役者は揃った
神の力を手に入れたトレジャンを前に、ノアクルは防戦一方だった。
傷を与えてもすぐに再生の力で回復してしまうからだ。
(このままではじり貧だな……。どうする……アレを使うか? いや、まだ成功するかは怪しい。それにこのままでは回復されてしまう……)
どう考えても現状では倒せる手段を見つけ出せない。
打つ手無しというやつだ。
――と、その状況で転機が訪れた。
「ここは……外ですかい?」
「出られた!」
「お外~」
ダイギンジョー、スパルタクス、ムルが出現したのだ。
「三人とも、無事だったか!」
ついでにトレジャンの方には、明らかに戦闘不能に見えるコイコンとジュエリンが倒れていた。
想像するに、三人が戦って倒して出てきたというところだろう。
「四対一になったな、トレジャン。これでこちらの――」
「四対一? 何を言っている」
不利な立場かに思えたトレジャンだったが、ニィッと口角を上げていた。
彼の身体を伝わって出る黒霧が、倒れているコイコンとジュエリンにも広がった。
ゆっくりと立ち上がるコイコンとジュエリン。
「なっ!?」
それと同時に、トレジャンの背後から大量の海賊たちが現れた。
彼らも黒霧に包まれていく。
「お前たち四人対トレジャン海賊団だ」
ノアクルは猛烈に嫌な予感がしたが、それを口にする前に彼らが襲いかかってきた。
瞬間的にダイギンジョーは反撃の刃、ムルは爪、スパルタクスは拳を放つ。
当然、海賊たちはそれにやられたのだが――すぐに復活してきた。
「こりゃなんですかい!?」
「あれ~?」
「たしかに動けないくらいのダメージ、与えたのに……」
「奴らは死と再生の海神ディロスリヴの力を手に入れた。今のところダメージを与えても回復される」
「なっ!? そりゃどうやって倒せばいいんですかい!?」
ノアクルとしてはそれが出来ずに困っていて、助け船がきたと思ったら敵の方が戦力倍増してしまったという現状だ。
「アスピ、何か手はあるか?」
「あったら言っとるわい」
「だよなぁ……」
「猫神でもいれば、神の力同士で中和できたかもしれぬが……」
「無い物ねだりというやつか」
そう言いながら舌打ちをしている最中にも、相手は待ってくれない。
傷を恐れないコイコンはなりふり構わず突っ込んで来て、海賊たちも曲刀を振り回しながらあとを追いかける。
そして、同士討ちを気にする必要がなくなったジュエリンがひたすら広範囲爆撃をしてくる。
海賊特有の混戦だが、一方的にしか被害が出ないというタチの悪さだ。
ダメージを負っても回復しないノアクルたち四人は逃げ回り、防戦に回るしかない。
「これはまずいな」
「何か手段を打たねぇと、負け確定って感じですかい? ちなみにあっしは晩ご飯のアイディアしか考えが浮かばねぇ」
「それはあとの楽しみにしておこう。ムルは?」
「空を飛んで逃げるとかは~? こんな感じに~」
「あっ、こら。お前だけ飛んで逃げるな! くそっ、スパルタクスは何かないか?」
「海上都市ノアまで戻って、魔大砲でイチかバチか?」
「一番マシな考え……だが、しまったな」
いつの間にか高い崖がそびえ立つ壁際まで追いつめられていた。
ロッククライミングで上へ行くにも、ジュエリンの宝石で叩き落とされて真っ逆さまになりそうだ。
「万事休す、か」
迫るトレジャン海賊団。
もはや打つ手無しと思われた、そのとき――
「お待たせしましたにゃ! ジーニャス海賊団船長、ジーニャス・ジニアス。今ここに猫神様の修業から戻りましたにゃ!!」
ジーニャスがゴールデン・リンクス号の上で海賊帽を誇らしげに見せつけていた。
整列するのは、同じく海賊帽をかぶった古代兵器たち。
「おいおい……ここは陸の上だぞ……。それに俺の集めていたゴミたちがどうして……」
ノアクルとしてはツッコミが追いつかなかった。
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