ど田舎村でのユキレラ像
ところで、子爵ルシウスがユキレラを拾って側付きにする際、ルシウスは彼の身上調査を行なっている。
実家、リースト伯爵家の調査員を速やかにユキレラの故郷、ど田舎村へと派遣していた。
調査員はユキレラの親戚や、ユキレラの婚約者の男を寝取った例の義妹アデラの調査を一通り行った後、最後に地元の有力者である高等学校の校長を訪ねた。
校長は、ど田舎領をかつて統治していた公爵家の末裔だった。
現在は統治権を国に返還して伯爵家となった一族で、前々伯爵にあたる老人だ。
このアケロニア王国きっての最果ての僻地、ど田舎領全体の教育に骨を砕いている人物である。
リースト伯爵家の調査員との面談に、年老いた校長は快く応えてくれた。
「ああ、ユキレラ君ですか。ええ、よく覚えてますよ。こんなど田舎には珍しい美しい子ですからね」
「ええ、ええ、どこかの貴族の庶子かなって思ってましたね。……え、リースト伯爵家!? あの魔法の大家の!? ……そうですか、その傍系……」
「品行方正……とはいえませんでしたが(老若男女とお付き合いがあったので)、成績はとても優秀な子でしてね。領地の官僚を目指すよう私も勧めたのですが、ちょうど最終学年に上がった頃にご両親が病でね。まだ妹さんも学生の未成年だったし、働かないと食っていけないからって」
ユキレラはともかく、義妹のアデラは高等学校への進学はできても、奨学金を得られるほどの学業の成績はなかった。
そのせいもあって、ユキレラは義妹が結婚して家を出るまでは自分のことを後回しにすると決めたようだ。
「一時的に生活費を国から借金申請してはどうかと勧めたのですが、やはりねえ。まだ18歳の子には借金なんて怖かったみたいで。私が保証人になるよって言っても、それでますます怖くなっちゃったみたいで」
このエピソードから、ユキレラが真っ当な金勘定の感覚を持ち、慎重な性格であることがわかる。
「なぜ、卒業後に商店の雇われ従業員になったのかですって? あなた、ここがどこだと思っているのです。最果ての僻地と呼ばれるど田舎村ですよ? そもそも仕事の数が少ないんです」
他にも一通り聞き取りを行って、調査員は報告書を子爵ルシウスに提出した。
ルシウスはその報告書の内容と、自分が間近で見たユキレラとを照合した上で、今後も彼を自分の側に置くことを決めた。
さて、時は現在に戻る。
ルシウスの子爵邸の執務室にて、面と向き合ってお話し合いだ。
「私がお前を拾ってそろそろ2年になる。遠い傍系のお前をリースト一族と認め、私の従者や秘書として使ってきたわけだが」
「……は、はい」
何を言われるのだろう、と内心ビクビクのユキレラだった。
このご主人様には秘密が多くて、いつも不意をつくように明かされるから心臓に悪い。
本人には隠しているつもりが微塵もないのが、ちょっとタチが悪い。
とりあえず「お前もう要らない」以外ならどんなことでも聞いてみせる気概のユキレラである。
「お前は私と年も近いし、背格好も顔もよく似ているから替え玉に使える。だがお前はリースト一族には迎え入れたが、平民だ」
「……はい」
「なので、一族の男爵家の養子に入れることにした。今日からリースト男爵令息ユキレラとなる」
「は、えー!???」
男爵家って、まさか元々のユキレラの祖先の系譜ではないか!?
ユキレラはリースト一族の男爵家の四男がご先祖様なのだ。
ということは、巡り巡って本筋まで戻ったことになる。
「件の男爵家も今は子供たちが全員独り立ちしてしまって、男爵夫妻だけでな。養子とはいえ新しい息子ができることを喜んでいた」
「唐突すぎませんか、ルシウス様!?」
だがもう養子縁組の手続きは済んでいるという。
養子になっても男爵家の財産分与などの権利はない。あくまでも貴族の身分をユキレラに与えるだけのものだ。
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