愛の違い
利川 奈留
第1話
ザワザワと野次馬が集まるなか、人の出入りが一際多い部屋がある。
「被害者の身元は?」
そう聞いたのは、刑事の川上秀明だ。
「あ、川上さん!お疲れ様です!」
川上の質問に答えた青年は、入所したばかりの新人刑事の山田裕輔。
「えっと、被害者の身元はですね。古川哀華、17歳。近くの女子校に通う女子校生です。」
手袋をつけながら聞いていた川上は、ある青年を見つけた。
「あいつは?」
顎でクイッと指した場所には、被害者の手を握っている青年がいた。
「彼は奥原龍斗。隣町の大学に通っている、ということしか分かっていません。そして、彼が今回の…」
「ねぇ、刑事さん。」
急に話しかけてきたので驚いたが、奥原の話に耳を傾けた。
「彼女は僕に『私を愛して』と言ったんですよ。」
ジッと被害者の顔を見ていた瞳は、刑事たちに向けられていた。
「だから、僕なりに彼女を愛しました。」
その言葉が言い終わるのと同時に、被害者にブルーシートがかけられた。
奥原は、運び出されるのを見て小さな声で呟いた。
「そしたら、死んじゃった。」
ダンッ
大きい音を立てて、感情的になっている山田は奥原に突っかかった。
「死んじゃった、じゃないんだよ‼︎貴方が殺したんだろ‼︎」
「落ち着けって、山田‼︎」
それをすぐに止めに入る、川上。
そんな騒ぎを目の前にしても、座っているだけの奥原。
「貴方のは、愛なんかじゃない‼︎」
川上に抑えられながらも、叫ぶ山田。
山田の言葉に反応した奥原は、立ち上がり窓際に歩みよった。
「僕が知っている愛し方で愛しただけです。」
キラリと光った写真たてには、笑顔の奥原と哀華の姿。
ポツッ
奥原の瞳から溢れ落ちた一粒の雫は、何を意味しているのか。
愛の違い 利川 奈留 @nano83
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