第8話 いなくなったセレス

「さぁ、セレス、今日はお祝いだから、思う存分食べてね」


少し、お財布に痛いけど、今日はセレスの歓迎会も兼ねるからこの位良いわよね。


私はセレスを連れてレストランに来た。


ここは貴族も来る位の場所だから凄く美味しい。


その分、高価だけど…うん、それは頑張れば良いのよ。


「此処、高そうだけど、大丈夫ですか?」


「うん、そうね、明日から頑張れば大丈夫よ!」


「ありがとう、マリル」


「別に、良いわ…その分、明日から頑張って」


金貨2枚は覚悟しないとね…だけど、セレスが喜んでくれるならそれでいいわ。


『目に入れても痛くない』って言うけど、セレスはそれ以上だもん。



「マリル、これ凄く美味しい」


「そう、良かったわね」


『碌な物を食べたことが無い』そう言っていたから連れてきたけんだけど…良かったわ。


本当に美味しそうに食べているわね。


それじゃ、私も頂こうかしら。


こうして誰かと一緒に食べる…それだけで楽しいわ。


「あらっ、マリルさん、平民がこんな所で贅沢していて良いのかしら?」


「げっ!イライザ」


「イライザですって、貴方何時まで侯爵家の令嬢のつもりなの?」


「私は確かに絶縁されているわ…だけどね、まだ貴族籍はお情けで抜かれてないわ。つまりまだ侯爵家の人間なのよ? 子爵家の貴方よりはまだ上だわ」


時間の問題ではあるけどね。


「はぁ~、本当にみっとも無い…まぁ良いわ、それじゃ…あれ、なかなかの美少年を連れているわね、貴方良かったら私の所にきませんか? 高待遇で…」


「すみません、私がお慕いしているのはマリルだけです」


「そうですか? まぁ良いわ、困ったら私の所に来なさい…雇ってあげるから…それじゃあね『今はまだ侯爵家のマリルさん』」


あー本当にムカつくわね…


「セレス冷めないうちに食べましょう」


「はい」



◆◆◆


「それじゃ、セレス一緒に寝ましょうか?」


「あの…良いんでしょうか?」


「何が?」


「あの、僕がマリルと一緒に寝ても」


「嫌なの?」


「そうでは無いですが…」


「私は気にしないわ! 貴方は私のパートナーなのよ、どちらかが死ぬまで一緒に居るんだから気にしないで良いわ…ほらっ」


「そうですか」


ふふっ、布団に入って来たわね。


多分、わたしはもう結婚なんて出来ないわね。


だって、セレスより良い男なんて見つからないわ…絶対。


「ほら、もっとくっつきなさい…寒いから」


「はい」


う~ん。


凄く良いんだけど…顔が近いから…今夜も眠れそうにないわね。



◆◆◆


「う~ん、うん?」


あれっ…いない。


「セレス? 嘘…セレスがいないわ」


何処に行ったの? いない…いないわ。


「セレスーーっセレスーーっ」


私は部屋を飛び出して、周りをみたけど…


何処にもセレスは…見つからなかった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る