空音の影
耀月菊
空音の影
女子高校生の朝はこれでもかと思う程忙しい。
ベッドから起きて、洗面台で顔を洗い、髪を整え結い制服を着るのを繰り返してく。気づいたら10分もかかってしまうのだ。今の制服はとても気に入ってるが、着るだけで済むワンピースにして欲しいぐらいだ。昨日準備した学校の荷物を持って1階に下がり、ご飯を食べ歯磨きしてから家を出る。徒歩で最寄りである美川駅まで向かい慶応線に乗って久留菜線に乗り換えた。そこから、学校の最寄り駅である7駅先の葉里駅で降りるのだ。その時間は、自分の好きなソシャゲを楽しんだりする時間にしている。いつものようにソシャゲを堪能する。推しが自分のホームに喋ってる姿や物語を見るだけで尊くて顔が緩んでしまう。電車の中で思う。なんで推しはこんなにも可愛いのだろうか。目に焼き付けても足りないくらいだ。推しよ、生きてくれてありがとうと、そんな事を思ってる時に、激しく電車が止まる音がした。その電車の止まる音は、電車内に轟いてく。私は、今まで聞いた事ない音に狼狽する。
今起きた事を解説するかのようにアナウンスが聞こえてきた。「久留菜線のご利用ありがとうございます。お客様にお知らせです。葉里駅に不審物が発見されました。その影響で久留菜線の運転を見合わせになりました。もう一度繰り返します葉里駅に不審物が発見されました。その影響で久留菜線の運転を見合わせします。羽成駅まで向かう場合は九里線から王騎駅まで行き乗り換えてバスで羽成駅まで向かってください。この駅の場合は〜」と事細かに説明があった。「葉里駅って学校の最寄り駅じゃん、最悪」と溜息を漏らし私は電車が遅延したことを学校と母に連絡した。
学校からは、「分かりました。この遅延は、結構長くなりそうですから気をつけてくださいね。一旦家で休んだらどうですか?」と返事があり、母からは、電車が遅延したことに驚き「気をつけてね。長引きそうね。それまで家で休んだら?」と連絡が来た。どちらも同じ事を言ってるなと思った。所詮、母と学校が言うことはどれも同じ事を言うものなのだ。私は、自分の家に帰る路線である慶応線等を調べたらやはり今回の遅延の影響があった。どっちみち帰られないのだ。葉里駅てターミナル駅だし、そりゃ影響出るよな、と家に帰る事を諦め母に連絡した後、ふと遅延で止まった駅を見ると空李駅だった。あれ空李駅ってどっかで見たような?と一応ホームに出てみる。ホームには人混みがあり、遅延の影響をうけた方が沢山いた。みんな遅延証明書を取ろうと一生懸命だ。私も、学校に渡す為に遅延証明書を取り、駅構内を歩いてると「空音のピアノ」という世界的にも人気なアニメの聖地巡りマップ看板があった。でっかく「空音のピアノ」の登場人物が所狭しと沢山描いてあり思わず写真を撮り、推しをドアップにして携帯の待ち受けに出来るようにした。いつ見てもこのキャラデザは最高だ。我を失ってしまう。こんな所で自分が大好きなアニメの聖地巡り看板に会えるなんてと嬉しくなった。何処かで見たことあるなと思ったら「空音のピアノ」で見たことあったからだ。遅延をどうにかしようと考えてた為余裕がなく、聖地である事も、聖地巡り看板がある事も忘れていた。前向きに考えたら、これは神様からくれたチャンスなんだ。
空音の聖地巡りをしよう!!!と心を踊らせながら階段を降りた。
空李駅は、商店街が栄えており、階段を降りたら直ぐ商店街が見える程だ。見るからに美味しそうなお店が、道行く所に建っていた。空李駅から、近く空音の聖地である久川大学に向かう。「空音」は「空音のピアノ」の略称でそう名付けられファンは、「空音のピアノ」を「空音」と呼ぶ。私はその略称をとても気に入ってるのだ。そのタイトルも伏線の一部であり、伏線回収の仕方がとても綺麗な事で世界的にも有名でもある。
ネットで大学を調べ地図を見ても迷ってしまう。近くにあった商店の方に大学の場所を聞いた。「あ〜久川大学ね。久川大学はね、この道まっすぐ行って右に曲がるとあるよ。お嬢ちゃん気をつけてね。」「ありがとうございます!!まっすぐ行って右に行くんですね。分かりました!いってきます。」「おー!!行ってらっしゃい。」と商店の主人に手を振り出発した。えっとこの道をまっすぐ行って右に行くと、と商店の人が言ってくれた言葉を暗唱し歩いてく。この景色アニメで見たな、あ!ここ見た事ないな最近できたんだなと街を見ていく。ここを「空音のピアノ」の主人公の空という主人公が歩いてるのかと思うと嬉しくて仕方がない。商店の人が言ってた通りに歩くと、あっという間に着いてしまった。ここが久川大学!!!!見つけた瞬間、興奮して写真を撮る。アニメに出てくるその物である。そこの大学の博物館も、聖地となっている為大学の人にやってるか聞いてみた。大学の方は、「そうゆう情報は公式サイトに載ってるよ。自分の家の住所を言ったら、10時に博物館の方がいると思うから電話してみて遠い場所から来てくれてるのでもしかしたら特別に入れるかもしれないよ。」と話してくれた。只自分がその事を調べて無かったことに盲点だったと反省する。
大学の先生方もどうしたのかと話しかけに来てくれたが、とても上品で流石音大の先生と感心してしまった。それから、10時までこの辺をぶらつこうと近所を回ったりした。栗山神社という神社に着き、お参りしてる方にどんな神社か聞いたら沢山のことを教えてくれた。色んな所にその神社があること、そこに居る神様の事などを教えてくれ、私はそれを聞いてびっくりした。それと同時にこんな所があるのかとしみじみした。お参りしてる方にお礼を云い、その人に倣って神社にお参りをしてから、大学に戻った。大学の近くに立ちどまって、ネットで調べたらネットの記事で空李駅は、グルメの聖地とあったので近所の方に美味しいグルメや空音の聖地を聞いていく。
中々答えられない方が居たり、緊張して上手く話せなかったりと、テレビのぶらり旅番組のように上手くいかない事を実感する。あれは、あくまでテレビだから上手くいったりするのだ。テレビに出てくる芸能人やテレビ効果は凄いや。携帯を見たら10時になっていたので学校の方が言った番号に電話し、博物館の方に電話をしてみた。自分の家の住所を話してきいたが今日はおやすみだった。別の日はどうかと言われたが、部活などで行けないので断り電話を切った。
空李の中で行きたかった所の1つでもあったので残念だった。
私は、同い年そうな男子学生が通ったので、この辺のこと知ってるかもと話しかけてみた。「あの、この辺にある「空音のピアノ」という作品の聖地に出てくる小山田公園は何処でしょうか?あと出来たらグルメが美味しいお店を教えて下さい!!」「あ〜「空音のピアノ」か、「空音のピアノ」て空という女の子はピアノの天才と町で有名だ。本人はそんな評価を気にせずピアノを弾き、コンクールで賞を受賞する日々を送る。その子のもとに和樹という男の子が現れ色んな世界を教えてくという話していうやつか?少し見た事あるよ。面白いよな。お前聖地巡りに来てんのか。小山田公園は此処をまっすぐ行って左に行った向かいにあるよ。美味しいグルメのお店ね。「クルーレル」と云う店があってそこのパンがフワフワしてて美味しいな。」その子の声を聞いて何処かで会ったような懐かしいような気持ちになった。「ありがとうございます!!まっすぐ行って左に行った向かいにあるんですね。とても美味しそうです!!!!行ってみますね。」とお別れした途端、道にあった石で足がもつれて転びそうになりスマホを落としそうになった。男の子は、溜息を吐き私を助けてくれた。「お前さ危なかっしいんだけど。俺がお前を支えてなきゃ、スマホは落とすわ転ぶわ。車に轢かれそうになるわで大変だったぞ!!もう俺、不安で見てられないから俺が案内してやるからついてこいよ。名前なんて言うんだよ。」「はぁ、ありがとうございます!!!そんな親切な事をしてくれるんですか。感謝します!1人だと不安だったから嬉しいです。私の名前は、怜と言います。りっしんべんに命令の令で怜です。」「どういたしまして。別にお礼を言うことじゃないだろ。女の子が転びそうになったら誰だって動くことだしな。りっしんべんに命令の令ね。あれで怜というのか、なるほどね。どこかで見たような記憶あるな。俺は秀と言うんだ。よろしく。」「うん!!でも、私助けてくれた人にはお礼を言いたいんだ。ありがとう、秀君ね。よろしく。」「そうかよ。よろしく。」と秀君は、そっぽを向いて照れくさそうに言う。恥ずかしがり屋さんなのかな?と思った。私は1人だと不安だったから心強くて安心した。
私は、秀君と雑談しながら小山田公園に向かった。秀君は、趣味やこの辺の事などの話をしてくれた。趣味は、音楽を聴くことらしい邦ロックを聞いているみたいだ。秀君と話すと知らない事が沢山あり勉強になっていく。小山田公園は、秀君のおばあちゃんが小さい時に出来たらしく、この街で最初に大きな公園が出来たと沢山の人が来てとても賑わってたらしいのだ。話してたら小山田公園についた。小山田公園は、広くて芝生が広がり子供の声が聞こえ、賑わっている。
主人公の空が初めてピアノのコンクールに落選し家で落ち込んでる所に和樹が訪ね、「今日は、何もかも忘れて小山田公園で雲でも見ようぜ!!こいよ!」と空の手を繋ぎ、小山田公園に向かい走り2人で息を荒くしながら公園に着き芝生に転がり雲を見るシーンが頭の中に流れてくる。「ここが小山田公園なの!!!あの神シーンの所だー!!!」と燥いでしまう。「そうなんだな。喜んでくれて良かった。お前すげぇ燥いでんじゃん。子供と変わらねぇな。」と悪戯に笑った。「もう!!いいじゃんか。私「空音のピアノ」でここを見てからずっと行きたくて堪らなかったんだからね、子供てなによ!!子供じゃないんだけど。」「なにムキになって言ってんだよそれだから子供なんだよ。」と取り繕ってくる。「もう秀君知らないよ。」「すまん、すまん。」と笑いながら謝ってきたので、ここに行けたのは秀くんのお陰だしな。しょうがないと許した。とてもその会話が懐かしくて、心がくすぐったかった。公園を楽しんだ後、空の家のモデルである洋館や、和樹が空に最終回で告白をした京水展望台に行ったりした。展望台は空李の街が一望出来て言葉を失うくらいとても綺麗だった。空はあんな所で和樹に告白されるなんて幸せものだ。
そんな事を感じつつ見てたら気づけば15時になった。秀は「もう行かないか?俺のおすすめのパン屋である「クルーレル」行こうぜ!食べたいんだろ!」とニッと笑う。「え、もうこんな時間なの!!連れてってくれるの?ほんと!!行こう!」と目を輝かせた。「あぁ、駅前にあのパン屋あるから行くぞ!目をキラキラ輝かせて可愛いな。お前、小さい頃と変わらねぇよ。」と展望台のエレベーターのボタンを押しながら話す。「え、私秀君に会ったことあるの?!」と思わず声がでかくなってしまった。
秀君はシーと口に指を立てる。その時、エレベーターが来たので乗った。「秀君ごめんなさい、びっくりして思わず声がでかくなちゃった。」「いいよ、別に気にしてないからさ。てかお前が覚えてないのも当たり前だよ。だって幼稚園で年少だった時の話だしな。どこかで見た名前だなと思ったらお前の名前か〜!!お前と俺は元々家が隣同士だったんだよ。でお前と色んな所に行ったり、遊んだりしてたんだよ。確か幼稚園で年中になった時に俺はこの街に引っ越したのだから、結構経つんだよ。そしたらお前、俺の事めっきり忘れててショックだったわ。覚えてる方もすげぇけどな。」「なんと!!そんな事がごめんね。何となくしか覚えてなかったよ。なんか小さい頃良く遊んでくれた子が居たな、なんていう子だっけなて思ったりしたかな。」「そっか、ちゃんと記憶にはあったのか。嬉しいや。」エスカレーターが止まる音がし、京水展望台の入口に着き駅前に向かった。秀君とは、小さい頃の話や家族の話で盛り上がった。秀君のお母さんは元気で私に会いたがっていたと話していたと言ってくれた。私の事覚えてた、てことは相当印象とか強かったんだろうなと感じた。まぁ有難い話である。
パン屋の看板が見え秀君は「ここだよ俺が言ってたパン屋さん。「クルーレル」内装とか可愛いっしょ。」「うゎ〜めっちゃ可愛い!これさイタリアとかでありそうな外装だよ。」「だろ!!ここ内装可愛くてパンが美味しくSNS映えすると有名なんだぞ。いつもは、混んでて大変だけど今日は、平日だし席が空いてるな。入ろっか。」「うん!!」とお店に入った。お店の中には、可愛くSNS映えがするパンが沢山あった。欲しいパンがありすぎて選べないぐらいだ。頭を悩ませその中からチョコパンとメロンパンを選んだ。秀君はクリームパンとチョココロネを選び買ってきた。私と秀君は、パンを頬張って食べた。私は、パンのフワフワさや美味しさに感動し泣きながら食べていた。秀君は、「お前泣いてるじゃん!!そんだけ美味しいのか。気に入ってくれて良かった。」と、自分のタオルで涙を拭いてくれた。秀君は、優しい人なんだなと感じた。パンを食べ終わった後、お店のイートインスペースでお互いのLAMPのメアドを交換し電話番号を登録し、気づいたら16時になっていた。帰る時間もある為パン屋を出て帰ることにした。秀君は、「じゃあな何時でもLAMPに連絡くれよ、また何処か行こうぜ!!お前と会えて良かった!帰り気をつけてな。」「うん!今日はありがとう、私も、秀君に会えて良かったよ。分かった。何時でも連絡してね。今度うちの所にも来てよ案内するから。秀君も帰り気をつけてねじゃあね。」「あぁ、お前案内だと迷子になりそうで怖いな。でも楽しみにしてるよ。家に着いたら連絡しろよ。」と手を振りさよならをした。久留菜線に乗った時に秀君からLAMPにメールが来た。そのメッセージは、「今日はありがとう!!楽しかったよ、おつかれさん。」とウサギの可愛いスタンプと一緒に送られてた。私は、ホッと温かくなり笑いながら「ありがとう!私も楽しかったよ秀君もお疲れ様ゆっくり休んでね。」と返した。
慶応線に乗り換え無事家に着いた。お母さんからは、心配したわよと話があり今日のことを話したらびっくりしていた。お母さんも秀君の事を覚えていたのだ。お母さんは秀君の家と連絡をしてたんだけど中々繋がらなくお互いの家が忙しかったこともあり疎遠になってたんだ話してくれた。
私は疲れてお風呂を浴びてからすぐ寝てしまった。この時期になるとこの日を思い出すだろう。「空音のピアノ」の聖地空李で主人公である空の面影を追ってなきゃ出会えなかっためぐり逢いを。この日を空の日と名付けよう。
空音の影 耀月菊 @kuro35
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます