十分後、魔王城は崩壊する

まめいえ

第1話 まおうをやっつけた!

 魔界の空には真っ黒い雲が立ち込めていて、どこかしこで稲光が走っている。その魔界において一際目立つ巨大な建物、魔王城。

 その最上階、魔王の間では現在、勇者と魔王の最終決戦が行われている。戦いは数時間にも及び、どちらも体力、魔力ともに限界を迎えようとしていた。


「こ……これで終わりだ!」


 ふらふらになりながらも、勇者の剣が魔王の体を貫く。「ぐはっ」と魔王が血を吐くが、ただでは終わらない。

 両手を空高く突き上げると、最後の力を振り絞って魔法を唱える。「自己犠牲呪文メンガテか!」思わず勇者は剣から手を離し盾を構えたが、部屋全体がぱっと輝いただけで特に何も起きなかった。

 

 魔王はそのままゆっくりと仰向けのまま、床に倒れた。

 

 勇者には一体魔王がどんな魔法を使ったのか、皆目見当がつかなかった。ステータスを確認するも、状態異常が起きたわけではなかった。ただ、魔王との壮絶なる戦いのせいで、HP1、MP0という瀕死の状態ではあったが。


「魔王、何をした!」

「クックック……魔界にいる全ての魔物たちに『勇者を倒したものに次の魔王となる資格を与える』というメッセージを送っただけだ……」


 そう言い放つ魔王の体がだんだんと薄くなってきた。最期が近いのだ。それなのにまだ、勇者に向かって話を続ける。


「しかも、魔王城はあと10分で崩壊するようにタイマーをセットしたぞ。それまでにこの城を脱出しないとゲームオーバーだ。もちろん魔物がお前を倒そうと躍起やっきになって襲ってくるから覚悟しておけ……」


 その言葉の後に魔王城が一瞬ぐらついた。そして高い天井の壁からぱらぱらとかけらが落ちてくる。どうやら魔王城が崩壊するというのは嘘ではなさそうだ。


「お前が無残にやられる姿を見れないのが残念だ……」


 まだしゃべるのかよ、という勇者の心のツッコミは置いておいて、魔王の体は消滅した。

「新しい魔王が誕生するのを楽しみにしておこう」

 という言葉を残して。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る