネン専門魔法学院2年生 ピンク色のツインドリルヘアーの小柄な女の子 あらゆる魔法を使いこなす天才魔法少女。


      ショコラ(16歳)シュテーネン専門魔法学院2年生 青髪のショートボブの巨乳ちゃん。魔法剣の使い手である。


      バルザック(17歳)シュテーネン専門魔法学院3年生 赤髪ロン毛の美青年でシューネの兄である。シューネと同じく天才魔法士と呼ばれあらゆる魔法を使いこなすが、実力はシェーネより劣る。


      カーネリアン(17歳)シュテーネン専門魔法学院3年生で生徒会長を務める。黒髪短髪の2mを越す長身のがっちりムキムキ体型の男子。身体強化を得意として、格闘技のスペシャリストである。



 「この大きなクレーターのような穴ボコはなんなのだ!」


 「魔法か?それとも隕石でも落ちたのか?」


 「お兄様、その大きな穴も気になりますが、オークの気配が全くしませんわ」


 「そうみたいだな。このオークの森で何が起こったのだ?」



 国王専属冒険者である『青天の霹靂』は、国王の支持を待たずに単独でオークの森に探索に来ていたのである。



 「私がちょっと調べてくるよん」



 大きな胸をタプタプと揺らしながら、大きな穴に飛び込んでいくショコラ。



 「ショコラ!危ないぞ。勝手に動くな」



 バルザックがショコラを追いかけるように大きな穴に飛び込んでいく。



 「お前は行かなくてもいいのか」


 「あなたはわからないの?絶対に様子がおかしいわ。オークの気配、それにオークキングの気配もないわ。ここで何かが起こったはずよ」


 「そうだな。しかし、何が起こったのか検討もつかないぜ」


 「だからよ。迂闊にこの穴に飛び込むのは危険なのよ。私はここで何が起こっても対処できるように見張っておく必要があるの」


 


 シェーネとカーネリアンは大きな穴の近くで、いつ何が起こってもいいように戦闘態勢を整えている。



 「すごいよん。こんな大きな牙見たことないよん」


 「これは・・・オークキングの牙だ」


 「ホントよんよん。オークキングは殺されたよん?」


 「殺されたみたいだな。しかし、貴重なオークキングの素材を置いていくなんて信じられないぜ」


 「そうよん。でもラッキーよん。私たちがオークキングの牙をゲットだよん」



 ショコラは嬉しそうにうさぎのように飛び跳ねる。



 「ショコラ!すぐに上に戻るぞ。オークキングを倒した魔獣が襲ってくるかも知れないぞ」


 「バルちん、なんで冒険者じゃなく魔獣が倒しとわかるよん」


 「冒険者が貴重なオークキングの牙を置いていくわけがないだろ!ここでデスカーニバルが起こったのだ」



 デスカーニバルとは魔獣同士の殺し合いのことである。


      





 



 

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