第29話 お掃除の時間です

 私がお昼寝している木陰の周りを総勢300名の盗賊が取り囲む。この展開はどこかで身に覚えのある展開である。



 「こいつがあの有名なシェーネか?魔力を全く感じることができないぞ」


 「隠蔽魔法だな。魔力を完全に遮断し相手を油断させる高度な魔法テクニックだ。安易に騙されるな」


 「さすが、Aランク冒険者。1人で乗り込んで来るだけのことはあるな」


 「もしかして、アードラー様を倒したのはこいつなのかもしれないぞ。自分の存在を隠すために『月華の雫』がアードラー様を倒したことにするようにヘンドラーに依頼したのかもしれない」


 「全ての謎が解けたな。アードラー様がCランク冒険者に殺されたのは納得がいかなかった。しかし、シェーネならそれも可能なはずだ」


 「ここでアードラー様の仇をとるぞ!相手は1人しかも睡眠中だ。俺たちが負ける要素はないはずだ」


 「まずは魔法剣の使い手30人でこいつを斬り刻むぞ。もしものために魔法部隊はいつでも魔法を放てるように準備しておけ」


 「わかりました」



 盗賊たちは魔道具である魔法剣を握り、音を立てないようにゆっくりと近寄ってくる。私は危険が迫っているのに全く気づかずに気持ちよく眠っている。


 30人の魔法剣を持った盗賊が私のすぐそばに立ち、剣を振り上げて躊躇なく振り落とす。しかし、魔法剣は私にかすり傷一つ負わせることなくポキンと折れてしまう。



 「なんて硬い身体強化なんだ」



 30人の盗賊たちの魔法剣は全て折れてしまった。



 「剣ではこいつは倒せない。魔法を放て」


 

 100名ほどの攻撃魔法が得意な盗賊が杖を構える。



 「全員で一気にアイツの体を燃やすぞ」



 100名の盗賊は杖を私の方に向けて『ファイヤーボール』と叫ぶと50cmほどの炎の玉が現れて私の体に向かって飛んできた。100個の炎の玉は私の体にぶつかり激しく爆発するが私の体、ワンピースは一向に燃える気配はない。



 「魔法結界でも張っているのか?」


 「そうかもしれないぞ。どうする。俺たちの攻撃が全く効いていないぞ」


 「これがAランク冒険者の実力なのか・・・」


 「怯むな!相手は1人だけだ。俺たち300人が同時に攻撃すれば問題ないはずだ!」


 「なんだかうるさいわねぇ〜」



 私は辺りが賑やかになってきたのでお昼寝から目を覚ます。



 「何が起こっているのよぉ〜」



 私は目を覚ますとイカつい男たちが、私の周りを取り囲んでいるのに気づいてビックリしている。



 「コイツ目を覚ましやがったぜ」


 「さっきも言ったが、相手は1人だ。俺たちが負ける要素は何一つないはずだ」


 「私に何か御用ですか?」


 「お前がアードラー様を殺した真犯人だな。アードラー様の仇は俺たち『真紅の爪』がきっちりと取らせてもらうぞ。そして、お前を殺した後は、ヘンドラーの屋敷を叩き潰し、ヘンドラーの娘以外は皆殺しにしてやる。俺たち『真紅の爪』に逆らったらどうなるのか教えてやるぜ」


 「そんなことはさせないわよ」



 私がアードラーを倒したことを瞬時に見抜くなんて洞察力に優れた人たちだと私は驚いていた。



 「お前1人で何ができる。いくらAランク冒険者のお前でも300人相手に勝てるはずはない」


 「Aランク冒険者???なんのことかしら』


 「しらばっくれても無駄だ!俺たちはお前が『青天の霹靂』のリーダーのシェーネだとわかっているのだ」


 「『青天の霹靂』???シェーネ???なんのことかしら」


 「やれ!全員でシェーネを殺せ」



 300人の盗賊が一斉に私に襲いかかってくる。前回のオーク2000体に比べて、たった300人なので、私にとっては楽勝である。私は次々と襲ってくる盗賊たちの首根っこ掴んで空高く放り投げていく。



 「うぉ〜」

 「どひぁ〜」

 「あれまぁ〜」


 

 盗賊たちは空の彼方へ消えていってしまった。



 「あなたで最後になるかしら?」


 「化け物め!俺たちにこんなことにしてタダで済むと思っているのか?」


 「はい。これで終わり!」



 「あれまぁ〜」



 私は最後の盗賊も投げ飛ばして盗賊たちを一掃した。



 「これで、ヘンドラーさんたちへの危険も無くなったわ」



 私は盗賊たちを一掃したのはヘンドラー達を守る為である。私のせいでヘンドラー達を危険な目に晒すわけにはいかないのであった。



 「プリンツちゃん、まだ帰って来ないわね」



 私が『真紅の爪』を殲滅させていた頃、プリンツは絶体絶命の危機に遭遇していた。


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