第24話 3つの魔石

 「ハツキさん・・・これほどのオークの牙と魔石をどこで手に入れたのですか?」


 「ちょっとオークの森まで行ってきたのよ」


 「ちょっと待ってくださいハツキさん、オークの森はこの町から100kmも離れているのよ、そんなお散歩気分で行ける場所ではないわよ」


 「へぇ〜そんなに遠かったのね」


 「本当にオークの森まで行てきたのね。たしかに私の目の前には多量のオークの牙と魔石があるわ。それに、ハツキさんが嘘を言う必要もないわね」


 「そうよ。まだまだ牙と魔石はあるからどこに出せばいいのかしら?」



 『ガチャ』



 工房の扉が開きヘンドラーが入ってきた。



 「ハツキさん、私に大事な要件があると聞いたのですが?」


 「ちょうどよかったわへンドラーさん。部屋を壊したお詫びと修理費としてオークの牙と魔石を取ってきたの。受け取ってね」


 「こ・・・こんなにもたくさんのオークの牙と魔石をハツキさんが1人で用意したのですか?」


 「違うわ。ここにあるのはまだ半分くらいよ。まだまだあるわよ」


 「・・・」


 「そうだ!この赤い魔石もあげるわ」



 私はオークキングの赤い魔石を取り出して、ヘンドラーに手渡した。



 「これは!英雄ランクの魔石ではないですか」


 「ハツキさん・・・それは国宝級の魔石ですわ。その魔石は私たちの商会では取り扱うことはできないわ」


 「ハツキさん、これはもしかしてオークキングの魔石ですか?」


 「そうですわ。さすがヘンドラーさん。魔石を見ただけで魔獣の種類もわかるのですね」


 「私は鑑定魔法を得意としていますが、膨大なオークの牙と魔石からの赤い魔石を見せられれば、赤い魔石の主はオークキングだと推察ができます」


 「ヘンドラーさんは洞察力にも長けているのですね」


 「商売をしていくには鑑定魔法だけでは成功はしません。洞察力と決断力この二つの力が必要なのです。ってそんなことはどうでも良いのです。オークキングは最近オークの森で誕生した進化種です。オークキングの誕生はこの町、いえこの国の存続を揺るがす大事件なのです。私の憶測ですが、そのうち国王軍が討伐に出ると思います」


 「あら?そうだったの。オークキングちゃんはそんなに強くなかったわよ」



 プリンツが教えてくれたから、オークキングを倒したと知っているが、もし教えてくれてなかったら、気づかないほどオークキングは雑魚であった。



 「これはすぐにギルドに報告しないといけません」


 「ちょっと待ってよ。もしかして、オークキングを倒したのがバレると大騒ぎになるのかしら」


 「大騒ぎどころじゃありません。国を救った英雄として国王様から直にお礼があると思います」


 「嫌よ。私はあまり目立ちたくないの!私はのんびりと自由に過ごしたいの」



 病弱でほとんど病院のベットで過ごしてきた私が望むのは平凡な暮らし。英雄扱いされるのも面倒だし、この世界をほとんど理解できない私が国王に会うなんて、絶対に避けたい事柄である。



 「わかりました。ハツキさんの意思を尊重して私たちはこの件に関しては知らなかったことにしておきます」


 「ありがとうヘンドラーさん!」


 「あなた!この赤い魔石はどうするのよ」


 「本来ならば国王様に献上しなければいけませんが、献上すれば魔石をどのように手に入れたのか説明する必要がでてきます。ハツキさん、この魔石は私たちでは手に負える代物ではありません。この魔石はお返しします」


 「あらそうなの。でも、赤い魔石はまだ二つも持っているから、これはいらないわ!」



 私は赤い魔石をゴミ箱に投げ入れた。



 「ハ!ハ!ハ!ハツキさん!!!なんてことをするのですか」


 「えっ、だっていらないもん」


 「わかりました。私が大事に保管して置きます。しかし、所有権はハツキさんにありますので、必要があればすぐにお返しします」


 「いいわよ、あげるわよ。それよりも私、まだ二つ赤い魔石を持っているの!こっちの魔石の方が光り輝いていて綺麗だと思わない」



 プリンツの兄弟から出てきた赤い魔石は、キラキラと太陽の日差しのように光り輝いていてとても綺麗である。それに対してオークキングの魔石はただ赤いだけで、輝きがなくあまり魅力を感じていなかった。



 「ハツキさん、本当にまだ二つも持っていたのですね。確かに先程の魔石に比べると、こちらの方が輝きを放っていますね」


 「同じ赤い魔石なのになぜ、こんなに違うのかしら?」


 「英雄ランク魔石は、魔獣の強さによって輝きが違うと聞いたことがあります。魔石の輝きが眩しいほど、その魔獣がより強いと判断できると思います。なので、その二つの魔石の主はオークキングよりも強い魔獣だったと言えるのでしょう」


 「そうなんだ。教えてくれてありがとう」


 「私の知っていることならば、なんでもお答えしますので、気にしないでください。それに、ハツキさんがどのような魔獣を退治したのかは聞かないでおきましょう」


 「助かるわ」



 私はプリンツからヴォルフ族については内密にしてほしいと言われていた。



 「アイリスさんにお願いがあるの。この二つの魔石をブローチにして欲しいの?」



 私はこの二つの赤い魔石をとても気に入ってたので、ブローチにして麦わら帽子に付けようと考えていた。そして、二つあるので、一つはプリンツにつけてあげたいと思っている。それは、この魔石はプリンツの兄弟の魔石なので、兄弟を殺したお詫びとして、プリンツといつも一緒に居させてあげようと考えていたのであった。


 

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