紅茶の準備
ティーカップを温める。
今日のお客様はロイヤルミルクティーをご所望だ。
今までに常連認定したのは数名だけ。
最近、女性の候補ができた。
改装前から来てくれている女子高校生たちであったり、ライバル店の娘さんであったり。
ライバル店の娘さんは自分からは言わないし正体を知られていないかと思っている。
しかしライバル店主と買い付けの現場に何度か立ち会っているし、発注にも意見していたからこの業界に興味があるのかもしれない。
2年半後の秋。
(少し白髪が増えたな。やはり白髪染めを買うか)
少しの外見の変化だが、多少は気を遣うものなのだ。
マスターはなかなか常連を増やさない。
女子高校生のころからずっと通いつめ、
大学2年まで欠かさず、来ている。
「値段高いだろうに」
「夏休みの間、バイト頑張って来てるの。至福のひと時だわ」
「こんなに平均年齢高いのにねぇ」
「だってロイヤルミルクティーすきなんだもの。ヨーロッパのほうで飲んだミルクティーがおいしくって。多分あれ、ロイヤルって書いてあったと思うの」
茶髪でイマドキのお嬢さんかと思いきや、とんだ舌の肥えているお嬢さんだ。
その時の味が忘れられないなら、日本の食事だけでは満足できないだろうな。
するりとマスターから提案が出てくる。こんなにさせたいと思ったのは始めたかもしれない。
「常連昇格するかい?」
「いいのっ!?」
「頑張るお嬢さんには優しくするたちなんだ。どうかな」
「欲しい。欲しいです。マスター」
「じゃあ、次来たら常連カードを進呈しよう」
「やったー--。じゃあ、また来週の月曜来るね。その時までに準備お願いします」
彼女はスマホを見ながら宣言していた。シフト管理しているらしい。
「わかったよ。準備しておくから」
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