第2話 お月様が綺麗。

僕の名前はY-00421…勇者になれなかった失敗作だ。


賢者様は言っていた。


勇者になれば…此処から出してくれると。


勇者になれば、綺麗なお姫様と結婚して幸せになれるんだと。


だけど、僕はお姫様で無くても良かった。


誰か1人で良い『頑張ったね』そう言って抱きしめてくれる存在が欲しかった。


ここから出て、外の世界が見たかった。


だが、そんな事すら叶わない。


僕が出来損ないだから…何も出来なかった。


勇者に何てなれなくても良い…普通の子で良い。


普通に愛されて、普通に散歩して、偶に美味しい物を食べる、それだけで良かったんだ。


だが…そんな事すら僕には手に入らない。


僕が出来損ないだから。


「お月様が綺麗だね」


僕の周りに沢山の死体が転がっている。


ここは出来損ないの廃棄場。


周りは大きな塀に囲まれて空だけが見えている。


液体食料も無いからお腹が空いたな…


多分、暫くしたら死ぬんだろうな…


空気がこんなに美味しいなんて…


風がこんなに気持ち良いなんて…


死ぬまであとどの位だろう…これが僕の人生で自由で居られる最初で最後の時間だ。


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