ヒト漁

まめでんきゅう–ねこ

第1話 人間撲滅プロジェクト

90XX年。


日本の人々の主食はほぼ蟹と化した。

蟹漁の技術が急激に発達、バイト志望者の増加など、あらゆる条件が揃い、蟹が大量に捕獲された。

パンや米、コーンフレーク、冷凍うどんなどの朝食四天王いつもの朝ごはんも軽々と超え、朝食といえばカニ味噌!昼食と言えばカニクリームコロッケ!夕食と言えば蟹鍋!受験生の夜食はカッニラーメン!

と、まさに蟹でできた世界となったのだ。

「今日も蟹〜〜?」

「そうだけど…なんかダメ?」

「たまにはパン食べた〜い!」

「パン高いんだもん。しょうがないでしょ」

ハヤトは、蟹だらけの生活に飽きていた。

「昨日も蟹、今日も蟹、明後日も蟹、明々後日も蟹、1ヶ月後も蟹、1年後も蟹、きっと1万年後も蟹なんでしょうねー」

「文句言わないの」

ハヤトは愚痴りながら、カニカマを食べた。

「ちょっとは蟹じゃないのがいいなぁ」











その頃、海底のどこかで、蟹たちが集まっていた。

「近頃、蟹が急激に減少した!人間どもはまだ気づいてないが、我々蟹たちにとっては、種の崩壊と捉えても間違いないのだ!」

ダンジネスクラブが叫んだ。

「確かに、波の噂によると、最近は人間どもの主食らしい。蟹がね」

ズワイガニが言った。

「その話は俺も聞いた。さらにカニ漁の技術も進歩したらしいぞ」

ヨーロッパイチョウガニが言った。

「マジか。あ、バイト志望者が増えたって話なら聞いたことあります」

タスマニアオオガニが言った。

ここ、世界カニ協会では世界中の蟹たちが集まり、毎回毎回人間の悪口や対策を話し合っていた。

「皆さんお静カニ。今回、人間撲滅プロジェクトにご協力してくださるお方が来ています。こちらの方です!」

タカアシガニのタカシ・アガニは扉を開けると、カブトガニが入ってきた。

「どうも、カブト・セトカンブリアです。どうぞよろしく」

「ちょっと待て」

モクズガニが鋏を上げた。

「そいつ鋏角類だろ?甲殻類の話し合いに入ってくるな」

「失礼…」

アガニが言った。

「このお方は生きた化石と呼ばれております。つまりは、知識が豊富なのです(?)。さらにこのお方は、鋏角類界の中でも、トップクラスの発明家なのです。なのでこちらからお願いさせていただきました」

「名前にカニとついていて、親近感が湧いたんです。見た目もちょっとだけ似てるし(?)」

「そ、そうかよ」

「随分とアバウトだな」

「それでは本題に入りましょう。セトカンブリア博士、今回のプロジェクトは、人間撲滅が目的ですが…、どうされますか?」

「はい」

セトカンブリアは机の上に乗った。

「人間どもはさまざまな兵器を製造し、戦ってきました。なので、我々も兵器が必要というわけです」

「具体的にお願いします」

「はい。まず、海に漂う廃材を利用して、兵器を作りましょう。今地球の海は人間どもが捨てたゴミばかりです。我々はそれらをゴミと捉えず、新たなる時代を創るためのアイテムとして、利用するのです」

「なるほど…」

「もう設計図は作成してあります。あとは作るだけです」

会場内にカチカチとハサミを鳴らす音が響いた。

「今こそ、人間どもに復讐する時です!ハサミの準備は出来ました⁉︎」

「でぇきまぁしたぁぁぁ」

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