湖の女神、大いに怒る ガトリングガン&ミサイル編

邪悪シールⅡ改

ガトリングガンの弾&ミサイル

 ある森。

 不思議な湖にボロ斧を投げ込む。

 すると金・銀・ボロの斧三種を持った女神が出現。

 投げ込んだ品を正直に答えることで斧三種盛りGET。

 そのようなバグ技が広まり幾数日――。


「じゃあ毎秒100発8㎜弾! 金ピカ銀ピカなガトリングガンの弾! いっぱいくださぁあいッッッ!」


     〇


「は? うそやろ。お前か?」

 1分後!

 湖から出現したのは薄布を纏う長身の女神! 彼女は、血走った目で陸のバカ者を指さす。

「お。来た来た女神さん! 普通です。普通のタマ――」

「黙れや。こら。何した? 今。あ?」

 ずぶ濡れの身体で大地を踏みしめる。

 水の飛沫が飛んだのか、一瞬相手ははしゃいだような声を出す。

「ガトリングガンぶっ放したっす! 撃ち尽くしましたぁッ! キャハァ」

 見ると、まだ二十年も生きてないようなミリタリーファッションの小娘だった。歯は何本か欠け、世を舐め腐った笑みを浮かべる。

「うちの家財、全部お釈迦になったんやけど。おい」

「マジスか? それより金ピカ頼みます! 新しい武器ほしーいんで」

「……お~、そうか。そうか。お前もか? お前も噂聞いて来たアホか?」

「はい」

 女神は痙攣するような微動と共に笑った。口の端から涎が垂れる。

「噂は正確に伝わらんな」

 女神は、背中に両腕を隠した。

「ドジって斧をブチ込んで。私ン家の床に傷つけたアホがどうなったか」

 その手が次に現われたとき、輝くは金と銀! 女神の指は巨大な二対のガトリングガンの引き金を引きたく辛抱していた!

「どんなエグいザマになったか!」

「ひー」


     〇


 同時刻!

 湖から100キロ離れた地点の上空500メートル地点にて滞空する暗黒城!

 ここは違法路上駐車による世界征服を企む悪の秘密結社ケッシャーの総本部である!

「グフフ。資金難に苦しむ我々だが噂の湖に全長80メートル連射式ホーミングミサイルを叩き込めば金銀ザクザクでは? 発射ッ!」


     〇


「待ってください! 私はまだ死ぬわけにはいかんのです!」

「それを! 我がマイホームも言いたかっただろうよッ! だがお前の手で異様に小さい湯船も! 訳のわかんねぇ天井近くにあるテレビモニターも! 冷蔵庫設置スペースもねぇキッチンも! 設計ミスか? と言いたくなるほど渋い窓も! 命乞いを吐く間もなく消滅だッッ!」

「ごめんなさいごめんなさい! でも私には武器がッ! 違法路上駐車による世界征服を企む悪の秘密結社ケッシャー撃滅の使命を果たす為の――」

「話を逸らしたきゃマトモに考えろッ! な~にが違法路上駐車による世界征服を企む悪の秘密結社ケッシャー撃滅の使命――」

 瞬間、後方にて生じた超極大の爆風で二人は吹き飛ばされた。

「「あああああ!?」」

 全長80メートル連射式ホーミングミサイルによる爆撃である!

 攻撃対象となった湖は爆炎に呑まれ滴も残さず蒸発した!

「あ、あ、あれは違法路上駐車による世界征服を企む悪の秘密結社ケッシャーによる全長80メートル連射式ホーミングミサイル! 非道い! 奴らはまた! 私の故郷を破壊した時と同じ悲劇を!」

「お前も同じモンだけどなッ!」

 二人が身を屈めうつ伏せとなったその三秒後!

 もはや湖と呼ぶことも出来ぬ、黒煙と火炎を吐くのみの大穴がうなり声をあげる。

「知らねぇ知らねぇ。私は知ら~ねぇ。絶対バカ。撃った奴絶対バカ」

 そして不思議な湖(元)を発射台として放たれる無数の兵器!


     〇


 同時刻!

 湖から100キロ離れた地点の上空500メートル地点にて滞空する暗黒城!

 ここは違法路上駐車による世界征服を企む悪の秘密結社ケッシャーの総本部である!

「グフフ。もう間もなく見目麗しき女神が金ピカ&銀ピカ&普通全長80メートル連射式ホーミングミサイルを抱えていらっしゃることだろう。お茶を用意せねば。芋羊羹はお好きかしら? ポテチは――」

 暗黒城に金ピカ&銀ピカ&普通全長80メートル連射式ホーミングミサイル着弾!

「――ぴ――」

 違法路上駐車による世界征服を企む悪の秘密結社ケッシャーはその総本部崩壊と共に壊滅した……。


     〇


 携帯端末を見るに、違法路上駐車による世界征服を企む悪の秘密結社ケッシャーなるマジで実在したアホの壊滅が異様に広告の多いニュースサイトにも掲載された。

「ああ……」

 ガトリング娘が吐息をこぼす。その瞳には涙である。

 背後から撃ち殺そうした女神も、その落涙を汚す道理もない。

「さっさと帰れや。もうここに用はないだろ」

「……ありがとうございました。女神様。私、今、ぽっかりなくなりました。色々」

 手ぶらのまま、力なく項垂れ娘は歩いて行く。

「待てこら」

 女神は金と銀のガトリングガンから 一つずつ弾を抜き取る。

「業務上こちらも渡してやる」

「でも。もう武器は」

 手渡した。

「売れ。遊ぶ金にしろ。勉強する金にしろ。疲れ果てて項垂れるなら、好き放題贅沢してからやれ。ガキ」


     〇


 それから女神は少しばかりガトリング娘と会話し、家へ帰した。

 女神は欠伸をした。

 今日はもう休み、明日には無数に生成される金と銀を売り家新調の手続きを始めるとする。

 血と暴力に脳が直結した女神だが、眠いときもある。

 夜。女神は目を擦ると未だ焦げ臭い大穴の脇で横になった。

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