あの空へ

勝利だギューちゃん

第1話

「あー、だるい」

私は、机に倒れこんだ。


「瑠美、いい若い者がなにやってるの」

「あっ、泪」

私に話しかけてきたのは、泪。


中学生からの腐れ縁だ。


「それにしても、まさに『名は体をね」

「何よ」

「フルネームは、仲田瑠美・・・なかだるみってね」

否定はしない。


私は仲田瑠美。

花も恥じらう(死語)の、女子高生。


「あんただって、フルネームなら勝田泪・・・かったるいじゃない」

「確かに、私たち似たものだね」


類は友を呼ぶか・・・


「しゃれ?」

「違う」


泪とは中学生時代から仲がいい。

仲が良くなったきっかけは・・・


あれ?

なんだったっけ?


「泪、覚えてる?」

「何を」

「私と親友になった経緯」

「忘れた・・・まあいいじゃない。親友なんだし」

「だね」


親友なんて、偶然できるのだ。

意図して作ったものに、想いはない。


「ねえ、瑠美」

「何?」

「今年も暑いね」

「まあ、サマーだから様にならないよね」

「寒いね」

「涼しくなっていいでしょ」


親父ギャグで涼しくなったら、猛暑の問題はない・・・


「いっそ、水着で歩こうか?」

「捕まるよ」

「ナンパされるかも・・・」

「実際いたら怖がられる・・・それに・・・」


人前で水着になれる体形では、ふたりともない。


「じゃあこの辺で・・・またね、瑠美」

「うん、またね、泪。お兄さんによろしく」

「こちらこそ、弟君によろしくね」


私は電源を切る。

このご時世、なかなか会えない。

なので、時々リモートで会話をしている。


文明の利器とはありがたい。


私は部屋から空を見上げた。

今頃、泪も見ているだろうか・・・


世界中の何人が、この空をみているのだろう・・・


って、私らしくないな。


ツクツクホウシが鳴いている。

秋は早いかもしれない。


でも泪との仲は、飽きがこないように・・・

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あの空へ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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