孵化

赤崎リヒト

雛が孵る場所

死ね。


 たった一言だった。僕が今群青に浮かんでいる理由は。


 視界がぼやけて何も見えないや。


 信じて。


 その一言があれば僕は君と笑っていたのかな。


 今となってはもう、なにも確かめることが出来ない。




 ――バイバ侑也ゆうやくん、僕は君を許さない――






 同じクラス、近くの席。それだけだった。


なんの共通点もない。だから、だからか。相違点しか無かったから違う方向へ交わってしまったんだ。


 僕が死んでも君はどうせ変わらないだろう?


 変われないんだ。変わりたくないんだ。今の︎普通しか愛す事の出来ない不器用な僕達は。




 キモイんだよ。


 あいつガチおもんない。


 そのキャラ、キツいよ?


 あいつ早退?よっしゃ!


 は?なんなん?


 話しかけんな。


 こっち見んなよ。




 僕が君に言われた数々の言葉。恐らく死んでも忘れないだろう。学級委員であり、先生からも人気も高い君が僕の事を虐めているなんて。誰も思いはしないだろう。でも誰かに知って欲しかった。誰かに気づいて欲しかった。誰かに手を差し伸べて貰いたかった。誰か一緒に泣いて欲しかった。


 誰でもいいから声をかけて欲しかった。




 こんな後悔も心情も僕が死んだら全てなかったことになる。虐めた事実も僕以外は知らない。今すぐシャボン玉のようにこの世からサッと消えてしまいたい。


 僕の存在に気づく前に。一刻も早く。消えてしまいたかった。




 そんなこと考えたって結局消える勇気もない。生半可な心。だから僕は生きるしかないのだ。


 涙を拭い、夢を捨て、昨日のことを忘れて。今を生きないといけない。




 そうだな、僕は強くならないと。

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